6話
思いがけず相田君が暴走し始めたので、まどか視点に戻ります。
彼と私は、弁当とお菓子を交換する仲になりました。
…一体誰がこの展開を予想したでしょうか。
彼は料理友達が欲しかったようです。
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あの衝撃発言を即座に脳内処理し、空耳だと判断しました。だって彼のような寡黙キャラが「可愛い」なんて言うわけないじゃないですか。彼のことを考えすぎて脳が麻痺しましたかね。
さてこの次の会話をどうするか…と悩んでいると、彼から思いがけない提案がありました。
なんと、彼の作った弁当をこれからも食べてくれないか、と言うんです!
やっぱり作っていたのは彼だったんですね…って今はそこじゃなくて、なぜ私にそんなおいしい話を持ちかけてくれるのでしょう。いや、私としては美味しいごはんが食べられるのは最高に嬉しいですけど。
その代わりに私の作ったお菓子が食べたいそうです。ようやく話が見えました。彼は弁当男子であり、スイーツ男子でもあったのですね!合点です!
お菓子を作るだけであの美味しい弁当が頂けるなら、いくらでも作りましょう!私にとっても悪い話じゃありません。一人暮らしだとお菓子を作ってもなかなか消費できませんからね。
というわけで、ここに彼と私の料理同盟が結成されたわけです。(物々交換とも言えますが)
今日も彼から弁当をもらい、ハッピーランチタイムです。今までの社食も好きでしたが、彼の弁当と比べると差は歴然です。申し訳ない。ここ最近の昼食の充実ぶりのおかげか、なんだか体が健康になった気がします。バランスもいいですから。職場の先輩には「肌がツヤツヤしてる。彼氏できた?」なんて聞かれてしまいました(後半部はスルーです)。本当に相田君ありがとう!君のおかげで周りからの評価が上がりました。
しかし、うまい話には裏がある。とでも言えばいいのか…相田君から更なる提案を持ちかけられたのです。
彼曰く、私の作った弁当が食べたいと。
「駄目なんです!弁当だけはNo!」と心の中で絶叫しつつ、丁重にお断りしました。
お菓子だけじゃ満足できませんか?やっぱり弁当対お菓子じゃ割に合いませんか。ですよね…。でも本当に弁当は嫌なんです。
彼はもう少し食い下がりたい様子でしたが、私の頑なな表情を見て(しぶしぶ)引きさがってくれました。気を使わせて申し訳ない。
いつもおいしいごはんをくださる彼に同じものを返したいという気持ちは、常にあるんです。でもその気持ちの奥に燻るトラウマがあるのです。他人にとってはショボイ過去ですが、私には大事件だったもので、ここ数年弁当を作れなくなってしまいました。
ほんとにどーしようもない話なんですけどね。
というわけで、次回まどかのどうでもいい過去話です。
まどかちゃんのお肌がきれいになったのは、相田君の愛情の賜物でしょう。