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再生のプロローグ  作者: 出落ちの人
儚き願い
13/31

第13話 普通(?)の知らせ

「さて、これからの質問全てにしっかりと答えてもらおう」


 形兄(けいにい)は壁にもたれかけられた若い人3人に向けて言い放つ。言葉を投げかけられた3人のうちの男の人2人はしかめっ面でそっぽを向く。もう1人の女の人は、そっぽを向くも何も、四肢を形兄に損傷されていて痛みなのかそれ以外なのか・・・息一つせずにじっとしてうつむいていた。まるで死人のようだ


「コーヒー・・・いや、私はカフェオレかなぁ・・。苦すぎるのも嫌だし、甘すぎるのも嫌だしな・・・」


 僕、空閑形真(くがけいま)はこの様子を今さっき目が覚めた(ゆう)と、スウェルさんと共にソファに座って眺めていた。優はソファに深くもたれかかり、スウェルさんは自分で用意したコーヒーっぽいものを片手にくつろいでいるようにも見えた


「ちっ、お前らに対してこっちの情報の一切を答える気はない。刑務所にぶち込みたいのならさっさとそうすればいいし、殺したければさっさと殺せばいいさ」


 さっきまで銃を持っていた人がこっちを向いて言う。その言葉に反応して死人のようだった女の人がゆっくりと口を開く


「やめて、これがただの質問である今のうちに可能な限り答えるの。これが尋問になる前に・・・、何が聞きたいの」


 女の人は虚ろな目で形兄を見上げる。その目には生気が宿っていなかった。その様子を見て男の人2人は顔を青ざめさせ、これからされるかもしれない質問に対して身構える


「答える気持ちになってもらって何よりだ。まず最初の質問、目的は何なのかだが、まぁ、イフ教を消すためとかいう理由だろう。だから、まずはお前らがここに仕向けたのは誰なのか、今どこにいるのか、そいつらの目的は何なのか、それを吐いてもらおう」


 形兄は言い終えると一息つきながら1人用のソファに座り込んだ。目は閉じられ今にも眠ってしまいそうだが、耳はしっかり立てられ聞く気は十分だった

 若い3人は少しの間、言い出そうとして口を動かしていたが、なかなか言い出せずにいるようだ。少しして刀を持っていた人が口をおもむろに開いて話し出した。が、形兄も僕も優も、その場の全員が一番欲しくなかった答えが返ってきた


「教えない・・・教え・・いや、知らない・・?俺らが聞いているのはイフを掃除することだけだ・・・それ以上は知らない」


 形兄は閉じていた目をゆっくりと開き疑いの目で3人を見る


「知らないだと?上がいるということはお前らは指示を受けてここに来ている。本来の目的が共有されていないのに下を動かしているということか?」


「・・・私たち、そのうちでもこの2人は末端の末端。私も真の目的については何も聞かされていないってことはこの2人が聞いたことがないのは当たり前。ちなみに私は上の人たちに比較的近い力を持っているだけであって、地位的には雑用と同じ。だから何も知らない。それで、何か他に効きたいことは?」


「・・・お前にしてもあっさり俺に負けたよな。まあいい、ほかに聞きたいことか、そうだな。じゃあ、なぜお前らは初対面の俺の名前を知っていた?」


才賀(さいが)・・・相馬(そうま)・・・そして、エイラ」


 形兄は1つ、1つ、ゆっくりと3人の名前であろう言葉をこぼす。それに反応して呼ばれた順々に顔を上げて形兄を見る。銃を持っていた男の人、刀を持っていた男の人、そして、四肢をおかしくされた女の人


「お前らの顔も名前もOWA(うち)の非公開犯罪者及び要注意人物リストに載っていない、載っていたのは日本に戸籍として載っていただけ。それ以外はない。しかもその才賀はCV-vβの正しい扱いを知らないらしいからそういうことをしたことがない」


 形兄は一瞬溜めて言い放つ


「ということはこの疑問の正解は、上に潜む奴らが裏に関わる人間、それでもって何か計画を執行するためにイフ教を真っ先に消したい者・・・()()()()の関係者がいるってこと。合ってるか?」


「「「いや、何も知らない」」」


 3人の声が重なる。形兄はさらに目を細める。その声色は困惑なのか、呆然なのか、複雑な感情に包まれていた


「でも・・これから向かう場所に不破形司っていう人がいるっていうことは聞いてきた」


「そうか、まあ分かった。お前ら、末端の末端にもほどがあるな。その感じだと上のことを知ろうとしてすらいないんだろ。だから使い捨てになるんだ」


 形にいのその言葉を聞いて3人は困惑し焦りだす。口々に一文字の言葉を口走りだしている


 ・・・と、いった様子を僕と優とスウェルさんはソファでくつろぎながら見ていた。3人から全く同じような返答しか返ってこないからか、優は飽き飽きしたようであくびをしている。スウェルさんは相変わらずコーヒーをのんびり飲んでいる


「あ!そういえば、ロウルさんはどうなって・・・」


「あいつは、ロウルを奥に連れていったあの2人は治癒が可能な能力を持ったうえで片方は一応医学に精通している者の1人だ。最低限応急処置はできているはず・・・だ」


「え・・でも脳天の穴貫通してた気が・・・それで応急処置ってできるんですか?」


 僕の発言を聞いてスウェルさんはコーヒーが少し残っていてまだほんのり温かいコップをテーブルに置く。肘を膝に置き手のひらを合わせ顔を親指に乗せた。少し遠くに立っていた残りの教団員の2人も顔をうつむかせる


「・・・ロウルが助かるかは分からない。あいつは今のイフ教にとってほしい、重要な存在だ。今も、今でなくとも死なれては困る。今は願うしかない、それが儚き願いだとしても・・・」


「・・・心なしか、連れて行った2人が出てくるのが遅い、かも・・?まあとりま───」


 優は一息ついて再び話し出す。どんな発言が飛んでくるかが分からず、僕とスウェルさんは身構える


「その・・カフェオレ飲みたいんだけど。そのコーヒーってどこで作ったの?」


「・・・お嬢さん、それいま必要か?」


──────────────────


「──へぇ、そんなことがあったのか。最初の任務でそんな状況に合うのは災難だったな」


「その後のロウルさんの安否はわからずじまいだよ。今日辺りにロウルさんの現状を教えてくれる予定なんだけど・・・」


 ロウルさんが撃たれてから翌日の昼、OWA日本支部の食堂で昼食を取りながら昨日のことを鍵山正吾(かぎやましょうご)さんに優が話していた。優は話し終えると昨日飲むことができなかったカフェオレを悠々と飲んでいる


「・・っ!?アッツい!?アツい・・、水、水・・・!」


 ・・・全然悠々に飲めている訳ではないようだ。その様子を見て正吾さんは開けていないペットボトルを優に渡す。その状況で形兄が丼を2つ持ってきた。片方は形兄用のカレーうどん、もう片方は僕用の天丼だ


「はい、これは形真の天丼。正吾、隣失礼するぞ。そういえば盾石、腹部の撃たれたところの様子はどうだ?」


「特に何も。お風呂に入ると少し傷が痛むくらいかな。それ以外は痛みもないし傷が広がる様子もない、まず傷そのものはかなり浅いから」


 優は服を捲し上げる。傷口には大きな絆創膏が貼られていたが少し捲れかけていた。そこから傷口も見えたが、血も滲んでおらず銃弾で撃たれたにしては小さい傷だった


「銃で撃たれてその傷の大きさか・・・おじょ・・優だっけ?なかなかにタフな肉体してんなぁ」


 正吾さんは優の傷口周辺をまじまじと見る。それでもって「針とか入れていいか?」とか、訳の分からないことをほざき、優に露骨に嫌がられながら断られている


「何やら盛り上がっているところ悪いが、形真、盾石、昨日の新しい情報が入ってきた。普通の情報と何の特徴もない情報の2つくらいがあるが、どっちを先に聞きたい?」


「それって普通が2つってことじゃない・・?」


「えっと・・じゃあ何の特徴のないほうで・・」

「そうだな、関係者じゃない俺もそっちのほうが聞きたい」


「え・・?形?正吾さん?なんで選択する意味が・・?」


「分かった。ふt・・特徴のないほうだな」


「形兄もぼろ出てるじゃん」


「で、特徴のない情報についてだ。スウェルらの居るイフ教の教会に明日の早朝から地元の警察とOWAの交互で数日おきに護衛をつけることになった。まだあの3人みたいなのが来る可能性がある。あのレベルの襲撃がまたあるのであれば、今度こそはあのイフの精鋭だと全滅させられる可能性が高い。だからうちの上層部にある程度の力があるものを就かせてほしいと言っておいた」


 形兄はカレーうどんを食べ終わり、スプーンを置いて手を合わせた。そして改めてこっちを向き直り再び話し出す


「そして普通の情報。昨日襲撃を行った3人は『ディーサイド岩溜地下最終監獄がんりゅうちかさいしゅうかんごく』に投獄されることが決まった。今日の午前3時頃にはすでに投獄準備が開始され、すでに完了している」


「ディーサイドか・・その3人の青年どもも不運なもんだな」


「ディーサイ・・何?それ・・」


「あぁ、そうかじゃあ教えるか。ディーサイド岩溜地下最終監獄、能力を使用して犯罪を犯した者の一部が投獄されるハワイ諸島各地に顕在する火山の直下付近に存在する史上最悪の監獄。あの監獄ではただ犯罪者の収容を行うだけでなく、収容者を利用して能力についての研究を行っている。それについては基本的には秘密裏にされていて、OWA以外にはその情報が回ることはない」


「なあ形、その3人の青年どもは能力を持ってたのか?能力者であれば結構研究内容が楽だろうが、能力を持たない者であれば精神が逝っちまうだろ」


「あの3人のうちエイラと才賀という2人は能力の所持が確認された。だが、相馬という男の能力の所持が認めらえなかったから、これから地獄を見ることになるだろ」


 正吾さんはそれを聞いて眉をひそめ、ポケットからペンを取り出し、ペン回しをし始めた。そしてため息も1つ吐く。その少し暗い雰囲気を見かね、優が話し出す


「・・そういえば形、スウェルさんと話したときの()()ってどんなのだったの?それを実行したとき私寝ててさ、見れてないんだよね」


「そういえば俺も見てないな、詳細は知りたいところだ」

「その話、俺も聞きてえな。意志の弱い奴が最初の任務でどう活躍したのか知りたいわ」


 意志が弱かったのは事実だったが、それをサラッと口に出すのは・・・と、思いつつも、僕自身は口で説明するのが下手なので、正吾さんが回していたペンを借りて実践してみる

 僕がペンに触れるとそれは瞬く間に伸びて、先が肥大化し少し大きい正方形になった。その正方形は、徐々に長方形、三角柱、台形、球形といったふうの順をループして形を変えていった。その様子を見ても正吾さんは何のことかピンとこないようで頭に「?」が浮かんでいる。が、優は分かったようで少し驚いているのが顔に表れている


「え、形・・ずっと変形してるの?」


「ん?あ、そういうことか。つまり今までお前は効果を途切れさせずに能力を発動させ続けたことがないってことか。ま、今まで能力を使って戦ったりしたことないだろうしな。能力の先入観でそうなるのは当たり前だ」


「いや、そうしなかったのはそれだけじゃなくて───」


「あーっと、そろそろ普通の情報を話してもいいか?」


 なかなか話せなかったから、形兄が強制的に割り込んで話を終了させた。形兄以外の僕を含める3人は今の話に夢中でそのことをめっきり忘れていた。一斉に形兄のほうを向く


「じゃあ普通の情報をいう。今日の投獄後の聞き取りの記録であの3人のような使い捨ての駒として集められた一般人が多くいるということ、そして集められた最初の日が5月3日ということだ。昨日、スウェルから聞いた話だが、イフ教最高幹部の息子が5月3日に失踪したらしい。何かの偶然だといいが、一連の出来事に関わっている可能性がある、ってことだ」


「ん?イフ教の一番上の幹部の息子が失踪、それでもってその人が今回のことに関わっている可能性がある・・イフ教の幹部の息子でしょ?なんか、イフ教を消すっていう動機がないような気がするけど」


「そこらへんはどうだろうな。今回の場合、あくまでも関わっている可能性があるってだけ、主犯格っていうことじゃないかもしれない。俺もそういう事例はまあまあ見てきたからな」


 3人の会話を聞きながら、僕は天丼を完食した。どうやら今回の出来事は謎なことが多く、胃が痛くなるようなもののようだ、ということが何もわかっていない僕にも伝わってきた。が、そんなことよりもロウルさんの安否が心配だ。頭に貫通するほどの穴を空けられて、無事でいられるのだろうか。だが、今は願うしかない

 僕は、静かに手を合わせた


──────────────────


 記録、2024年7月3日

 7月1日に正式にイフ教の教会となった旧廃ビルにて


 7月3日未明、肝試しと称して教会へ侵入した男子小学生数名が当ビルの3階の教会場で5人以上の死体を発見。発見当時、死体の全ては黒いコートを身に纏っていた

 発見後、ビル内に入らなかった男子小学生の1人が、ビル内からの悲鳴を聞き、付近の交番へ通報。その30分後に警官3名が到着、ビル内に入り死体と、階の入り口でうずくまっている男子小学生4名を確認、応援の要請と小学生の保護を完了し、OWAへ事態の引継ぎが行われた


 死体の全ては両手首と両足首が切断されており、胴体には多くの刃物で切りつけられた跡が見受けられた。発見時を基準として死亡推定時刻は5時間前とされた。DNAを調査したところ、全ての死体がイフ教の教団員であることが判明。死体の中にはスウェル・E(エミサリィ)増山(ぞうやま)、イフ教幹部の死体も確認された


 7月5日現在、犯人確保に繋がるような証拠等は確認されていない

深く広い、世界そのものを包む大きな闇、

そのどこかに注がれる、一筋の憂鬱な光、

何も照らすことも許されない絶望の光、

それが憂鬱であろうが絶望であろうが、禁じられているであろうと、

それを反射するほど鋭く研がれた剣

それと、何かもう1つ……?


次回、憂と剣編


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