エピローグ:楽園の祝福
あれから、数年の時が流れた。
かつて不毛の辺境領だったこの地は、今では「聖樹の恵み国」と呼ばれる、緑豊かな美しい独立国へと発展した。国の中央には、私とフェンの力によって蘇った巨大な神木がそびえ立ち、その恩恵は国中に豊かな実りをもたらしている。
私は、この国の元首として、そしてクラウスの妻として、忙しくも充実した毎日を送っていた。
「エリアーナ、あまり無理はするな。体に障る」
執務室で書類を整理していると、夫となったクラウスが、心配そうに私の肩にブランケットをかけてくれる。彼の青い瞳は、昔の厳しさは鳴りを潜め、今は私への愛情でどこまでも優しい。
「ふふ、大丈夫ですよ、あなた。この子も、強い子ですから」
私は、少しだけ膨らみ始めた自分のお腹を、愛おしそうに撫でた。そう、私たちの間には、新しい命が宿っているのだ。
私たちの足元には、すっかり大きくなった守護聖獣フェンが、穏やかな顔で寝そべっている。彼は今やこの国の守り神として、民から敬愛される存在だ。でも、私とクラウスの前では、昔と変わらず甘えん坊なままだ。
窓の外に広がるのは、私が夢見た以上の楽園。
子供たちの笑い声が響き、人々は助け合い、豊かな大地からの恵みに感謝して暮らしている。
王都で虐げられていた頃には、想像もできなかった光景だ。
価値は、誰かが決めるものじゃない。環境や、与えられた能力で決まるものでもない。
自らの手で何を成し、何を証明するか。
そして、何を大切にして生きていくか。
その全てが、自分の価値になる。
私は、愛する夫と、お腹の中の新しい命、そして忠実な相棒であるフェン、心優しい国民たち、そして何よりも、この豊かな大地に囲まれて、心からの幸福を噛みしめていた。
「クラウス、お腹すきませんか? 今日は、あなたの好きなカブのポタージュにしましょうか」
「ああ、君の作るものなら、なんでも歓迎だ」
他愛のない会話と、穏やかな日常。
これこそが、私が本当に欲しかった、最高の宝物。
私の土いじりは、世界で一番幸せな未来を、この手で耕すことができたのだ。
物語はここで終わるけれど、私たちの幸せなスローライフは、これからもずっと、ずっと続いていく。




