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17話

俺の目の前で目を見開いて硬直している彼女。もう君の全てが欲しい。

まだ早いのはわかっている。でもどうしようもなく君が好きだから。俺を受け入れて。


****************************


最近自分がおかしいのは自覚していた。何をしても彼女のことばかりで、会えば触れたくて、会えない時は早く彼女の顔を見たくて。ようやく彼女と想いが通じ合ったばかりだというのに、何かに急かされるようだった。流石に職場では真面目にやっていたが、一歩外に出るともう駄目な自分がいた。

彼女は可愛らしい。あまりそういう行為に慣れていないようで、軽くキスをしただけで顔を赤くするのも初々しくて、俺がどうにかなりそうだ。彼女と一緒にいて満たされる俺がいる一方で、もっともっとと催促する俺もいる。これまで付き合った女性が何人かいたが、今回のような状態になったのは初めてで戸惑ってしまう。彼女の仕草を見逃さないように、言葉を聞き逃さないように、自分の全神経を彼女に向けていると言っても過言ではなかった。こんなに自分が重たい人間だとは思わず、いつか彼女に嫌われてしまわないかと不安になる。

誰でもいい、俺に活を入れてくれ。



という話を、恥を忍んで妹に相談した。この妹、外見はぽやぽやしているが、中身はしっかり者だ。たぶん弟よりも。

兄としての威厳が崩れる覚悟で彼女への気持ちと、自分の駄目っぷりを吐露したのだが、俺の予想とは裏腹に、妹は一言「自覚してるんなら大丈夫でしょ」と言っただけだった。それはやっぱり俺が重いということか。



悶々と悩んでいても、彼女の前では頼れる男でいたい。しかしそんな決心も彼女を見た瞬間吹っ飛ぶ。

今日も待ち合わせ場所に現れた彼女を見て心臓がうるさいほど高鳴り、それを悟られたくないばかりに彼女に必要以上にべたべたしてしまった。…引かれてないか、俺。

自分の情けなさに落ち込むのは後にしろ、と気分を鼓舞させ、なんとか今日のデートも無事終わろうとしていた。…俺の中の打算的な部分が顔を出すまでは。


だって仕方ないじゃないか。今にも降り出しそうな雲を見ていたら、突然閃いてしまったのだから。

つまり…彼女と長いキス+雨が降りそう=彼女の家で雨宿り、みたいな。案の定、キスしている間にどしゃぶりになってしまい、まんまと成功したわけだが。

初めて入った彼女の部屋は、明るい色合いの心地よい空間だった。どこにいても彼女の気配を感じられ、自分が求めていたのはこれなんじゃないかと思う。やはりプロポ…まだ早いか。落ち着け。


彼女の淹れてくれたコーヒーを飲みながら他愛のない話をしていると、ふとした瞬間の彼女の横顔に色気を感じてしまう。慌てて目を逸らして気持ちを落ち着かせようとするが、どうにもうまくいかない。遂には彼女の顔をちらちら窺う始末。そんなに無防備でいないでくれ。俺を試しているのか。

その時、彼女の笑顔が俺を貫いた。冗談じゃなく心臓が鷲掴みにされるってこういうことかと思った。


そして気付いたら彼女を押し倒していたわけだ。


絶対に大事にする。だから俺を受け入れて。

そんな想いをこめて彼女の顔にキスしていく。赤さの消えない彼女に一層の愛しさを感じ、ついに彼女の全てを俺のものにしようと、シャツの下に手を入れようとした時…



頬をものすごい勢いで殴られた。

一瞬何が起こったのかわからないくらいの衝撃だった。


はっとして彼女を見れば、涙目で全身を赤くしていた。

…まずい、やりすぎた。サーっと自分から血の気が引く音が聞こえる。絶対嫌われた。俺終わった。

すると彼女が口を開く。拒絶の言葉なんて聞きたくない!


「ここここういうのは結婚してからじゃないとダメなの~~~~!!」




あれ?俺嫌われてない?大丈夫?


縋る思いで「俺のこと嫌いになった?」と彼女に問うと、ぶんぶん首を横に振っている。

なんだそうか。まだ好きでいてくれるか。良かった。ほっとするとさっきの彼女の言葉がよみがえる。

結婚するまでダメってことは、俺とそういうことするのに抵抗はないってことか。むしろ結婚してもいいみたいに聞こえるが。…やばい顔がにやける。だってそれってそういうことだろ。


『最初で最後の男』


男のロマン。最高じゃないか。



全然落とせなかった…

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