I'm yourself
私は走っていた。
どこへ向かっているかは分からなかった。
ただ、真っ暗な世界で
不安に押し殺されないように。
いくら走っても目の前には闇が広がっていた。
どこから来たのか
どこへ向かえばいいのか
私の足は踏み出すことを止めていた。
何か聞こえる。
小さな子供が泣いている。
迷子になった子が泣き疲れ
それでも、声を嗄らせて泣く声だ。
私は声のする方に歩いた。
扉が見える。
私は、部屋に吸い込まれるように扉を開けた。
子供がいました。
上を向き、目に涙を溜め、泣き続けている。
「
ああ、そうか。
君はここで、ずっと
教えていてくれたんだね。
この真っ暗な世界で
誰かに気付いて欲しくて
助けを求めていたんだね。
ありがとう。
泣き続けるのは、疲れるよね。
もう、大丈夫。
だから、少し、お休み。
」
子供は涙を拭きながら頷くと
消えました。
「またね。迷子の子猫ちゃん。」
子供が消えた後には
新しい扉がありました。
私は導かれるように
扉を開けました。
そこには、お城があります。
私は招かれるように城門をくぐりました。
外から見たお城とは違い
中はボロボロでした。
そのボロボロのお城の中には王様がいました。
王冠とマントつけ
お城の壁を直しています。
「
あなたは、頑張っていたんだね。
誰も見てくれない
この世界で
少しでも
カッコよく見えるように
誰からも称賛を浴びなくても
いつか、だれかが
気付いてくれることを信じて。
ありがとう。
今度、みんなに見てもらおうね。
少し、ボロボロだけど
それで、いいじゃない。
完ぺきではないけれど
努力した証しだもの
だから休んで大丈夫だよ。
」
王様は、ニッコリと笑みを浮かべると消えて行きました。
「またね。裸の王様。」
王様が消えると玉座が消え下に降りる階段が現れました。
階段の奥から怒声が聞こえます。
降りて行くと並んでいる人々。
そして、その先には怖い顔で
人々に判決を下している裁判官がいます。
「
あなたは、この先の見えない世界が
よりよい世界になるように
行動の一つ一つを判定していたんだね。
怠けないように
決まりを守るようにと。
他人から見られても
恥ずかしくないと胸を張れるように。
あなたが頑張っていたから
正しいと思えることを行動に移すことができていたんだね。
ありがとう。
大丈夫。
あなたのおかげで
私は正しく生きていける。
だから、無理はしないで
たまには休んでね
」
裁判官は、厳しい顔で頷くと消えてました。
「また、よろしく心優しい閻魔様。」
誰も居なくなった部屋の床が消えました。
私は下の部屋に落ちたようです。
そこには、ニコニコ笑っている人がいます。
部屋に声が響きます。
罵声、嘲笑
そして、長い無音
「
ああ、君は
苦しい時もそうやって、笑っていてくれたんだね。
いつまで続くか分からない
闇に覆われている
この世界が
怒りや悲しみの色で染まってしまわないように。
他人から受ける苦しみを
少しでも和らげようと
他人に与える不快感を
少しでも無くそうと
笑顔の仮面の下で耐えてくれていたんだ。
ありがとう。
君のおかげで私は笑顔を失わないで
今日を生きている。
だから
たまには、笑顔の仮面を外して
泣いても、怒っても
大丈夫。
そして、今度は仮面じゃない素顔の笑顔を
みんなに見せてやろうよ。
」
ニコニコ笑っている人はお辞儀をすると消えました。
「また会おうね。ピエロさん。」
部屋には、また扉が現れていました。
扉を開けると、たくさんの紙に囲まれた人がいました。
その人は、紙に点数と一言を書いています。
「
あなたは
ここで、評価をつけているのですね。
この何も無い世界の可能性を信じて
あの時、こうした方が良かった。
もう少し頑張れるはずだったと。
ありがとう。
あなたのおかげで私は
成長する余地があることを
努力する楽しみを
知ることが出来た。
だから
私はあなたの働きに感謝と休息を与えたい。
大丈夫
あなたが休んでも
私は頑張っていける。
」
その人は“よくできました”と書いた紙を渡して消えました。
「またよろしく。“駄目ね”が口癖の批判者さん。」
誰も居なくなった世界が歪みました。
その歪みが収まった時
ベッドに寝ている病人がいました。
「
君はこの無限に広がる世界が
壊れないように見守っているんだね。
一度、壊れそうになった
そして、
闇に覆われた世界だけど
それでも
この世界を愛してくれているんだ。
ありがとう。
おかげで私は
自分の両足で立っている。
だから
再びこの世界が不安定になるまで
安心して休んで大丈夫。
」
病人は安らかな寝顔を見せ、消えて行きました。
「またね。“もう無理”が口癖の心配性さん。」
病人が寝ていた所には大きな穴が開いていました。
私は思い切って穴に飛びこみます。
穴の奥には、膝を抱えて座り込んでいる人がいました。
「
君は、この誰にも見つからない奥底で願っているんだね。
この真っ暗な世界を支える人々の努力が
無駄にならないように。
ごめんね。
そして、
ありがとう。
みんなのおかげでこの世界は
もう少し頑張れそうなんだ。
だから
大丈夫だよ。
さあ、立ち上がって
歩いていこう。
」
その人は立ち上がると恥ずかしそうに頷きました。
「またね。引っ込み思案な臆病者さん。」
「そして、みんなに。ありがとう。」
真っ暗な世界に光が広がっていきます。
真っ白に変わった世界には一人の仮面を付けた人が立っています。
「久しぶりだね。私。」
「あなたは私?」
「そう。私はあなた。半分は正解。」
「半分?」
「そう。私はあなた。でも、私は世界でもある。」
そう言って、仮面の人はコップと水を出した。
「これは何に見えるかい?」
「水?」
「そう、水だね。飲んでご覧。」
「普通の水ね。」
「そう。普通の水だった。そして、今はあなたの身体の一部となって、あなたを構成している。」
「うん。」
「じゃあ、これは?」
仮面から涙がこぼれている。
その涙は、
地面に川を作り、
海へと流れ
雲となり
雨となってコップの中へ戻って来た。
「これは・・・水。」
「そう。水。私を構成していた一部。そして、世界を構成していた一部。」
「私が飲んだ水も?」
「そう。あなたと水と世界は同じものなんだ。だから、私はあなた。私は世界。」
「そうね。私もあなたも、この世界と同じなのね。」
仮面の顔が笑顔に変わると
その人は粒子に変わり世界へ溶け込んでいききます。
真っ白だった世界に色が付いていきます。
空の色
大地の色
花の色
世界に希望と言う名の色が付きました。
「ありがとう。」
仮面の人が立っていた所には小さなキツネがいました。
「やっと、会えたね。もう一人の私。」
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