01.王太子ユークリッド・ヴァルフィシュタインと、クイン・フィーリア公爵令嬢
「ユークリッド様。お待たせして申し訳ありませんでした」
「気にすることはない。君を待っているのも楽しみの一つだからね」
ここは、ヴァルフィシュタイン王国の王都にある、フィーリア公爵家の屋敷。
この国の第一王子であり、王太子でもあるユークリッド・ヴァルフィシュタインは、自身の婚約者であるクイン・フィーリア公爵令嬢を訪ねて来たのだ。
ユークリッド・ヴァルフィシュタインは、美しい金髪とルビーのような赤い瞳を持ち、さらには高身長という、全世界の女性憧れの美少年だ。
その美しき容姿もさることながら、文武両道と言う優れた能力をもち、しかもそれを鼻にかけず努力を続けると言う立派な青年である。
一方でその婚約者のクイン・フィーリアもまた、非凡な女性である。
胸は薄く、背は同年代女子よりやや低い物の、腰まで届く美しい銀髪に碧眼を持つ美女である。
また、王太子同様文武どちらにも優れている。
そして、王太子も公爵令嬢も現在お互いに同い年。
二人の年齢的には、通常なら外交の場に主立って立つことは少ない。
にもかかわらず、既に王太子およびその婚約者として何度も外交の場に立ち、優れた結果を残している。
内政に関しても同様で、二人で考えた政策がいくつか実施され、既に高い評価を得ている。
二人がいればこの国の未来は安泰だ、と国民の期待も大きい。
そんな二人は、王国内にある学校に通うための準備中であるが、今日は息抜きの為、公爵家で二人っきりのお茶会をする事になったのだ。
本来なら王宮内でしてもいいのだが、久しぶりにクインに会いたいと言うユークリッドの希望でこの屋敷になったのだ。
「そう言えば、いつも私の世話をしてくれるクリスはどこに行ったんだい?」
「彼ですか……彼は先日事故死しまして。家族もいないのでこちらで簡単な葬式を行いました」
「そうか。まぁいい。今後は僕の部下に手伝ってもらうから心配しないでいいよ」
クリスはフィーリア公爵家に勤めている使用人だ。
彼はクインとユークリッドの婚約が決まり、初めてユークリッドが公爵家に来た頃に勤め始めた。
ユークリッドはそんなクリスの事を気に入り、公爵家にいる間はクリスがユークリッドの世話をする事になっていた。
だが、そんなクリスがいなくなったと聞いてもユークリッドはどうでもいいと言った感じだった。
そんな態度に、クインは一瞬眉をひそめた。
その後も、他愛のない話をしながら、二人のお茶会は何事もなく進んでいく。
「そろそろ時間だな。楽しい時間はあっという間だ」
「そうですね。残念です」
そうして、ユークリッドは帰っていった。
それからしばらくして。
「……ふむ。どうやらばれなかったようだな」
「はい。ご主人様」
公爵家当主の部屋。
クインは、当主と一対一で話している。
「しかし、よくばれなかったものだな」
「既にクイン様として何度も会っております。ばれる可能性は極めて低いです」
「確かにな。まぁ、今後はクインが王太子に会う事はない。お前がクインとして会うのだ。今まで会うのは仕事の時だけだったが、今後は寮で一緒に暮らすことになる。分かっていると思うが、絶対にばれるな」
「かしこまりました。ご主人様」
そう、先程までユークリッドと会っていた彼女は、実は偽物なのだ。
今まで、クイン・フィーリアとして会っていた者の名前は、クリス。
先程ユークリッドの話題に出ていた使用人クリスである。
そして、クリスの性別は男である。
久々の長編。
どこまで行けるか分かりませんが、頑張ります。
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やっぱりそう言うのって、作者のやる気に直結しますので。
この小説ってムーンライトノベルズの方がいいですかね?