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再生のプロローグ  作者: 出落ちの人
儚き願い
11/19

第11話 若き襲撃

脳天に風穴空くと、脳みそがスースーしたりするんですかね

体験したくもないですが

 ロウルさんが倒れる。体から何かの液体が流れ出しているが、暗くよく見えない。しかしそれが大量の血であることに気付いたのはすぐだった。空薬莢が落ちたときの金属音が何度か鳴る。何度かの銃声を聞いて盾石優(たていしゆう)は疲れを忘れた様子で飛び起き、階の入り口を見る


「なっ、銃声!?日本支部の管轄下なんじゃないの?」


「まずは1人。次は・・・ちっ、弾切れか」


 銃を持っている男の人は銃弾を装填し直す。その間に後ろに居たもう1人の男の人が前に出てくる。その人は腰に刀を差していたが、刀を鞘から抜きこっちに向けてきた。刃の側面に何か彫られているようだが、何が彫られているかは分からない


「イフ関連はここを含めてあと3つ。さっさと終わらせたいんでね、無駄な抵抗は止してくれると助かるよ」


 こっち側もあっち側も、それぞれを警戒してなのか少しの間全く動きがない。その隙にイフ教団者の内の2人がロウルさんの名前を呼びながら向かう


「ロウル!大丈夫か!?」


「まずいな、全身に無数の穴。しかも脳天に風穴まで・・・。くそ、急いで奥へ運ぶぞ!」


 ロウルさんを運ぼうとするのを見て刀を向けている男の人がそれを見て、何を感じたのか叫び始めた。声色は物凄く興奮している気がする


「おいおいおい。何してんだ、勝手に動くんじゃねえよ!」


「お前もな」


 刀の男の人がロウルさんに寄った2人に向かって走り出した。それにいち早く反応し、不破形司(ふわけいじ)、形兄が人さし指から大きな肉塊を出現させ、走り出された方向に壁をつくる


「邪魔だな。才賀(さいが)!」


「あぁ。不破形司、邪魔はしないでもらおう」


 銃弾を装填していた男の人が銃口を形兄に向ける。が、形兄に向けられていたのはさっきの銃ではなかった。それはショットガンになっていた。その男の人の背中や腰にショットガンを隠し持つようなバックなどは無かった


「形兄っ!」


「形司どの!あれは恐らくCG-vβだ。CGで最も火力が高い、守らなければ四肢が吹き飛──」


「大丈夫だ。もう守る用意は──」


 スウェルさんや形兄が言い終わる前に発砲音が聞こえる。形兄は発砲される前に既に中指から肉塊を出して自身の目の前に壁を出していた。肉塊に弾丸がムニッとめり込み肉塊に沈んでいく。防御は完璧だった、しかし形兄が壁となっていた2つの肉塊とともに窓ガラスを貫通して、瞬時に外に押し出された


 飛び出る際に刀を持ってロウルさんの方に走り出した人を止めるためのものだった壁が僕の顔に当たり、僕、空閑形真(くがけいま)はめまいを起こしてよろめき、膝をつく。周囲の様子が見えない


「くっ・・・」


 その言葉を最後に形兄は落ちていった気がする。それと同時に何かが小さい爆発を起こした音がした。目眩が少し良くなり、音の方向を見るとショットガンから煙が出ていた

 周りを見るとソファの上でじっとしねいる優やロウルさんの周りにいる2人以外はソファ裏に隠れているようだ


「一発でクリエイトガン(C G)が暴発か・・・。やはりβでは耐えられない。上もケチなもんだ」


 目の前を塞いでいた壁が無くなり、刀の男の人はロウルさんの方に向かい再び走り出した。既に刀を振りかぶっている。助けに行きたいが、僕の普通の速さ、しかも軽い目眩がしている状態では到底辿り着けそうにない


「前にその白髪野郎に散々邪魔してもらって、計画が色々おじゃんになったんだ。脳天に風穴開けるだけじゃ、制裁としちゃ足りねえよなぁ!?」


 刀が勢いよく振り下ろされた。次の瞬間、金属の衝突音が響く。その音は、優とロウルさんの手合わせのときに響いた音と同じだった


 刀は、優が出した盾で、優によって受け止められていた。前のように壁に吹き飛ばされることもなく、その場で止めていた。更に優は刀を徐々に押し返してもいた


「くそっ、なんで女のガキ如きに押し返されて・・・!鋭さ上昇の能力がついてるのに!?」


「・・ロウルさんの一撃より遥かに遅いし弱いね。そんなもんじゃ私の防御を崩すのは十年早いよ。さ、今のうちに、運んで・・・っ!」


 優は更に押し返すと、盾ごと刀の男の人を蹴り飛ばした。男の人はよろめくが、すぐに体勢を立て直して構え、優を睨みつけた

 そしてその隙に体に沢山の穴が空いたロウルさんを抱え、教団員の2人が奥の部屋へと走っていった


「くそ、お前もか・・?お前も掃除の邪魔をするのかぁ?残念ながら俺らは予定にない掃除はしたくないんだが」


「さあね、私は今疲れててよく分からないよ。でももう理解できた、あんたらはクソッタレの犯罪者。手加減する意味もない」


 そう言って優は面を上げる。優が今まで出したことがほとんどないような威圧感でその場の全員の額に冷や汗が流れる。ただ2人、スウェルさんと銃を持っている人を除いて


「ロウルさんの脳天に風穴開ける以上の制裁をするんでしょ?ってことはロウルさんを殺す気でここにいる。しかも自己防衛ですらない、だったら・・・」


「私もあんたらを殺す気でやっていいってことだよね。敵討ちとして」


 優は言い終わると盾を2つ、両手に出しさっきのように刀の人に向けて勢いよく投げる。盾は小さな弧を描き襲いにかかる

 が、刀の人は間一髪でしゃがんだことで避けた。しゃがんだことにより銃の人から優を狙えるようになり、銃口が優へ向けられる


「じゃあなキレ症。お前もそっちに送ってやる」


 弾丸が優へ放たれるが、優は盾を出しギリギリのところでそれを防ぐ。顔と銃弾の距離は僅か10cm程度だ


「ちっ、防がれたか」


 戦闘は同じことの繰り返しとなった

 優が盾を投げ、刀の人が弾く又は避ける、そして銃の人が発砲して援護、優が盾で銃弾を防ぐ。そして盾を投げ、避け、撃ち、防ぎ・・・

 このままでは行動数の差で優が体力の消耗で負けることは目に見えていた。僕はソファ裏に隠れていたスウェルさんに助けを求めた


「ス、スウェルさん!さっきの止める能力は使えないんですか?」


「いや、あれは一度本体に触れたことがある者にしか効かなくてな。その証拠に、さっきはお嬢さんを止めていなかっただろう。今の状況、近距離からも遠距離からも攻撃が飛んでくる状況では発動条件の1つや2つも満たせやしない」


 どうやら今はこの劣勢の状況を、指を加えて見ていることしかできないようだ。と、思ったが突如スウェルさんが僕に耳打ちする


「少年よ、少し頼みたいのだが───」


──────────────────


 一方、不破形司は廃ビルそのものの入り口前に立っていた。銃弾に飛ばされ、窓ガラスを突き破り落ちた先がここであった。想定外の威力に形司は困惑していた


「くそ、ただの弾丸一発だろ。防御が足りない・・・いや、あの瞬間に出せたのはあれだけだ」

(というより肉塊に当たったときの痛みそのものは無かった。つまり衝撃波吸収できているということ。となるとあの弾丸に何か能力が・・・?)


 そう考えていると一瞬、形司の左足首に痛みが走る。どうやら着地は出来たが、その代わり足首をくじいてしまったようだ。形司は足元を見る。が、形司の目に入ったのはくじいて腫れた足ではなかった

 死体⋯いや、首にアザはあるものの、目が白くなっていたり、泡を吹いているだけで、血は出ていない。どうやらただ気絶をしているだけのようだ。1人どころではない。10人前後の人が倒れていた


 その全員が黒いコートを身に纏っており、形司は一目で全員がイフ教団者であることを悟った


「なるほど、だから定期連絡が来なかった。まあ、ある程度は想定できていたが。そういうことだな───」


 形司の見据える先には気絶した教団員の胸ぐらを掴んでいる女が1人。右手にはバチバチと電気がほとばしる矛を持っている。形司に見られていることを気付いた女は、掴んでいた教団員を横に投げ捨てる

 投げ捨てられた教団員にはまだ意識があったようで、うっ・・と呻いた


「へぇ、あんたはイフの奴らじゃないのね。だとしたらこの廃ビルに居た理由は?やっぱり関係者なの?」


 女は左手で指鉄砲をつくる。指先に青白い何かが集まり、球をなす。形をなした球は仄かな光を纏っている

 撃ってくる、形司が確信した瞬間、球が指から離れ真っすぐに形司へと向かう。形司は余裕を持って避けたが、球が突如方向を変え再び形司へ向かってきた。形司はしまうことなく出し続けていた肉塊に口を出現させ、球を飲み込ませる


「弾を自己生成した上でほぼ音速で撃ってくるか。見たままだと20に行くか行かないか、慣れてるな」


「だろうね!あの人(・ ・ ・)はあたしの能力の上手い使い方を教えてくれた。あんたのような世の中の闇を何も知らないような若い玩具()がさあ!」


 形司は手の全ての指から肉塊を出現させた。女の視界は、瞬時に赤黒い肉塊一色に染まる。形司は言い放つ


「お前は何か勘違いしているみたいだ。俺も、俺らも、この世の闇はお前らよりも多く触れて、わかってきているつもりだ。そして、俺は若いと言われるほどの年齢じゃない、30後半だ」


 女は目を見開いて明らかに驚いている。それが自身より目の前の男のほうが深く暗い闇に触れていることを知ったからなのか、目の前の若い容姿をした男が30歳後半の年齢だと知ったからなのかは、定かではない

 が、それにより女の動きが少し停止し、形司にとってはとても大きい隙が作ることができたのは事実であった。その隙に形司は肉塊を女のほうに向かわせ、四肢を咥えさせてその状態で地面に女もろとも叩きつける


「うぐっ・・・!でもぉっ!」


 女が持っていた矛の刃先が黄白く(きじろく)光る。瞬間、地面を通り肉塊に、さらに形司の肉体に電流が走る。形司は痺れ少し苦しみ、肉塊はまるで静電気で痛がった人間のように女の体から瞬時に離れた。さらに地面に流れていた電流が形司の足に通電し、くじいた足首にとどめを刺す


「ちっ、左足が使い物にならなくなったか・・・!」


「よし、その足じゃこの弾をよけるのは無理そうじゃない?しかもその赤黒いのには矛の電流が結構通じるようだし」


 女は再び左手で指鉄砲をつくって球を作り、形司に向ける。が、形司の表情は焦りでも、緊張でも、安堵でも、余裕でもなく、ただ無表情に目の前の女を自身の眼で確かに捉えていた。それはまるで醜い顔の人間を見ているようだった。彼の指から出ている肉塊も先端が女のほうを向いている。女はその状況に少し戦き、少し後退する。その額には1つ、汗が流れていた


「な、何?何なの?そっちが劣勢の状況なのよ?どうしてそんな顔で見ていられるの?焦るならわかるけど無表情が一番訳分かんない」


「あぁ、すまない。昔からの癖でな、馬鹿馬鹿しいものを目にするとクソを見下すような目になってるってよく言われる。まあ、最近は抑えてはいたんだがな・・・」


「馬鹿馬鹿しいもの・・・?まさか、私が?」


 形司はその言葉を聞いて、再びそのような目に、表情になる。そして目の前の女に言い放つ


「あぁ、そうだ。今俺は馬鹿馬鹿しいものを耳にしている。片足が使い物にならなくなっただけでそっちが優勢?静電気みたいな微小な電流が肉塊に効いただけで対等に戦えると?反吐が出る。俺は、俺らはお前らよりも闇を多く見ていると言っただろう。それはつまり多くの闇と戦っているのと同義、こんなものはただのハンデにもならない。絶望する覚悟をしておけ」


 形司の肉塊がさらにさらに肥大化していき、周囲一帯を包む


「これからお前には地獄に落ちるよりも恐ろしい闇を見せてやる」

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