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彼への愛は止まらない!

ジリリリと部屋中に鳴り響く電子音が朝である事を知らせる。

ゆっくりと起きて、目覚まし時計を止めようと腕を伸ばすが、その前にカチリという音を立てて、電子音は鳴り止んだ。

それと同時にきつく抱き締められ、身動き出来なくなる。

そういえば今日は仕事が入ってるこんなとこでしかも、奴の隣で暢気に寝ている場合では



………………奴の隣?

ガバッと起き上がって隣を見れば上半身裸の奴が寝ていた。

「………夢………?」

である事を願いながら布団で隠れた自分の体を見れば裸だった。昨夜、夢でなければコイツに抱かれたのだ。

芸能人で抱かれたい男Top10に入るこの男に抱かれたのだ。そう認識すると体中ミシミシと痛い。

「……夢……じゃない………」

腰に来る鈍痛。体中に散りばめられた忌まわしいキスマーク。

「……ん…」

今にも起きそうな奴から逃げようとベッドから転げ落ち、必死に自分の衣服をかき集めるが、下着だけはどうしても見つからない。まぁいい。ノーブラノーパンでも、家がすぐそこなんだ。少しぐらい我慢しようではないか。

「下着付けないで服着るって事は、誘ってんの?」

腕を引っ張られ、奴の腕の中に戻る。

「穂波、仕事辞めろ」

「は!?」

「そしたら、俺が家で飼ってやる。赤い首輪付けて、鎖も付けなきゃな?それから、犬と猫、どっちが好き?俺的には猫が好きだな。にゃー」

あれ、コイツこういう奴だったか?こんな変態だったっけ?ていうか、

「アンタは私のどこを見て好きになったの」

「小ぶりの胸が好き」

綺麗な顔に拳をめり込ませようと思ったら、奴はしっかりと私の拳をキャッチし、そのお返しと言わんばかりに、朝から抱かれ、結局この日仕事を休んでしまった。





ゆっくりと朝食の後片付けをして、ソファに座りのんびりとニュースを見ている光の隣、人が三人分くらい入るぐらいに間を空けて座ろうとしたら、グイッと腕を引っ張られ、隣に座らされた。

「今度、ドラマをやる」

「キスシーンあんの?」

「嫉妬か?」

フッと笑う彼は勘違いをしている。

「それで別れる原因にならないかなぁと思っただけだもん」

間を置く事なく私はアイアンクローを食らった。プロレスでも始めようかなと思った瞬間だ。

「漫画をドラマにするんだと」

「少女漫画じゃなくて少年漫画の方が面白いと思う」

少年漫画好きの人にゃ悪いが、私は本気でそう思うのだ。執事よりも機関車ト○マス派だ。

「どんな派閥だ」

光はこれでもかと言う程、眉間に皺を寄せて私を睨みつけた。

「ト○マス好きで悪いか!?」

自慢だが、私の部屋にはト○マスのビデオ、DVD、ポスター、玩具、小物、文房具に至るまでト○マスで溢れ返っている。

「そういや、お前昔、ト○マスと結婚するとか言ってたな」

「純粋な子供時代」

今も夢はト○マスのお嫁さんだ。あの灰色の不気味な笑顔が常時装備なのが魅力的だ。

「お前、明日仕事何時から?」

「八時から」

仕事辞めろと言っておきながら、仕事の時間帯を聞いてくるってどうなのだろうか。奴の思考が読めない。

「ねぇねぇ」

「ん?」

「光仕事は?」

「あ?もう始まってる」

「……………………………………………………………」

― はい?

今、この男なんと言いました?もう始まってる!?

「遅刻じゃん!思いっきり遅刻じゃん!何のんびり朝ご飯食って、のんびりニュース見て、雑談しとる場合じゃねぇだろうが!!!」

今頃、光のマネージャーは間違いなく泣いてるだろう。ボロボロ泣いてそうだ。

仕事が首になってしまったらそのまま自分の人生と光を呪って首吊ってこの世へ、「さようなら。もう二度と帰って来ねぇよ!あっかんべぇー!!」とか言ってあの世に逝ってしまいそうだ!と考えていたら、光に物凄く可哀想なものを見る目で見られていた。

「……………なんざますか?」

「………別に」

しまいには壊れ物に触るかのように、慎重に頭を撫でられ、私の心は深く傷付いた。

「光バーカ!!」

あっかんべぇ付きで言ってやるとビンタされた。

「殴ったね!?目玉親父にも殴られた事ないのに!!」

「俺もねぇよ」

素早く返された冷静なツッコミに、私はとりあえず、さっきの自分の発言がどれだけ恥ずかしいか思い知った。

「つーか、お前仕事は?」

「休むし。帰る…っ!」

叫びにも似た声を出したが、光はそれを無視して、私の胸倉を引っ掴み、ズルズルと光の自室へ引きずられる。お陰で伸びなくても良い箇所が伸びた。

「とりあえずお前、今日はここに居ろ」

「…ヤダね。ヤダわ!」

そう言って光の部屋を出ようとしたら、鍵が掛かって出られなくなっていた。ドンドンと扉を叩くが、誰も助けてはくれない。それもそのはず。今、水内家の家には私と光以外誰も居ない。

「っち。おい、穂波。これに名前書いたら外に出してやる」

名前?

コイツから逃げられるならいいや。名前ぐらいスラスラーのサラサラーと書いてやるよ!

ソファーに座って分厚い本を読んでる俳優様の正面のソファーに座り、置いてあったペンを握り、何枚か重なった白い紙に名前を書く。そこにはご丁寧に「氏名」と「フリガナ」と書かれていた。なんの意味があるのか知らないが、書いた。

「これで我が家に帰れる…!」

「書いたのか」

「濃く書いてやったぜ」

奴は本を閉じ、あろう事か一番上の白い紙をパラリとそこら辺に投げた。白い紙は見事に一部分だけ長方形にくり貫かれてあった。

「んじゃ俺、婚姻届提出してくるわ」

婚姻届?

奴は丁寧にそれを茶封筒に入れ、サングラスを掛け立ち上がった。ト○マスと私の?そう思ったら無言で睨まれ、無言で部屋を出て行かれた。

「出してえぇぇぇえええええ!!!!!!!!」

ドンドンと扉を叩くが反応は全くなかった。光が帰ってくるまでの間、無駄にデッカいドアの前で膝を抱えてグスングスン泣いていたら、なんの前触れもなく、ガチャリとドアが開いた。

「寂しくて泣いてたのか?可愛い奴だな」

「光の頭の中は花畑」

ギリギリという不吉な音を立てながら、私の頭を握り潰すのではないかと思うほどに掴まれた。

「穂波、俺が居なくて寂しかったろ?」

「…っあい、寂じがったです」

グスングスンと鼻を鳴らしながら頭をさする。痛かった。物凄く痛かった!

「で、喜べ穂波。お前は今日から俺の妻だ」

「……………」

…………マジで?

今この時、私は真っ白になって風化してしまいそうだった。

「…………嘘だと言ってよ、ト○マス……」

私の脳裏に、ト○マスの嘲笑ったような灰色の微笑みが、私に向かって、「お前の運命に付き合ってられるか」と言われた気がした(幻聴)。

「とりあえず、子作りでもするか」

「今からッスか!!?」

「当たり前だ。夫婦になったんだから、それぐらい当然だろ」

「まだ昼間だよ!?」

「いただきます」

「いやああぁぁぁぁああああ!!!!!?」

結局この日、私は嫌いなはずの光と結婚し、光に美味しくいただかれた。

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