2話
あれから一週間。今日も私の手には彼からの弁当があります…。
いや弁当箱返さなかったわけじゃありませんよ!?
毎日手渡されるんです。無言で!!
***************************************
あの弁当事件の翌日、弁当箱を彼に返そうと始業前に彼の部署に行ったわけですよ。
なぜ当日返さなかったのか??そりゃそうしたかったさ。でもこっちがちょーっと残業してる間に帰られちゃったんだから仕方ないよね。
とにかく、弁当は実際見た目を裏切らないおいしさだったし、一食分浮いたわけだから、と思ってお礼にと焼いてきたクッキーを携えて普段は行かないフロアに行ったんです。
まだ出社している人はまばらでしたが、彼はデスクで既に何か作業をしていました。
私の中では「昨日はお弁当ありがとう。おいしかったです。口に合うかわからないけどクッキーどうぞ」というセリフが既に出来上がっていたんですが……私に気付いた彼にまたしても弁当を押しつけられてしまいました。
慌ててこれ以上は受け取れないと言おうとしたのですが、段々出社してくる人が増えているのを感じて躊躇ってしまったのが敗因でしょう。
だって!!
若い男女が口論→女子社員の手には弁当→その弁当をめぐって何やら諍い?→西森さんが無理矢理渡そうとしてる?→まさかストーカー!?
という図式が頭をよぎってしまったんですからね。この一足飛びな発想は妄想女子の悲しい性です。たぶん。
私が詰まってしまった一瞬を逃さずに、彼は弁当箱とクッキーを手に取り、どこかへ行ってしまいました。
…何も言わずに。
そんなパターンが毎日、場所は違えど繰り返され、そして今日も私の手には彼からの弁当が収まっているというわけです。もう笑うしかないってこういうことだと思います。
しかし、なし崩しに頂いている弁当ですが、お世辞ではなく本当に美味しいです。
毎回おかずも目新しく、味付けも少し濃い目で私好みなので、実は初めほどの躊躇いはないというか…。
ぶっちゃけここ最近の楽しみになってます!
もちろんもらってばかりでは申し訳ないので、私からはお菓子を提供させていただいています。
この時ほどお菓子作りが趣味であったことに感謝したことはありません。
さて私の言い訳はこの辺にして、明日こそは彼から説明してもらいたいものです。
なぜ私に弁当を渡すのか、なぜ中身が可愛らしいのか、弁当を作っているのは誰なのか。謎が多すぎです。
…一週間何やってたんだ!という苦情は受け付けませんのであしからず。
拙い文章ですが、読んでくださった皆様ありがとうございます。