02.クイン・フィーリア公爵令嬢の影武者、クリス(♂)
クイン・フィーリア公爵令嬢の影武者、クリス(男)。
年齢は本物のクインより年下。
彼には外見に特徴があった。
彼の外見は、本物のクインと瓜二つなのだ。
違うのは目と髪の色だけで、後は本当にそっくり。
そんな事から公爵家の目にとまり、公爵家の使用人として雇われたのだ。
そして、現在では使用人をやりつつクイン公爵令嬢の影武者をしている。
ちなみに、髪と目は黒色なのだが、目の色は特別な目薬で変え、髪の色は特別な液体をつけて調節している。
また、いつでもクインの影武者が出来るように、髪は伸ばしてクリスとしている時はポニーテールにしていた。
そんな事情から、彼は雇われていた事は使用人としての最低限の教育を受けていたが、ここ数年は公爵令嬢としての訓練や勉強もしている。
それだけに留まらず、次期王妃としての教育までも学ばされる始末だ。
なぜ、わざわざ影武者を立てる必要があるのか?
それは、本物のクインの性格に合った。
なにせ、クインは勉強が嫌いでわがままな女性だ。
公爵令嬢としての勉強はもちろん、貴族としての初歩中の初歩の訓練すら嫌がり、カーテシーすらろくに出来ないような女性なのだ。
というか、そもそもやりたくないと駄々をこねる。
クインを溺愛する公爵家両親はそんな彼女を許してきた。
だが、クインも公爵家令嬢として、お茶会などに出なければならない。
そこで礼儀作法がなっていなければ、当然公爵家の恥となる。
そして、家柄だけで王太子との婚約が決まったものの、次期王妃としての教育なんか出来るはずもなく。
そこで、クリスの出番だ。
公爵家の命により、クリスは公爵令嬢としての全てを学ばされた。
しかも、クインが王太子の婚約者としての勉強を開始した現在では王室での勉強や外部の家庭教師による訓練まで受けている。
もちろんクイン公爵令嬢として、だ。
こうして、お茶会を始めとした外部の目がある集まりには、クリスがクイン公爵令嬢として出る事になった。
当たり前だが、これによりクインはより他者との能力が開いてしまう。
それにより、更に勉強が嫌いになるという悪循環。
今では表舞台に出る際は全てクリスが影武者を務めている。
さらに、クリスは真面目に仕事に取り組んだ為、クイン公爵令嬢は優秀な女性として、自国のみならず他国にまでその名を知られるようになっていった。
ちなみに、こうしたクリスの行動は公爵家も承認しており、我が家の地位が上がると喜んでいる。
しかし、こうなるともはや本人と偽物の能力が開きすぎ、似ているのは外見のみ。
学も無ければマナーもなっていない本物と、優れた頭脳を持ちマナーも完璧な偽物というおかしな状態になってしまった。
かくして、本物は公爵家の隠し別荘で悠々自適に暮らし、偽物はクインとして公爵家の名声を高めているのが現状である。
ちなみに、クインは最初こそユークリッドとの婚約に大喜びだったが、勉強するくらいならしたくない、と言って会う事すらめんどくさがっているのだった。