第22話 後悔
激突音が何度も何度も響く。音は止むことを知らず、あまり間隔を空けずに耳を襲ってくる。僕は、そんな状況でずっと殻にこもっている。そんなことを継続していても状況が変わるわけでもないし、逆に悪化しうるということを薄々感じ取っていた
僕、空閑形真は殻にこもり、今の状況の打開策をこの小さく硬い頭で考えていた
「打開策……」
打開策を探すにも、いくつか問題があった。まず根本的に今の任務の目的が分からないことがあげられる。この任務はOWAの中の組の1つである青憂団からの任務だ。青憂団は能力の研究だったりもやっているらしい
もし研究するために生かして捕らえるべきだという内容であれば、やり方が一層分からなくなる。かといって殺してもいいとして、そんなことを僕が出来るかと言えば、「無理」としか言いようがない。腐ってもカラスであれ命ある生き物だ。そんな尊い命を僕自身の手で終えさせてもよいのだろうか、といった罪悪感が襲ってしまう
「…まず外見てみないと、か」
そう言って僕は作っていた殻に小さな穴を空け、外の様子を少しだけ見てみる。そこには相も変わらず大きな鳥が目の前に居座っていた。他にはその周りにカラスが少しばかり居るくらい
「あとは────うわっ!?」
さらに他を見ようとすると、突如穴に向かってカラスが突撃してきた。間一髪で避けたので良かったものの、そのカラスのくちばしが穴を通して殻を貫き、くちばしが完全に入ってきていた。しかし運のいいことにくちばしが貫通するだけで、そのままそのカラスは身動きがとれないようになってしまっていた
「あれ、この状態なら捕まえれる…?」
目の前のカラスは突っ込んだくちばしで、殻に突っ込んだまま逆に身動きが取れなくなっていた。そのまま僕は、ずっと変形させていた殻をカラスに向かって変形させる。そしてカラスは変形していったものに全身を包まれ……鳥籠に入った状態で内側に落ちた。これだ
「ぶつかってきた瞬間にこれをやれば殺さずに全部捕まえれるんじゃ…?」
そう思った瞬間、良いところに殻にぶつかってきたカラスが居た。再び大きな衝突音が響く。とっさの出来事にその場の勢いで頭を動かし、殻を変形させる。すると新たに籠に入ったカラスが内側に落ちる
そしてさらにカラスが大量に突撃してきた音が聞こえた。と同時に殻を変形させて次々にカラスを籠に捕らえる。ついでに今のままでは中が狭いので、徐々に広げていく
「そういえばこの殻ってたしか、元々3つくらいの石ころだったような……」
言った通り、この殻は元々そこら辺にあった3つくらいの小さな石ころを拾って、壁なり何なりに変形してから、今の僕を中心に囲む大人が2、3人入れるくらいの大きさの殻になっている
改めてよくよく考えてみると、元々の物質の体積をゴリゴリ無視していることに気付いた。このOWAに始めて触れることとなったあの日、謎の男の人に誘われたあの日も河原の小石をショットガンとかに変えていた気がする。いや、そもそも物理学と能力学を混同して考えること自体が間違っている気もする。とりあえず、そんなしょうもないことについて考えるのはやめた
ぶつかってくるカラスを何度も何度も籠に捕らえ続け、少し経った。今回は何度も変形しなおしているわけでもないので、腕に痛みは一度も来ていない。けれど今までにないくらいの時間変形し続けているので、疲れてきていた。少し肩で息をしている。ちなみにカラスたちは流石に学んできたのか、ぶつかってくるカラスはなくなり、衝突音が耳を襲うこともなくなった
「今なら、外の様子を見れる…?」
そう思い、僕は殻を元の手のひらにあった石ころに変形させた。無防備にはなった、しかし直前に学んでおいたからなのか、運よく何もしてこなかった。その隙に周囲を再び観察する
たくさんの建物の屋上や屋根のようなところに何羽もカラスが、相も変わらず留まっていた。しかし僕が結構な数を籠に捕らえたので、大きいカラスが降り立つ前と比べて半分以上に減っていた
「にしてもたくさん減ってる気が……あれ、でかいカラスは────」
その瞬間、頭上に黒く大きな影が現れたのが分かった。それは中々に大きな音を立てて落ちてきている。考えるよりも先に僕は手の中のものを変形させ、上方に対する簡易的な防御壁を生成する
そうしてそれは落ちてきた。想定よりも重く強く、さすがに簡易的な防御壁では守り切れず、ドガァンと大きな音を立てて簡単に破壊された。その衝撃で僕の体は後方へ吹っ飛ばされ、何度か回転して地面に突っ伏す。とりあえず急いで立ち上がり前を見る
ガァァッ!ガァァッ!と何度かの大きな鳴き声が、まるで鼓膜を破るかの勢いで耳を襲う。前を見ようと顔を上げたが、そのあまりにも大きな気迫で僕は一歩、二歩と後退してしまう。目の前には大きなカラスがいる。それも優に3mを超えるであろうその大きな翼を大きく広げ、まるで威嚇しているような目つきで僕を見ている
「威嚇ってことは、ここを縄張りだと───いやちょ待っ」
何かを言う暇も考える暇も与えてもらえず、目の前の大きなカラスはその大きな翼を使って突進してきた。その大きな図体からは想像もできない速さ、僕は直感で防御は意味をなさないことを悟った。だが何とかしないとなので、移動して避けるために手の中のものを変形しようと一息吐く。その瞬間、
「痛っ、今か…」
そのまま何も身動きを取れずにそれに激突し、後方にぶっ飛ばされる。運悪く今この瞬間に能力の反動が来てしまった
今回は直撃で、100mくらい後ろにあったであろう街灯の柱に背中を強打した。結構どころではない、今にも気絶してしまいそうなほど意識が朦朧としている。立ち上がろうにも、手足に力も入らない
「あ゛ぁ゛……っ!」
辛うじて目の前におちていた小石を掴む。しかし握り続ける力もなく掌からこぼれ落ちる。そこでふと頭をよぎった。もし、普通の大きさのカラスに突撃されていればどうなっていたか
(今まで受けてきたのを考えると、胴体貫通もある……のか?)
考えておいてゾッとしてしまう。逆にこうして気絶しかけているほうが良かったかもしれないとも思ってしまった。背後でガラガラと、瓦礫のようなものが不気味に動く音が聞こえる。このままでは瓦礫につぶされてやばいかもしれない
全身が悲鳴、特に背中が悲鳴をあげながらも、残る力を振り絞って立ち上がる。上手く目も開けられない。全身が震え、立っているだけでも全身全霊を振り絞らなければならない
「はぁ…はぁ……何か…できること、うっ!」
一歩一歩と目の前の大きなカラスへ近づく。しかし流石に全身の痛みで中々進むことができない。次の瞬間、一歩踏み出したところで倒れかける。全身から力が抜ける、意識が遠のく────
「ーーたーれーんだ!にーるんーよっ!」
急に何かに腕を引っ張られ、そのまま身体を流れに任せ、どこかに連れていかれるのを感じる。あまりにも急だったもので、かろうじて意識が飛ばずに済んだ。そのまま少し暗いところに連れていかれたようだ
「あんた、目ぇ開けれるか。まあ目がつぶれてるわけでもないしな……」
「だ、誰…?」
目の前の誰かに僕はそう問う。普通は「助けてくれてありがとう」なのだろうが、そんな頭が回るわけでもない。とりあえずゆっくりと目を開けることができた。目の前にいるのは大体40代くらいのおじさん、的な人だった。周りには老若男女、様々な人が5、6人くらい
「誰だなんて今はなんでもいい。とりあえずあんたが生きてることだけが幸いだ……誰か、救急箱とか何か!」
その声の後、周りの人たちは次々と動き出す。目だけを動かしてしっかりと周囲を見てみると、どこかの建物の中だった。少しくらいのは、照明を全て消しているからだった
「…ここは?」
「ん?あぁ、ここはあんたがさっき居たとこの近くの建物。あんた、あのクソ⦅カラス⦆共とたった1人で戦ってくれていたんだろう?あとはしっかり英気を養ってくれ。目の前で命の灯が消えたともありゃあ、これからどんな面して生きてけってんだ」
カラスが壁か何かに何度も何度も突撃する音が聞こえる。多分、この建物にぶつかってきているのだろう。周りにいる1人の女性のような人の声が聞こえる
「壁にヒビ入ってきてる!逃げなきゃやばいよ!」
「くそ、うだうだしている暇もくれない。包帯を巻く時間もないか……あんたには酷だが、移動するぞ!」
そうして僕を抱えるための手が目の前の人から伸びた。しかし僕はその手を力強く振り払った
目の前の人は、当たり前だが驚いた顔で僕を見る。カラスの衝突音が何度も何度も響いていた────
──────────────────
パチン、と頬を強く叩いた音が家中に響く
「痛い!」
「子どもがそんな弱音を吐くな!叩かれたくなければいい子にしなさい!」
子ども、大体3歳程度の少女は泣きわめく。それを見た40代ほどの女性はさらに少女の頬を叩く。先ほどよりも強く、大きく振りかぶって
何故少女が叩かれているのか、女性は叩いているのか、その理由は定かではない。しかし、ここ1年間ほどの、毎日毎日でこのようなことが行われているのは事実であった
続けて叩く。少女は倒れて、少し頭を打つ
「ごめんなさい、ごめんな…ヒクッ…ごめんなさい…」
その後も、何度かその家に頬を叩く音が響いた────────
盾石優は呆然と目の前の光景を見ながら、昔のことを思い出していた。目の前の建物の入り口付近には、大きな砂埃が立っており、その中から人が逃げるように中から出てくる。それを優は歪んだ顔で見つめながら、砂埃の中へと少しずつ歩を進める
ふと、砂埃の中から走り出てきた女性と優はぶつかる。優はその女性に少し目を向けてみるが、特にそれ以上目もくれることもなく再び歩き出す
「ちょ、何してるの!?そっちはカラスが────」
優は振り返らない。優は聞こえていないのか、それとも気にしてもいないのか。優は意志があるようでないような目をしながら進む。そして小さく独り言をつぶやく
「……私の能力は、結局私自身を守る力でしかない。こんなに経って、それと離れても、何も変わってない…?」
そう言って優は砂埃の中で足を止める。額に両手をゆっくりとあて、前髪をかきあげる。優は強い動悸を感じ、顔をうつむく。その目からは少量の涙が流れる
「なんで、なんで…?やっと誰かの力になれると思ったのに、いつまでもあの頃のままで……まだ、変われない?あいつの言う通り…?」
優がそう1人、誰にも届かない嘆きをしていた次の瞬間だった。砂埃の奥から、勢いよく優へ向かう黒い影があった。それは恐ろしい速度で近づいてきているが、優は下を向いているからか全く気付いていない。それはカラスだ。そしてぐんぐん優へ近づき────
突如、優とカラスの間に黒い人影が立ちはだかる。そうしてカラスはその人影に激突し、その人影の身体を大きく抉る。その人影は「ぐっ…」と一言発する。それに反応して優はその人影を見る
「け、形兄……!?何して」
「何珍しく物思いにふけっていやがる。死ぬぞ」
不破形司の左腹部には大きな抉られた跡が残っている。大きな穴だ。その穴からは大量に血が流れ出て、まるで滝のようになっている。下手したら、下手しなくても失血死するレベルである。優は涙腺が残っている顔をあげて形司を見る
形司はそんな状況であれど、指から肉塊を出そうとする。その様子を見て優は制止しようとする
「な、何して……そんな状態じゃあ何も出来ないよ!やめてよ!」
しかしその制止を無視し、形司は肉塊を出す。口から、腹から、血が吹き出る。内臓がぷらん、と穴から垂れている
優が絶望的なものを見ているかのような目をしながら形司を見つめている傍ら、形司は出した肉塊を引きちぎり、抉られて穴の開いたところに勢いよくぶつけた。優はその様子を見て色々な感情が入り混じった顔をする
「え、な、本当に何して…」
すると、肉塊が肌色に変色していくのを優は見た。そうしてそれは徐々に形司の身体にくっついていき、元の身体になった。傷1つない、とてもきれいな表面の身体だ。優は不思議そうにその様子を見る
「安心しろ、貧血になるだけだ。ゴフッ」
「え、大丈夫…?」
形司はもう一度大きな血を口から吐く。すると、すっきりしたように形司は大きな息を吐く。どうやら、今の一瞬で形司は全回復したようだ。形司は優の顔を見ることもなく、手から肉塊を出して周囲の砂埃を掃った
「お前が何を考えてるのかは知らない。ただ今は何かを考えている時間じゃないことは自覚しているはずだ。とりあえず今は、今だけを見ていろ」
「…ははっ、何それ、かっこつけてるつもりかなんか?」
優はゆっくりと立ち上がる。と同時に顔を袖で拭いている
「あ?何か変なこと言ったか?俺が」
「おーっと、ド天然きたー」
いつしか優の顔にはいつもの笑顔に似たものが戻っていた。形司はその様子を見ても、まるで分かり切っていたように何も言わない。そうして、2人で周囲を見据える。周囲には逃げている6人ほど、そしてカラスが10匹以上。いつかの轟音でさらに集まってきたのだろう。優は1つ、形司に質問を投げかける
「形は?」
「知らん」
「おけ、ちゃっちゃと片付けよう」
「本来の目的は忘れるなよ」
その声を合図として、優は勢いよく駆け出した。その手にはCG-v1を銃に変形させたものが力強く握られている。優は走りながら銃に弾丸、ゴム弾を可能な限り詰める。そして急停止して銃をしっかりと両手で支え、銃口をカラスの内の1匹に向ける。今度は外すために撃つのではない。当てるために撃つ。勢いよく引き金が引かれた
銃声が響く。しかしカラスは間一髪のところでゴム弾を避ける。その様子を見て優は少し舌打ちをする。しかし、避けたカラスの背後に赤黒いものが迫っているのを優は見た。そのままそれに口が現れ、カラスを静かに飲み込んだ。優はその物の元を見た
「ナイスアシスト、形兄」
「まだ来るぞ」
カラスは1匹がやられたことにより怒りが芽生えたのか、はたまた他の理由からか。特に注意も見せずに優らへ突撃する。そうして何匹ものカラスが1人突っ走っていった優に、全て突撃していく
優は冷静にカラスを見ながら避ける。時々引き金をひいてカラスの羽に当てて行動不能にする。しかしそんなことをしていると隙は生まれる。優が撃たなかったカラスの1匹が優の背中めがけて突撃する。しかし肉塊がそれを阻む。カラスが突っ込んだ肉塊は勢いよく伸び、そのまま反発。カラスをはるか遠くに吹き飛ばした
「本当に無策だな。だから俺に勝てないんだぞ?もう少し試行錯誤してやったほうが────」
「うるっさいなぁ!こっちも出来る限りやってんの!い、ち、お、う!」
形司は聞き耳を持つことはなく、そのまま肉塊で数匹のカラスを捕獲する。捕食の方が正しいかもしれない。形司は他の指から更なる肉塊を出し、縦横無尽に空中を駆け巡らせる。これによりカラスは不用意に優に対して突撃できるような空間ではなくなった
「よくわからない|空間⦅フィールド⦆になったけど、ナイスって言っていいのか、悪いのか……微妙だなぁ」
「…そうか」
(相変わらず口数が少ない……これじゃあ何が目的かもさっぱり分かんない…)
優がそう考えながら、カラスの方を観察する。するとすでに優の方を見ておらず、周囲の獲物を探すように全身を動かしていた。このまま優に目もくれず、今逃げている人たちに目が少しでも行ってしまえば……そのあとは想像に容易かった
優の身体は少し考えた後、バネのように急に動いた。左手には今の一瞬で出した少し小規模の盾が握られている
「どこ見てんの!?そっちには敵なんていないよ!」
優は張り巡らされた肉塊を足場に、何度も飛びながら空中に滞在しているカラスに急速に近づく。カラス達はその様子を予期していたかのように、その直後に四散した。優は標的が四散し、新たな標的が定まらなくなり、空中の細い肉塊の上で急停止した。少しバランスが崩れたが、すぐに持ち直した
「マジでもう私のこと興味ない…?形兄!この肉塊の空間って半径どんくらい?」
「大体半径20mくらいだが……カラスのスピードによってはもう抜け出している可能性も…まあやるだけやろう」
形司がそう言った直後、細く伸びた肉塊からさらに細く伸びて四散したカラス達に向かった。捕らえることはなくとも、進行方向を邪魔することはできていた。その様子を見て優は再び肉塊を足場にして近づく
「やっぱ腐っても肉塊は肉塊、なんかブニブニしてて気持ち悪いな……でもやっと|射程圏内⦅ぶん殴れるところ⦆に入った…」
さらに細くなった肉塊から高く飛び、優はポケットに一旦CG-v1をしまう。そうして両手で盾を頭上に高く構える。眼下には細い肉塊によって足止めされたカラスが1匹、
「仕留めるのは1匹、でも大きな一歩…っ!」
握った盾を強く構える。カラスはやっと気付いて優の方を向く
「一旦沈めぇっ!」
カラスの頭部に、勢いよく振りかざされた盾が激突した。そのまま、カラスは気絶し地面に勢いのまま沈んだ。大きな音が周囲に響く。カラスがその轟音に反応し、再び優に注目し釘付けになる。何匹かが、大きな鳴き声を上げて優に向かう
「忘れたか?あんたらは今何に包囲されてる?」
周囲の肉塊がうねる。瞬間、また新たな細い肉塊が肉塊から枝分かれする。そうして数々のカラスを肉塊が包み込み、鳴き声を消していった。2桁以上のカラスが一瞬で1桁になった。響くのは逃げ惑う人々の悲鳴、そして肉塊が蠢くネチャネチャとした気色の悪い音だけだった
「あとは、大体2、3匹ってところ?」
「そうだな。ただ、その全部がこの半径20mよりも外にいる。どこにいるかの正確な感知は出来ない。一応中に入ってきた瞬間に分かりはするが……」
優はその形司の言葉を聞きながら、肉塊を伝って地面に降りていた。次の瞬間、形司の目線が急に先ほどまで向いていた方向とは正反対の方向に動く。それにより肉塊は少し揺れ動き、優は体勢を崩す
「来たな…!1匹、網に…いや速い!」
形司の向く方向にはカラスが1匹、肉塊の空間の間を縫って急降下していた。その先には母子が2人。その流石の速さに、形司の肉塊は追いつけなかった。同時に優は完全にバランスを崩し、肉塊から落ちる
「うわぁ!?」
形司の心配もつかの間、カラスは母子に突撃する
しかしその瞬間、カラスは何かに阻まれた
「苦し紛れの突撃ぃ?どんまい、意味なさなかったね!」
優は頭から落ちていた。しかしその最中でも冷静に状況を判断し、すぐに盾を生成した直後、壁として大きい盾を投げたのだ。そうして盾は地面に突き刺さり、カラスの突撃を防ぐ盾となった
母子は驚き、悲鳴を少し上げはしたが、すぐに状況を理解したようで、形司に向かって何も言わず一礼だけしてさらに遠くへ逃げて行った。けがはしていないようだ
「ちょ、その盾私の!いや、やばい頭ーーっ!?」
そのまま優は頭部から地面に激突した。周囲に砂埃が舞う。形司は心配して、肉塊を維持しながらも軽く駆けながら優の落下地点に向かう
「生きてるか?首は…折れてそうだが」
砂埃が晴れ、優の姿が見える。落下地点にはごく小規模のクレーターができていた。優はその中心にいた。これといって優の体に外傷はなく、優は首元を軽くさすっているだけだった。一応優は10mくらいの上空より頭から落ちている
「痛ったい……肉塊とかで支えてほしかったんだけど。首ぃ…」
「首折れてたら今生きてないだろ」
「あ、そっか。じゃあいっか。とりあえず、最後の数匹を潰しに行きますか」
そう言って優は立ち上がる。形司は「もう必要ないか」と言い全ての肉塊を指に収納する。優はCG-v1をライフルに変形し、残りの飛んでいるカラスに銃口を向けた
くらえ!カラスッ!半径20m、肉塊の空間をーッ!




