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沈黙の中のソナタ

ユリは、いつからか周囲の音ばかりを気にするようになっていた。

誰かの期待、誰かの評価、誰かの心配。

そのたびに心がざわめき、自分の声が聞こえなくなっていた。


ある晩、静かな山のふもとの小屋に一人で泊まることにした。

風の音、葉のこすれる音、遠くで鳥が羽ばたく音。

ふと、何かが胸の奥で震えているのを感じた。


それは、自分の音だった。

幼い頃に好きだった旋律、絵本を読んでもらった時のぬくもりの記憶。

悲しかった日のピアノの和音、笑った日の鼻歌。

それらすべてが、自分の音として今、内側で静かに響いていた。


ユリはそっと目を閉じ、耳を澄ます。

「私は、ここにいる。誰のものでもない、私自身の音で」


その夜、ユリは生まれて初めて、完全な沈黙の中で、自分だけのソナタを聴いた。

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