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再生のプロローグ  作者: 出落ちの人
憂と剣編2
32/34

第32話 暇な2人

「暇だね」


「ま、まぁ…何もないし、僕たちは…」


 僕がそう言うと目の前の椅子に座っている盾石(たていし)(ゆう)は背もたれに大きく寄りかかって大きくため息をついた


 ここはOWA日本支部の食堂である。僕、空閑(くが)形真(けいま)と優は2人で食堂のいつものテーブルの席に腰掛けていた


 いつもはここに不破(ふわ)形司(けいじ)、通称形兄(けいあに)だったりがいたりするのだが、今日は珍しくいつものメンバー、というよりその中の大人組が全員任務だったりでいなかったりしている


 なので僕と優はすることもないので暇をつぶす目的で適当にここにいる。優は本当に何もしていないが、僕は寮の部屋から持ってきた適当なメモ用紙一枚を使い、僕の能力である「変形(へんけい)」についてどんなことができるか自分なりに調べるために机に向かっていた


 がしかし、僕如きの脳みそじゃ何をどう調べればいいかもわからず、今まで僕がやったことがあることを振り返って再現してみることしかできなかった


 そうやって適当に時間をつぶしていると、優が口を開いた


「将g────」


「ルール分からないし、無理かな」


「ですよね~」


 優はそうやって机にうなだれた


 優は最近よく将棋をしている。どうやら、形兄に一度負けて悔しいので勝てるようになるまで何度も何度もやり続けるなどと意気込んでいる、と寮での優の隣人及び夜な夜なの優の不運な遊び相手である志田(しだ)優里(ゆうり)さんが言っていた


「そういや形ってさ、何か好きなのってあったっけ?昔形が好きだとか言ってたカードゲームとかはさ、何かサ終してて形が結構落胆してたイメージあったし」


「いや、今は特には……前話したあの漫画とかかな」


「あ~、あれね。そういえば形の性癖にぶっ刺さってそうなキャラいたしな~」


「え、えぇ…?何考えながら読んだの」


「はは、嘘嘘」


 優はそう小さく笑うと何かを思い出したようで、「そういえば」と一言おいて話し出した


「その漫画、今日最新刊出るとかじゃなかったっけ?確か今やってる何かの大きな章のクライマックスだとか何とか言ってたような……」


「買う、それは買わなきゃいけない」


 僕はそう言って勢いよく立ち上がった。今日発売される単行本は僕が待ちに待っていた内容のものなので、多分読みたくてうずうずして顔が変になっていると思う


「暇だし、私も行くか」


 優も立ち上がって僕に続いた


 こんな時みたいに私的目的でOWAからの外出をする場合、それを報告する用のアルタがいるので、僕らは報告してから買いに出た


──────────────────


「買えた……」


 両手でしっかりと手にその薄めの単行本を握りながら僕はそうつぶやく。そうして日陰の壁に寄りかかり地面に腰掛けた


 僕が適当に単行本の表紙を眺めていると、コンビニの自動ドアが空いた時になる音が耳に入った。左を向くと角から優がある程度膨らんだレジ袋を持って来た


「後でそれ読ませてよ」


 優はそう言って僕の隣に腰掛け、レジ袋の中からモナカのアイスを取り出して開けた。僕の持っている単行本の表紙を横目で覗きながら、優は大きく口を開けてそのモナカをおいしそうに頬張った


「あれ?優ってこれ読んだことあるんだ」


「いやいや、形がその漫画好きだって言ってたから1回通しで読んでみただけだって。1回読んだら最後まで読むのは当たり前でしょ?」


「そうなのかなぁ…?」


 僕はそう言うと地面に単行本をそっと置いて、体育座りをしながら斜上を見上げた


 空は青い。雲はあるがいつもより速そうな速度で目の前を通り過ぎて視界から消えていった


 隣で優の「ふぅー、食べた食べた」という独り言が聞こえた。僕が何も考えずに空を眺めている最中に食べ終わったようだ


 隣を見ると、優も僕と同じような体勢になって空を見上げていた。僕が空を再び見上げると、優が話しだした


「そういえば、形と2人っきりって久しぶりだね」


「そういえばそうだね…」


 昔から、僕と優はよく2人で休日に色々と遊んできた仲だ。最近、というよりOWAに入ることになってから、そこに形兄が入ってきて3人になった


 それから2人で何かをするなんて、カラスの一件しかなかった。ただその時も実質的には2人とは言えなかったと思う


「形はこの後どこか行きたいとことかってあるの?」


「いや特には……今回はこの本買いたくて出てきただけだから…」


「へ〜…じゃあさ!私行きたいところあるからついてきてくれない?」


 優は突如立ち上がってそう言った。僕はスマホの通知履歴を一瞬確認する。しかし特に新規の通知は来ていないようだった


「まぁ…良いよ。どこ行くの?」


「まあまあそう急かさずに、行けば分かるから、行けば」


 優はそう言うと身を翻して、結構ルンルンな足取りで歩いていった。僕は色々と嫌な予感がしながらも、そんな優の背中を見ながらついていった


 そうして僕がついていくと、急に電車に乗ることになった。そうして電車に揺られること合計2時間……


 僕と優はとある映画館の目の前に立っていた。どうやらここが優の行きたいところらしい


 しかし……僕は横目で優を見ながら声を掛ける。優は苦笑いをしている


「僕人生で初めてだよ。電車の降りミスなんて」


「は、はは…まぁ、さ。形ならこうなること分かると思うじゃん?」


「まぁ、ある程度は察せそうだけど……このレベルだってのは知らないって」


「はは……本当にすみませんでした!」


 優が結構な大声を出すので、周りの歩いている人達が一斉にこっちを向いた


 僕はこういうのは超恥ずかしいので、優の腕をガッチリ掴んで一旦その場から離れた


 実は目的地は2時間も電車に揺られて行くようなところではない。本来は45分くらい揺られれば着くところだった


 しかし、優は色々と公共施設音痴であること、僕は目的地を知らなかったのも相まって2回降りる駅を間違えてしまい、無駄に2時間も経ってしまった


「まっ、とりあえず入ろ?」


 そうして僕らは最近話題になっている映画を見た。といっても公開から結構経っているので人はあまりいなかった


 そうして見終わって映画館から出ると、適当に誰もいなさそうな公園を見つけ、そこのベンチに座っていた。近くの自動販売機で買った冷たいお茶を飲みながら、2人でボーっと空を眺めていた


 優はお茶の半分くらいを勢いよく飲み干すと、一息ついて口を開いた


「いや~…こういうときに煙草とか吸えれば色々と良さそうなんだけどな~」


 優は煙草を吸うような身振りをする


「そりゃ、僕たちまだ未成年だし。まず煙草なんて基本的に体に悪いでしょ」


「まぁそうなんだけどさぁ……要害さん、なんか凄い雰囲気出てたじゃん?臭かったけど」


「じゃあダメじゃん……」


 僕がそう言うと、その後に優からの返答が帰ってくることはなかった。少しして僕が横目で優を見てみると、優は少しだけお茶を飲んでいた。お茶の中身はもうすでにほとんど入っていない


「形ってさ、こうやって日中に適当にブラブラほっつき歩いてさ、いろんな楽しいことをするって、昔やったことあるの?」


「え、まぁ…あるっちゃぁ……」


「めっちゃ良いじゃん!それ」


 優は瞬間に親指を立てた左手を僕に向けた。僕は後悔した


「あ、えっと…」


「私はさ、遊ぶときは絶対に家の敷地内だったからさ。こうやって色々と出かけたりしたことないんだよね」


 優はそう言うとスッと立ち上がり、バスケでシュートをする感じで空のペットボトルを投げた


 ペットボトルは綺麗な弧を描き、そのままゴミ箱に吸い込まれていった。優は大きくガッツポーズをして再び座った


「こうして色々出かけるの、初めてではないんだけど、やっぱり毎回新鮮な気持ちになれて楽しいなって思ったんだよね……」


 そうして再びどちらも何も喋らず、無言の時間が数分流れていった。僕は会話がそれ以上膨らむことがないと思い、帰ろうと促すために口を開いた


「まぁ、とりあえず帰ろう。元々の目的はその本だけだったんだし────」


「ねぇ形。1つ冗談言っても良い?」


 優は僕の台詞を遮るようにそう言った。僕は遮られたのに少し驚き、首を動かして優の横顔を見る。横顔でも優は浮かない顔をしているのが分かった


「…良いよ」


 僕がそう返答すると優は勢いをつけてベンチから立ち上がると、後ろに手を組んで一歩一歩と歩いて行った。そうするとすぐに僕の方に振り返って口を開いた


「私ね、」


 その瞬間、優の背後からゴロゴロゴロゴロと空気を震わせるような雷鳴の音が聞こえた


 僕と優はそれに驚いて身を震わせた。優は目をまん丸にしながら即座に方向を変えて遠くの空を見た。僕もそれにつられて遠くの空を見る


 遠くの空には、さっきまで見えなかった大きな積乱雲が禍々しく浮いていた。遠くからでも雲の中を稲妻がいくつも走っているのがよく見えた


「あの積乱雲、さっきまであったっけか?」


「さぁ…?僕はあっちの奥の方まで見てなかったし……」


「そうなんだ。いや、だとしても急過ぎない…?」


 その時、僕の懐にあったスマホが震えた。僕がそれに気付いてすぐに取り出すと、青憂団からの任務のメールが来ていた


 優は僕がスマホを取り出した瞬間に僕に近づき、すでに画面を覗き込んでいた。任務の内容はこうだった


 今僕らの目の前にある積乱雲は約5分前に予兆もなく突如として出現したものである。今からその積乱雲下の地域がどうなっているかの調査と、必要に応じて救助活動を行ってもらいたい、というものだった


 しかも現場ではどうやら虎のようなものが確認されたらしい。虎……ATが以前逃がしてしまったとある4匹のうちの一匹に、それは含まれている


 以前僕らが相対したカラスは結構厄介な能力を持っていた。とするとその虎も何かしらの能力を持っている、目の前に突如として出現した積乱雲がその能力に関係している可能性もある


「やっぱり急に出来たものなんだ」


「そうっぽいね」


「この文章的にはOWAに戻って必要なものとか持ってくる暇なさそうだし、物関係は形頼りか……よろしく形!」


「まじか…」


 優はそういう僕の返答を聞くより先に、駆け足で積乱雲の浮いている所へ向かって駆けて行った。僕はそれを見て適当な小石を一個拾って変形した


 別にバイクとかにしても良かったのだが、仕組みがよく分からないし、そもそも免許なんてものは未成年なので持ち合わせていないので、ロードバイクにした


 僕はその変形で作ったロードバイクに乗って優を追ってその場所へ向かった


──────────────────


「形、もっと速く漕いで!」


「いやだったら優が漕いでよ……体力的には優の方が上でしょ」


「あぁ、そっか。じゃあ私が……」


 そう言って優は僕の背後で何やら悩みだした


 僕がロードバイクで快適に移動しているのを見て、さっき優は僕に対して一緒に乗せてくれ、とせがんできた。たとえ優の足が結構速かったとしても、流石にロードバイクの速度には勝てないようだった


 僕は渋々ロードバイクを変形し、後ろにママチャリによくあるような台を作って優をそこに座らせた。そうして現在のような、優が僕の両肩を掴んで相乗りしている状況になっていた


 後ろの優は少し考えた後、何やら苦笑いをし始めた


「や、やっぱやめとく~……ってことで形よろしく…」


 後ろにいるのでどんな顔をしているかは想像しかねるが、僕はこれ以上優に対して返答せずに、そのペダルを漕ぎ続けた


 そうやって漕ぎ続けていると、徐々に雨音が耳に入ってくるようになった。確実に、あの積乱雲の浮かぶ付近に近づいてる


「形!あそこあそこ!」


 後ろから優の人差し指が突き出され、僕はその指差された方をよく見る。その先は周囲と比べて暗く、空間がぼやけていた。おそらく、雨が降っている


「雲、こんな大きかったっけ…?」


 上の方を見てみた。暗くなっている所の上らへんには雲がかかっていた。とても大きな積乱雲が、まるで侵入してくることを拒むようにそびえていた


 後ろの優の言う通り、さっき遠くからこの積乱雲を見ていた時にはよく夏の絵とかで見るような大きさの積乱雲に見えた。しかし近づいて下から見上げてみるとその積乱雲は、遠近法なのか、ただただ大きくなっただけなのか、とても大きく見えた


 そうして、冷たい雫が一粒一粒と額に当たり始めた。僕はそれに気付くと、すぐにロードバイクを漕ぐ足を止めて、手のひらサイズの小石に変形させた。今度は変形を継続させる


 そうして適当に屋根のあるところに移動し、雨宿りをして様子を見ていた


「いや〜、雲が特にかかってない所でも結構降ってるのか。カッパとかでも買ってくるべきだったかな……あっ、形カッパ作れない?」


「いやカッパなんか作ったことなんかないよ。傘とかも、防水機能がまだよく理解できてないから」


 優は髪を両手でぐちゃぐちゃにし始めた


「噓でしょ〜!?あの暴風雨の中、この夏服の軽装で行けって?絶対風邪ひいてジエンドじゃん」


 優は大げさに頭を抱えてその場にしゃがみこんだ。僕はその様子に少し呆れながら優を無視し、雨宿りしているこの場所から少し身を乗り出して周囲を見た


 すでに雨は強まっており、結構横殴りになっていた。少し身を乗り出しただけで全身に雨が当たってしまい、僕は周囲を特に見ることも出来ずに引いた。そして次は強風が全身に吹き付けてきた


 この雨と風の状況下。もしこれ以上強くなるとしたら、確実に災害級の被害が出るに違いない。そんなことは頭の悪い僕でもあらかた予想がつく。優が後ろから近づいてきた


「ねぇ……この積乱雲ってどこまで広がってると思う…?」


「結構広がってるんじゃない?普通に街一体の上に浮かんだりしてるんじゃないかな」


「街一体…まぁ雲って言ったらそんなもんか」


 優とそうやって話している最中でも、雲は移動し続ける。そうして僕らはすでに暴風雨が絶えず止まない積乱雲の下に入ってしまっていた


 雨宿りしていると思っていても、雨は横殴り過ぎて全身に叩きつけてくる。風も横殴りな雨と同時に全身に当たり、体温を少しずつ奪ってくる感覚がする


 たとえただただ調査や最低限の救助をするだけであれど、この状況で行えば確実に体温が奪われたことによる体の限界が色々な事よりも先に来る。だが、とりあえずやるしかない


 正直ここで行動に移すことを渋り、この場に留まっていると無駄に体温が奪われる。であれば行動に移して、最低限のことをしてから体温を奪ってもらった方が良い


 良い……のか?


「何変なこと考えてんの形、急ごう。助けが必要な人がいるかもしれないんでしょ?この結構広い範囲、全員は無理かもしれないけど最低限は助けよう」


「めっちゃどこぞの主人公みたいなこというじゃん……」


「え、そう?まぁ、そうならそうなのかもね」


 優は小さく笑う。僕はそんな優のことを横目で見ながら、変形を継続させていた右手の中に入っている小石を、さっき乗ったようなロードバイクと同じ形にして生成した


「はい、これ。優は僕よりも体力あるし、これに乗って遠くの方を見てきてほしい。僕はここ付近から少し離れてるところを見るから。よろしく」


「ありがと、じゃお先に!」


 優はロードバイクに飛び乗ってこの暴風雨の中、ロードバイクを勢いよく走らせて行った。僕はその背中を見送ると、そのまま少し雨宿りを続けたまま考え事をしていた


「なんでこんなに任務が来るのが早かったんだろう…」


 僕らはいつこの積乱雲が出現したのかは知らない。ただ、気付いた瞬間に出現していて、その瞬間に青憂団からの任務通知的なものが来た


 OWAの任務というものは、元々警察が捜査等を行っていた事件などが、警察側によって手に負えないだったり、能力者が事案に関連していることが確認された際にOWAに降り、所属している隊員の誰かに任務として通知が行く、というシステムになっている


 しかし、今回は警察を通す時間をなしにOWAの任務となったくらいの早さだった。現場で例の虎が確認されたので当然かもしれないが、現場の状況の確認や救助となれば警察とかでも最低限は出来るのではないか……


 というよりまずただ積乱雲が突如出現しただけでOWAが出るものなのか


 どう考えても少し違和感が残る。僕がそう考えていると、再び雷の音がした。驚いて空を見上げると稲妻が厚い雲の中を走っているのが見えた


「またか…」


 この天気だといつ建物に落雷してもおかしくないかもしれない。とりあえず救助が必要な人がいるかどうかを確認するために、僕は風邪を覚悟で雨宿りを止めてこの暴風雨の中を走り始めた


いやまあ、優の方が主人公っぽい性格なのは認めるけどさ……

おめぇだよ!鈍感なんだか、スマホを尻にぶっ刺して逆立ちしながら読んだのか、そこらへんはよくわからないけどさ、

急に尻にぶっ刺さったスマホの画面見た大腸菌でもお前が主人公って分かるわ!

勝手に主人公変えんな!お前の母親テングザルにしてやるぞ!

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