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03.任務:クイン・フィーリア公爵令嬢として、王太子と同棲せよ

 そんな彼がクイン・フィーリア公爵令嬢に代わって学校に通う事になった、つまり一時的でなく長期にわたり影武者になってしまったのだ。


 時を遡る事、数十日前。


「クリス。お前にやって欲しい事がある」

「なんでしょうか?ご主人様」


 クリスは主である公爵に呼ばれた。


「お前には娘……クインの影武者として生活してもらいたい」

「あの……それは今までのように一時的ではなく、クイン様として生活しろ、という事でしょうか?」

「そうだ。まぁ、暮らすのはここではなくヴァルフィシュタイン殿下が用意した屋敷だがな」

「ヴァルフィシュタイン殿下と言いますと、ユークリッド・ヴァルフィシュタイン様の事ですよね。クイン様の婚約者の」

「そうだ。クインが殿下と一緒に暮らすことになってな」


 この言葉を聞いて、クリスは自分が長期間の代役をする理由の検討が着いた。


「お前も知っての通りクインは何も出来ない。だから、お前が娘の代わりに殿下と生活し、学校に通ってもらう」

「かしこまりました。ですが、大丈夫でしょうか?注意はしますが、もしばれれば……」

「なぁに、お前は殿下に好かれているから見逃してくれるだろうさ」


(本当に大丈夫なのだろうか)


 クリスがそう思うのも無理はない。

 この国含む全ての国では、宗教により同性愛(同性婚含む)は禁止されており、発覚した場合は両者共に死刑である。


 よって、このままユークリッドとクリスが結婚すれば両者共に殺される。

 だが、今更偽物でしたと言える訳もなく、本物がクリスと同じ事をできるはずもない。

 このまま現状維持を貫き通すしかないのだ。


 クリスが身を隠してクインが亡くなった事にすれば、という考えもある。

 だが、それではせっかくクリスが築いた(今後築くであろう)名誉名声が無くなってしまう。

 公爵家としては、それは惜しい。


 さて、こうしてクインとして学校に通う事になったクリスだが、寮暮らしをする事になっている。

 それも、ユークリッドたっての希望により、新しく二人用に建てられた寮(と言うより、むしろ新居……いや、愛の巣が正しいのかもしれない)に住むことになった。


 この新居、二人で使うベッドルームや、二人で入れるバスルーム等、様々な最新設備を設置している。

 無論、プライベートルームもあるが、ほとんど共用の物になっている。


 ちなみに、使用人はごく一部を除いて隣接する使用人寮が住まいだ。

 また、使用人は一人を除き王家から派遣された人間である。

 その一人と言うのはクインの世話をするために公爵家から派遣された人間だ。

 もちろん、クインがクリスだという事も知っている。

 それゆえにこの使用人が選ばれたわけだが。


 そして、まだ結婚すらしていない二人がまるで夫婦のように同棲をしても周囲に許される理由は、彼らが既に諸外国に夫婦になるものと認知されて、さらに内政外交両方で十分な結果を出しているからだ。

 もちろん、結婚前に肉体関係を持つ事も積極的に進められはしないが許されている。


 ちなみに、正式な結婚前の妊娠は、貴族や王族の間ではままある事だったりする。

 何せ、貴族にとって大事な仕事の一つである跡継ぎが早く出来るから、それほど問題にはされない。

 もちろん、手放しで褒められた事でもないが。

 せいぜい、順番守りなさい、と軽く怒られるくらいだ。


 そんな理由もあり、二人は寮で同棲することになった。


「い、いけませんユークリッド様。まずは明かりを消してください。それに、こう毎日ではさすがに疲れてしまいます」

「そうだったな。明かりは必ず消す約束だったな。だが、毎日するのは許してくれ。君を抱く度にいつも新しい発見があって我慢できないんだ」


 そう、ユークリッドとクリスはこの寮に住み始めてから毎日のように情事をしている。

 今だって、クリスが本を読んでいたところユークリッドがいきなり後ろから抱きしめてきたのだ。

 思わずクインが振り向くと、ユークリッドが彼に口づけしてきたのだ。


 クリスの口内にユークリッドの舌が入り込み、そのまま濃厚な口づけを交わしてきたのだから。


「と、とにかく、するのでしたらベッドでしてください」

「仕方ないな」


 こうして、二人は今日も熱い夜を過ごすのだった。

作者注:男性と女性(と相手をだましている男性)が肉体関係を持って正体がばれないなんておかしい、と思う方もいらっしゃると思いますが、実話としてある国の男性スパイが女性と偽って外国の男性高官と接触。結婚したという事件があったそうです。

当然体の関係も持ったそうな。ばれない物なんですね。


この話はここで一旦一区切りです。

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