キミが降ってきた
雷は、好き。
光も音も。
人を簡単に殺してしまう程のエネルギーも。
今日は嵐のようで、一瞬だけの光が窓から暗い室内を照らしている。
光が見えてからずっと後に聞こえていた音も、だんだんと間隔が短くなっていくのが分かる。
近いな。
この家……というか城の周りには背の高い木が多い。
雷が近くに落ちる可能性は十二分にあるはずだ。
雷雨の日はいつも、この窓から森を眺めている。
雷が落ちる瞬間を見てみたいからだ。
眩い光と轟く音。
凄まじいエネルギー。
人間なんか痛みを感じる間もなく殺してしまう、最高の処刑具。
俺が死ぬときは、こんな風に痛みを感じない死に方で死にたいと思う。
今すぐにでも、雷に打たれて死ねたなら、どんなに幸せだろう。
別に雷じゃなくてもいい。
痛みを伴ったっていい。
死ねれば、それでいいのだ。
それが出来ないのは、此処、狭苦しい部屋に閉じ込められている所為。
過保護な親。
心配性な使用人。
そんな奴等の所為で、此処には自殺できそうな道具なんて、何一つとしてない。
だから、今此処で雷に打たれるくらいしか、死ねる方法はない。
その直後、凄まじい音が当たりに響いた
近くの木から硝煙が上がる。
雷が落ちるところを、この目で見たのだ。
「すっげぇ……」
まじまじと木を見てみる。
なにやら、黒い人影?のようなものが見える。
「いってぇぇええ!!んだよクソ!鉄柱じゃないのかよ!!」
「!?」
声が聞こえる。
どうやら雷が落ちたとことが鉄柱じゃなかったことに腹を立てているらしい。
しかもなんというか。
パンクな服装をしている。
「!おーい!!そこのお前!!」
「……俺?」
「お前以外に誰が居るよ?悪りぃんだけどさ、そっち行っていいか?」
「別に、良いけど」
「じゃ、遠慮なく」
瞬間、そいつはもう、窓越しに俺の顔の前にまで来ていた。
「な、お前……!!」
「へへへ。驚いたろう?雷獣の力、舐めんなよ?とりあえず、開けてくれ。入れねぇし」
「あ、ああ……」
何か、変な来客が来てしまった。