表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/6

強制的に手を取られて

俺が此処に居る理由―――


「理由なんて……無いなぁ……」

「は?何の話?」

「俺の身の上話、だろ?此処に居るのに理由は無い。あえて言うなら、そうだなぁ。……ここに生まれたせい、かな?」


子供は親を選べない。

この城に産まれて、育って、隔離された。

六億人もこの球体の上で暮らしていれば、一人や二人くらい、思考パターンがおかしい人間くらい居るだろう。

例えば、殺人をいけないことだと理解できない。

例えば、命の重さが理解できない。

例えば、他人を信じることが出来ない。

まさに俺は、その典型なんだろう。

他人とのかかわりを拒んで、信じられなくなって、自殺に走った。

過保護な両親がすぐに病院に駆け込んで一命は取り留めたけど、何も出来ない部屋に閉じ込められて。

生きる意味も見出せないのに、そうまでして生きている価値なんて、俺にあるのだろうか。

この世の中から逃げることが、そんなにもいけないことなのだろうか?

俺が生きていることで、この世界に何か影響はあるのだろうか?

そんなことを考えながら、この何も無い虚無の中で、俺は生きてる。


「コウならどう思う?」

「……」

「コウ?」

「理由が無いわけ、無いだろ」

「え?」

「お前がここにいる理由、無いわけ無いだろ。大体、逃げようと思えばこんな所、すぐ逃げ出せただろ。それをしなかったのは、お前が此処から出ることを恐れているからじゃないのか?」

「そんなことない!」

「そんなことあるね。他人とのかかわりが面倒くさくなって、逃げてるだけだ。」


だから、死のうとしたんじゃないか。

逃げることが、そんなにいけないことなのか?

死のうがこの城から逃げようが、どうせ大差ないだろ?

他人といちいちかかわっていかなきゃいけないのか?


「俺が言いたいのは、精神的に逃げるなって話だよ」

「どういう意味だよ」

「こういう意味だよ」


いきなり右手が引っ張られた。

一瞬の内に体が投げ出される間隔に苛まれる。

気がつけば、体は宙に浮いていた。


「な……!」

「安心しろ、しっかり受け止めてやる」


また雷獣の力とやらで俺より先に地面に回りこんで、受け取る気満々、と言って感じだ立ってる。


「ほら、お前が望みさえすれば、こうやって逃げることも出来たんだ」


難なく俺を受け止めて、また右手を取って走り出す。


「ったく。助けてなんて言ってないのに」

「あ?減らないのはこの口か?」

「残念。口はもともと一つです。でも……ありがとな」


こうやって走り出して見ても、まだ俺の心はあまり変化はない。

でもなぜか清々しい気持ちだけは、心の底から湧き上がってきたんだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ