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追放令嬢の【土壌改良】は神スキルでした。不毛の地で楽園作ってたら、今更元婚約者と偽聖女が土下座しに来ましたがもう手遅れです!  作者: 黒崎隼人


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第四章:村の再生と、芽生える信頼

 フェンが家族に加わってから、私の生活は一層彩り豊かになった。

 私が畑仕事を始めると、フェンはいつも傍らでちょこんと座り、尻尾をぱたぱたと振って応援してくれる。私が育てた野菜が大好きで、特に甘いトマトがお気に入りのようだ。

 数日後、私は意を決して、この領地にある唯一の村を訪ねることにした。収穫した野菜を大きなカゴに詰め、フェンを連れて、村へと向かう。

 村は、想像していた以上に寂れていた。土壁の家はところどころ崩れ、道行く村人たちの顔には生気がなく、皆一様に痩せている。畑は見るも無残に荒れ果て、作物はほとんど育っていなかった。

 突然現れた私と、その腕に抱えられた色とりどりの瑞々しい野菜に、村人たちは驚きと警戒の目を向ける。

「あんたは……確か、王都から追放されてきたっていう……」

 年配の男性が、訝しげに私に声をかけた。村長さんだろうか。

「はい。この度、この地の領主を拝命いたしました、エリアーナ・フォン・ラピスと申します」

 私が貴族の礼をすると、村人たちは一様に身を固くした。貴族に対して、良い思い出がないのだろう。

「……領主様ねぇ。我々には、あんたに納める税なんて一欠片もねぇですよ」

「いいえ、税をいただきに来たのではありません。皆さんと、仲良くなりに来たんです」

 私はにっこりと微笑み、カゴいっぱいの野菜を差し出した。

「これは、私の畑で採れたものです。よろしければ、召し上がってください」

 村人たちは、信じられないものを見るような目で、野菜と私を交互に見つめる。こんなに立派な野菜が、この不毛の地で育つはずがない、と顔に書いてある。

 しかし、野菜から放たれる生命力と、そのあまりの美味しそうな見た目に、誰かがごくりと喉を鳴らした。

「……本当に、もらっていいのか?」

「もちろんです。たくさん採れましたから」

 私の言葉に、おそるおそる一人の女性がトマトを手に取った。そして、一口かじった瞬間、彼女の目が大きく見開かれる。

「なっ……あ、甘い! こんな美味しいもの、食べたことない!」

 その声を皮切りに、村人たちが次々と野菜に手を伸ばし、あちこちで驚嘆の声が上がった。子供たちは、甘いニンジンを奪い合うようにかじっている。

 その日の夕方、村では久しぶりに温かいスープが炊き出され、広場には笑顔と活気が戻っていた。

 私の野菜を食べた村人たちは、みるみるうちに顔色も良くなり、元気を取り戻していったのだ。

 翌日、村長さんが私の家を訪ねてきた。

「領主様。どうか、我々にあんたの農業のやり方を教えてはくれねぇだろうか」

 彼は深々と頭を下げた。

「もちろんですよ!」

 その日から、私と村人たちの共同作業が始まった。

 私は【土壌改良】のスキルを使い、村の荒れ果てた畑を次々と豊かな黒土に変えていく。村人たちは、私の指示に従い、水路を整備し、畑を広げていった。最初は半信半疑だった彼らも、魔法のように変わっていく大地を目の当たりにして、次第に私を「領主様」として心から慕い始めてくれた。

「領主様は、まるで本物の聖女様みてぇだ」

 誰かが言ったその言葉は、村人たち全員の気持ちを代弁していた。

 王都では「偽りの聖女」が光の奇跡で人々を魅了しているらしいけれど、ここ辺境では、地味な【土壌改良】スキルが、人々の命を繋ぎ、生活を根底から支える偉大な力となっていた。

 畑が広がり、収穫量が増えると、村の食糧事情は劇的に改善された。子供たちの笑い声が響き、大人たちの顔にも希望の色が戻ってくる。

 私は、この光景が見たかったのだ。

 誰かに認められるためじゃない。自分の力が、こうして誰かの役に立ち、笑顔を生み出せる。その事実が、何よりも私を満たしてくれた。

 私の居場所は、確かにここにあった。

 この大切な場所を、何があっても守り抜こう。

 私は、豊かに実った畑と、活気を取り戻した村を眺めながら、心に固く誓ったのだった。

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