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ラプンツェルにさよなら  作者: みどり風香
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旅人、ふたたび

 こんこん、と窓が鳴る。エミリオは素直に窓を確認すると、見覚えある外の人間が窓をたたいていた。

「あ」

 ここ一帯はエルクの結界で守られているというのに、なぜここまで入ってこれたのか不思議だった。そう思ってはいたが、また会えた安堵感のほうが強かった。だから窓を素直にあけて、彼を部屋に入れた。

「どうして入ってこれたの?」

「あ? 普通に入れたぞ」

「うそ。だってエルクの結界が張ってあるのに」

「つってもなあ、入れちまったもんはこれ以上説明のしようがないだろう」

 それもそうか、とエルクは無理やり落ち着いた。

 エルクに見つかるとまずいので、エミリオは彼がいつでも逃げられるような準備はしておいた。隠れ場所も拙いながらに整えた。いろいろと、外の話を聞きたがっていたため、彼との逢瀬を止められるのを避けたかった。

「実はちょっと人に頼まれてんだ」

「なにを?」

「この屋敷にな、十五六の子供がいないかって」

「僕くらいの子? エルクは十四くらいだけど。なんで」

「探してるんだって。昔さ、村から逃げてきた兄弟二人が子供を拾ったんだよ。そのうち一人が大けがして、魔女に拾った子供と引き換えに治してもらったんだったかな。連れてかれた子供は、生きてれば十五歳くらいじゃないかって。俺はその子供を探しにここまで来たんだ。もしかしたら、お前がその魔女につれてかれた子供なんじゃねえの?」

 彼は名前も名乗らずに自分の仕事や聞いているエミリオの出生の可能性をすらすらと述べる。

 エミリオは実感がわかない。生まれてこの方、この屋敷から出た経験がない。外に自分の家族がいるとは考えもしなかった。

 唐突すぎる。エルクのことは信頼しているし、これまで自分をないがしろにするという行為に及ばれたことはない。むしろ大切に育てられていた。

 自分はどうすべきなのだろう。今まで育ててくれたエルクを捨てて家族のもとへ帰るのか。それともずっとここで死ぬまでエルクと一緒に暮らすのか。

「俺は、おまえがその子供だって考えてる。頭悪いしバカだからさ、根拠はないけど。噂の魔女屋敷ってきっとここのことだと思うんだ。魔女の住む屋敷は普段は入れないっていわれてる。でも俺は偶然にも二度入れた。たぶん俺には魔女の結界が通じないんだ。そんなとこに入れるんなら、そこにいる子供を外から連れ出すことだってできるさ」

「僕、ここからでなくちゃだめなの?」

「無理にとは言わないけど、せめて元気で暮らしてることくらい、会って伝えたほうがいいんじゃないか?」

「外の人間が、僕をとっちめるためについてる嘘だとしたら?」

「なんつー妄想……」

 彼はため息をついた。

「大丈夫だよ。俺は実際会った。悪い奴じゃない。それどころか表彰もんのお人よしだよ」

「でも……」

「俺がついてってやるって。一度会うだけでいい。それ以上は強要しないさ。外がなじまないんだったらこっちに帰ってもいい」

「うん。……ちょっと考えさせて」

 エミリオは、彼にまた名前を聞くのを忘れ、名も知らないまま、彼と別れた。

そろそろ後半かなあ。こっちのシリーズはもうすぐ完結となります。どうかのんびり付き合ってやってくださいませ。

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