5話
彼視点です。
そして彼のキャラも迷子です(笑)
昨日の彼女が忘れられず、気付けば今日も俺の手には弁当がある。
今朝、弟妹の弁当を作り終えた時、もう一つ弁当があるのを見て驚いた。無意識の行動というのは恐ろしい。
とにかく、彼女にまた俺の作った弁当を食べてほしい。まずはそこからだ。
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さて、この弁当をどうやって彼女に渡すか。
わざわざ彼女の部署まで届けるというのも手かもしれないが、流石に引かれるかもしれない。やはり昼休みに彼女を待ち伏せてこっそり渡すしかないか…などと考えていると、なんと向こうから俺の部署へやって来るではないか。
(飛んで火に入る…)
という言葉が頭を過ぎる。少しおどおどした表情が可哀想な子羊に見えて仕方がない。
とりあえず先手必勝とばかりに彼女に今日の弁当を渡す。
予想外の俺の行動に、戸惑うように俺の顔と弁当を交互に見る彼女が愛らしい。
第一段階である「弁当を渡す」を早々にクリアした俺は、さっと彼女から昨日の弁当箱を奪い、会話の隙を与えずにその場を後にした。物言いたげな彼女の視線を感じながら。
帰宅してから弁当箱を取り出すと、中からクッキーが出てきた。
もしかして弁当の礼か?と、ありがたく頂いた。しかしなぜ弁当箱に詰められていたのだろうか。彼女のセンスもなかなかおもしろく、つい笑いがこみあげる。近くにいた弟が俺を遠巻きにしていたのには気付かないふりをしてやろう。
きっと彼女は食べることが好きなんだろう。昨日の表情を見て思った。
だから俺は決めた。彼女の胃袋を全力で掴むことを。
そして手始めとして毎日弁当を渡すことにした。嬉しい誤算だったのは、彼女もまた手作りの菓子を返してくれることだ。実は俺は甘いものが好きなので、ここ最近は帰宅して彼女の菓子を食べるのが楽しみとなっている。
彼女の作る菓子はお世辞抜きで美味い。菓子がこれだけ上手く作れるなら、料理の腕もそれなりではないかと予想しているのだが…。
この時、俺の中で彼女が俺の家の台所に立って料理している光景が浮かんでいたのは間違いない。
行ける所まで絡み取ろうと決定した瞬間だった。
相田君の何かのスイッチが入った模様です。