『《斧鬼》と呼ばれるダウドの過去』
俺にも、弱い頃はあった。
病弱ではなかったが、魔物を倒すのに苦労した日々もなかったわけではない。
俺が12歳の頃、憧れていた冒険者が居た。
村民で、星なしの冒険者であるダイロに、よくせがんで魔物狩りに同行していた。
その日もダイロにせがんで、魔物を狩りに友人のリゼルと森に赴いた。
ダイロを先頭に、俺とリゼルが後方に並んで歩く。
「今日も懲りずに、シャナが魔物狩りなんて行くななんて言ってきたぜ。あいつと違って魔物なんて怖くないね!ふんっ!」
「シャナの言う通りにしとけば良かったと思うときが来るぜ。リゼルとダウドよぉ」
「ダイロおじさんまでシャナの味方かよ!情けねぇぜ、なぁーダウド?」
リゼルが余裕そうに頭の後ろで両腕を組んで返答した。
「あぁーそう、だな……」
俺はリゼルの隣でいつでも長剣を鞘から抜けるように緊張を解かずにいた。
「ダウドぉ、なんだその返事はよぉ……」
ダイロが通り過ぎた樹の影から太い赤い毛に覆われた腕が飛び出し、鋭い爪がリゼルの腹を斜めに引き裂いた。
「あぁぁぁああぁぁぁあああぁぁぁっっ!!いでぇぇええぇぇぇ……うぅぅうぅぅ……」
「リゼルぅっ!?こりゃぁっ赤熊じゃねぇか!!ダウドは無事か?回復薬を傷口に!!」
俺はリゼルに近付き、屈んで、投げられたダイロの鞄から回復薬を探して、瓶を掴んで、蓋を開けてリゼルの腹の傷口に流した。
「ダイロおじさん!!回復薬では治らないよぉっっ!!どうしたら良いの!?」
俺はダイロに叫んだ。
「俺だけじゃ赤熊を仕留めきれそうにない!!誰か助けを求めろ!!リゼルを死なせたくないなら、安全そうな所を探して運べ!!」
俺はダイロを背に村へとリゼルを運びながら必死に走った。
魔物が出なさそうなスペースを見つけ、リゼルをそこに置いて、村へと戻って助けを求めた。
数人の男たちと赤熊に襲われた場所に戻った。
ダイロも何箇所か傷を負って、どうにか立っていた。
俺も長剣を鞘から抜いて、助けを求めた男たちと赤熊を倒しにかかる。
俺は脚を止めずに駆けまわり、赤熊が攻撃を出来ずにして、長剣でダメージを与え続けた。
なんとか赤熊を仕留め、祭りが開催されたが、はしゃぐ村民達は居なかった。
リゼルが亡くなった。
シャナが、何も言わずにシャセ村から出て行って、俺もシャセ村が嫌になり、飛び出して、目の前で誰かを失わない為に強くなろうと決意した。
ヴァリスに流れついて、当時の冒険者ギルドの支部長が俺をスカウトに来たが何百回か断り、戦いに疲れたときにスカウトを受け入れた。
そして、現在はヴァリスの冒険者ギルドの支部長として生きている。
厄介な冒険者を抱え、頭を悩ましているのだった。




