第2話 謎の少年⋯?
「あんたら大丈夫か?」
少年のような身長の謎の男は僕、空閑形真と、隣に居る幼馴染の盾石優に声をかけた
「「こ、子供ぉ?」」
僕らの声が重なった。まぁ無理はない。さっきまでいた大きな人型のトカゲは視界から消え、代わりに小さな男が立っているのだ
「おい!初対面のやつに子供って言うのは失礼だろ!俺はれっきとした成人だ成人!」
自身を成人と名乗るその男は何やらキレていて沢山言葉を発しているようだがその言葉が全く耳に入ってこない。何故なら近くにはあのトカゲがまだいるかもしれないからだ
「き、君⋯今すぐ逃げたほうが⋯」
「は?見えてなかったのか?あのワニはもう動け──」
突如、ガラガラララと大きな音がなった。恐らくこの場の3人の全員が聞いたのだろう。一斉に音の方向を向いた
そして、僕の視界の動く瓦礫と砂埃が目に入った
その砂埃の中には大きな爬虫類の影があった
(あのトカゲだ。まだ動けるんだ!まずい、このままじゃ全員やられる!)
「あ?まだ動けたのか。しぶといやつは珍しいな。じゃあ終わらせてやるよ」
謎の男がそういうと砂埃の中の影の腕や足らしきものが破裂した、ように見えた
内側からというよりかは外側で爆弾が破裂したような爆ぜ方だった
その破裂は突如だったためか、僕と優は少し能力を発動してしまった
ドォォンと少し遅れて音が聞こえる。それと同時に砂埃の中から赤い液体が飛んできた。が、その液体が何なのか、それを考える暇はなかった
それはこっちに飛んできている
僕と優はそれにかかるまいとさっきから発動したままの能力を使って守ろうとした
しかし、その液体はかかることなく空中で止まった
まるで空中にドーム型のガラスがあるように
「おい、もう終わったぞ。大丈夫か・・・」
謎の男は僕たちに言葉をかけようとしたが、何があったのか言葉を詰まらせた
目をまんまるくして固まっているようだ
⋯それは僕たち2人も同じことかもしれない
その場の全員が固まっていると少しして謎の男が口を開いた
「お前、OWAに入らないか?」
⋯自分の耳を疑いたくなった
ニュースで報道されていた大きな人型のトカゲと遭遇して、そのトカゲを小さな謎の男が討伐(?)して、そしてその初対面の男にオーダブリューエー?というのに入らないかと言われた
これがたった今5分程度の間に起きていることなのか。流石にこれは急展開すぎないか。実は夢を見ているのではないか・・・
⋯が、僕はすぐ整理がついた。おそらく誘われているのは隣に居る幼馴染、盾石優なのだと。であればこれは現実だと考えれる
彼女の能力、「盾」は青白く半透明な盾を召喚するだけなのだが、その盾は恐ろしく硬い。さっき、トカゲによる攻撃をやすやすと受け止めていた。しかも盾にはヒビが1つもついていない
オーダブリューエー?という組織の概要もやすやす考えついた
予想ではあるが、アニメや漫画でよく見る悪と戦うような組織なんだろう。謎の男がトカゲを一瞬で討伐したということは
横目で彼女を見ると何かを考え込んでいた。おそらく返答を考えているのだろう。僕と同じ考えに至って
少し黙っていると謎の男がまた口を開いた
「あ~、で、どうなんだ?入るか入らな──」
「入る!でも1つ条件がある」
彼女が突如勢いよく返答したからか謎の男は驚いて少し仰け反った
「じょ、条件か」
「そ。その条件はね・・・」
僕は彼女に肩を掴まれ、勢いよく引き寄せられた
「こいつも一緒に入ること!それでいい?」
「え?!」
大きな声で驚いてしまった。僕が彼女に巻き込まれるとは全く思っていなかった
謎の男も想定していなかったのかまたまた口を開いて固まっている
「あ、あぁ⋯分かった。じゃぁこれ、持ってけ」
優は謎の男に紙を渡された。一緒にそれを覗き込むと⋯
『龍の目よ、龍の目よ、
輝きに満ちている目よ
いざ消えかかるその目への貢ぎ物を
今ここでソナタに捧げる
1021年3月、2022年12月、3037年9月』
・・・と、書かれていた
「・・・何、これ」
「成人のくせしてどんな趣味してるの?」
紙に書かれていた文章を読み終えると僕らは口々にそういった
「あんたら・・・っ、初対面のやつになんて言い草だよ、おい!」
また男はキレて何かを言っているが、少しして落ち着いたのか一息ついて、ある所を指さして言った
「それを・・・ここらへんだと、そうだな。あそこの能力博物館の受付にその紙を渡してみろ。そうすればあとは色々やってくれる。じゃあな」
「あの・・・あなたは何ていうの・・・あ、いや・・・言うんですか?」
立ち去ろうとする男に僕は恐る恐る聞いた。すると男は答えた
「いずれ分かるさ」
それだけいうと謎の男はトカゲと共に消え、この場には僕と優とトカゲの血だけが残された
「・・・どうする?優」
「行ってみるに一票。面白そうだし」
彼女はそう言いながらもう歩き出していた。僕はそれに続く。2人とも学校があることを忘れて⋯⋯