15話
そんなオチとは知らず落ち込む彼。
彼視点でどうぞ。
これはなんだ。俺は夢を見ているのか。
夢ならどうか覚めないでくれ…!
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彼女の一撃から立ち直れないまま眠れない夜を過ごし、それでも弁当は忘れずに持って職場へ向かった。
もう振られたんだから弁当交換も終わりかな…と悲しいことを考えながら、それでも彼女を諦められそうにない自分に嫌気が差す。しかし彼女だって気まずいだろう。ここは相手のことを思いやって俺が身を引くべきじゃないのか。
よし、もうきっぱりと今日で終わりにしようと言おう。
そんな決心と共にいつもの場所へ行けば、若干顔色の悪い彼女がいた。やはり俺のことで悩ませすぎたか。
弁当を差し出し、精一杯のプライドから話を切り出す。しかし。てっきり彼女もそのつもりだと思っていたのに、拒否するように首をブンブン振っている。おい、もげるぞ。
一体どういうことだ。俺を恋愛感情では見れないが、弁当交換はしたいということか。俺は弁当だけの男なのか。頭の中をいろいろな考えが回って困惑していると、彼女が小さな声で聞いてきた。
「昨日のことなんだけど…もしかして「ごめんなさい」が返事だと思ってる?」
………違うのか?でもそれ以外に考えられないんだが。
とりあえず詳しい話を聞かなければと、彼女の問いに頷く。すると彼女はさらに顔色を悪くして「のりは見てない?」と呟いた。
のり?海苔?なんで今それ。話が見えない。
……まさか。
「海苔で返事したってこと?」
恐る恐る尋ねると、今度は顔を真っ赤にした彼女がいた。
なんてこった。まさかの海苔とは。
想像もしていなかった展開に頭が追いつかない。つまりあれか?彼女は弁当で返事をしてくれたのか。そしてそれは「ごめんなさい」ではない。ということは…
弁当の神様、ありがとう!!!!!!
無意識だったのか気がつけば彼女を抱きしめていた。俺のこと好きなんだよな。そう思っていいんだよな。
でもまだ安心はできない。俺の腕の中の彼女に強請る。
「ちゃんと言ってくれないとわからない」
その言葉にさらに顔を赤くした彼女が、恥ずかしさからか顔を俯かせ、ぎゅっと俺の背中に手を回した!生きてて良かった!彼女の感触に、幸せに浸っていたいところだが、今は続く言葉を一字一句聞き逃さないように集中する。
「好きです」
耳元で囁かれた一言に心臓を打ち抜かれた。やられた。可愛すぎる。幸せすぎてやばい。
「俺も好き」そう彼女に返し、少し腕の力を緩めて彼女の顔を見た。嬉しそうに瞳を潤ませ、俺を見上げる彼女。きっと俺も同じような顔をしているんだろう。やっと!やっと彼女を手に入れた。
俺頑張ったよな。ご褒美もらっても許されるよな。
人気のない階段+腕の中の可愛い彼女=キスしてよし!
そんな方程式が瞬時に計算され、そっと彼女の頬に手を添えた。本当ならもっといいシチュエーションでするべきなのかもしれないが、俺はもう我慢できない!いただきます!
午後の業務がすこぶる捗ったのは言うまでもない。
あまーい。