表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放令嬢の【土壌改良】は神スキルでした。不毛の地で楽園作ってたら、今更元婚約者と偽聖女が土下座しに来ましたがもう手遅れです!  作者: 黒崎隼人


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/17

第六章:楽園の噂と、王都の焦り

 クラウス様が私の領地に滞在するようになってから、一月が過ぎた。

 彼は騎士団長の仕事を部下に任せ、極秘任務という名目で、私の領地の調査――というよりは、農作業の手伝いをしてくれるようになった。

「鉄血騎士」の異名を持つ彼が、クワを手に畑を耕す姿は少し滑稽だったけれど、その手つきは真面目で実直な彼の人柄そのものだった。

「クラウス様、もう十分ですわ。そんなに根を詰めては、お体を壊します」

「いや、これは俺の使命でもある。それに……君の作るスープの礼だと思えば、安いものだ」

 ぶっきらぼうにそう言って、顔を少し赤らめるクラウス様。堅物な彼のそんな一面を見るたびに、私の胸は少しだけ温かくなる。

 フェンもすっかり彼に懐いて、畑仕事の合間には、彼の足元でじゃれつくようになった。その光景は、まるで昔からそうであったかのように、自然で、穏やかな時間だった。

 そんな平和な日々の中、エリアーナ領の噂は、行商人たちの口コミによって、ゆっくりと、しかし確実に広まっていった。

「辺境に、奇跡の楽園があるらしい」

「そこでは、どんな不毛の地でも黄金の穀物が実るそうだ」

「病を癒す薬草や、果物のように甘い野菜が、山のように採れるとか」

 噂は尾ひれをつけ、私の領地は「聖者の楽園」とまで呼ばれるようになっていた。時折訪れる行商人たちは、私の作る高品質な作物や加工品を喜んで高値で買い取ってくれ、領地の財政は驚くほど潤っていった。そのお金で、私たちは新たな農具を買い、村の家を修繕し、領地はますます豊かになっていく。


 一方で、私が追放された王都は、深刻な事態に陥っていた。

 クラウス様がもたらす情報によると、王国の「土地枯渇病」は日に日に悪化の一途をたどっているという。

 王都の市場からは食料が消え、パンの価格は数倍に高騰。民衆は飢え、あちこちで暴動が起き始めていた。頼みの綱であった聖女リリアの「光の奇跡」も、なぜか近頃は力が弱まり、大した効果を発揮できなくなっていた。

 それもそのはずだ。リリアの力の源は、土地や他者から奪った生命力。その土地自体が枯渇し始めている今、彼女の力が弱まるのは当然の帰結だった。

 王城では連日、対策会議が開かれているが、誰も根本的な原因を突き止められず、右往左往するばかり。貴族たちは自らの領地の食糧を囲い込み、民衆の苦しみには見て見ぬふりをしていた。

 そんな絶望的な状況の中、王都にも「辺境の楽園」の噂が届き始める。

 最初は、誰もがそれを荒唐無稽な作り話だと笑い飛ばしていた。あの不毛の地が、楽園になるはずがない、と。

 しかし、行商人たちが持ち帰る、見たこともないほど見事な作物や、辺境領の活気に満ちた話が具体的になるにつれ、王城の雰囲気は徐々に変わっていく。

「まさか……あの追放した女が、何かを?」

「ありえん! あれはハズレスキル持ちの役立たずだったはずだ!」

 焦りと疑念が、王城の玉座に渦巻き始める。

 そして、ついにアルベルト王子は、その噂の真偽を確かめるため、辺境の地へ調査隊を派遣することを決定した。

 彼らはまだ知らない。

 自分たちが捨てた石ころが、国を救う唯一無二の宝石だったということを。

 そして、その宝石は、もはや彼らの手の届かない場所で、強く、美しく輝いているということを。

 穏やかな辺境の楽園に、王都からの黒い影が、刻一刻と迫っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ