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オマケ小話01.二人の出会い。

 これは、ユークリッドが少年と呼ばれるようになって数年が過ぎた頃。

 そして、クリスが幼年を脱し、少年と呼ばれ始めた年頃の話。

 

 ユークリッドとクリスが出会ったのは、クリスがフィーリア公爵家に拾われてすぐの頃だ。

 元々孤児だったクリスだが、幼少時に公爵家に拾われた後は暗殺者としての教育が行われることになっている。

 しかし、教育の結果が出るまでは時間がかかる為、それまでは使用人クリスとしても働かされている。


 そう、この頃にクイン(本物)とユークリッドの婚約が成立し、幼い二人が初めて会った日。

 都合によりユークリッドがフィーリア公爵家に訪れた時が、二人の出会いだった。

 そう、クリスがまだ使用人見習いを始めた頃の話だ。


「さぁさぁ、ユークリッド様。こちらが我が公爵家の屋敷ですわ」


 礼儀も何もなっていないクインがユークリッドを連れて公爵家に入って来る。

 そんな二人を出迎える使用人達の端にいたのが、クリスだ。

 この時、クリスは只々緊張して立っていた。


「おや、彼は?」

「彼?使用人なんてどうでもいいではないですか」

「あぁ、気になってね。で、彼は?」

「いいですから、ほら行きましょう」


 そう言ってクインはユークリッドを引っ張ってそのまま連れて行った。

 これが、クリスとユークリッドの出会いだった。


 そして、その日の夜。


「失礼。クリスという使用人はあなたか?」


 公爵家の使用人ではない人からクリスは急に話しかけられた。

 声を掛けて来たのは、ユークリッドに仕える護衛だった。


「あ、はい。ぼ、僕です」

「殿下がお呼びだ。来い」

「わ、わかりました」


 働き始めたばかりのクリスには公爵家の使用人かそれ以外かはわからない。

 だから、とりあえず従う事にする。

 こうして呼ばれたクリスは、そのままユークリッドの部屋に連れていかれた。


「殿下、連れてきました」

「そうか、下がってくれ」

「し、しかし公爵家の使用人とはいえ、二人きりになるのは危険ではないでしょうか?」

「構わない。下がれ」

「かしこまりました」


 こうして、クリスはユークリッドと二人きりになった。


「はじめまして。私はユークリッド・ヴァルフィシュタインだ」

「ク、クリスと申します。ユークリッド様にお会いできて光栄でしゅ」


 おもわず噛むが、クリスはそのまま頭を下げた。


「さぁ、座って」

「は、はい」


 そう言って二つの紅茶が入ったティーカップおかれているがマルテーブルを挟んで対面で椅子に座ると、ユークリッドから話し始めた。


「君は、どうしてこの公爵家に来たの?」

「は、はい。ぼ、僕、お父さんもお母さんもいなくて。それで僕みたいな子がいる場所でずーっと暮らしてたんですけど、この家で働けーって言われたんです」

「へー。ところでさ、君ってちょっとクインに似てるね。それが公爵の目に留まった理由なの?」

「は、はい。公爵様にも似てるなってよく言われます」

「そうだね。中身はまるで違うけど」


 ユークリッドがそう言って笑うと、そのまま色々と雑談を始めた。

 クリスは最初こそ緊張した物の、ユークリッドが笑顔があまりに楽しそうで、彼もまたた楽しい時間を過ごした。


 そして、しばらくして……

 

 トントンとドアが叩かれた。


「殿下。いくら何でももうお休みになられないと。もう就寝時間を何時間を過ぎております」

「え?……そうか、楽しい時間はあっという間だな。じゃぁクリス、また話そう」

「あ、ありがとうございます。ヴァルフィシュタイン殿下」


 その言葉を聞いたユークリッドは、


「クリス。君との時間はとても楽しかった。だから、礼をしたい」

「そんな。勿体ないです」

「構わないさ。で、その礼と言うのはね……二人で話すときはユークリッドと呼んで欲しいんだ」

「え?」

「君とは友達になりたいんだ。身分とは関係ない友達に。だから、ユークリッドと呼んで欲しい」

「で、では……ユークリッド様、と」

「呼び捨てにして欲しいんだけど……まぁ、いいか」


 ユークリッドはちょっと残念そうに言うと、クリスの手を掴んで半ば無理やり握手した。


「これからもよろしく」

「は、はい……」


 ユークリッドはそう言って笑った。

 その笑顔は、とても美しく……つられてクリスも笑ってしまった。

 こうして、二人の初めての二人っきりの時間は終わった。


 クリスがユークリッドの部屋を去った後。


「クリス、か」


 ユークリッドは先程までの楽しい時間を思い出して微笑んだ。

 そして……


「さーて。彼を公爵家にいる間の世話人にしてくれって公爵に伝えないとな」


 ユークリッドは笑いながらそう呟いた。

 なんだか彼が気に入ったのだ。

 そして、クリスが飲んだティーカップ……まだ、半分以上残っている……をじっと見つめた。


 つまらなかった日々が、輝きそうな気がした。


 こうしてクリスはユークリッドが公爵家に来ている間は彼の世話をする事になった。

 とは言っても、基本的にユークリッドにつき従っているだけだが。

このオマケの過去話は、気が向いた時のみ投稿します。

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