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 ダメスキル『百点カード』でチート生活・ポイカツ極めて無双する。  作者: 米糠


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 空は薄桃色に染まり、夜の帳がようやく退いていく。街の朝はまだ静かで、商人たちの声すら聞こえてこない。そんな中、俺たちは福佐山都市の冒険者ギルドの前に集まっていた。


「おはようございます!」


 元気な声とともに、礼子さんがギルドの扉を開けて出てくる。朝の冷たい空気に頬を少し赤らめながらも、変わらぬ優しい笑顔だ。


「皆さん、時間通りですね。えらいえらい。ロメオさん、もう馬車の準備できてますよ」


「やあやあ、おはよう諸君!」


 その声に振り返ると、ロメオさんが満面の笑みで手を振りながら現れた。いつものように革のベストと白シャツ、肩掛けの鞄にはすでに数冊の本が突っ込まれている。そして何より、彼の瞳は朝から光りすぎていた。あれは完全に遠足前の子供の目だ。


「いやあ、素晴らしい日だ! こういう朝はね、何か新しい発見がある匂いがするんだよ! 君たち、寝たかい? 私は寝られなかった!」


「……ロメオさん、テンション高いっすね」


 明がぽつりと呟く。だがその隣で純子は目を輝かせていた。


「それだけ価値のある調査ってことよ。わくわくするじゃない!」


「弓の弦も調整したし、矢筒も満タンだよ!」


 沙耶がぴょんぴょんとその場で跳ねながら答えると、有紗が微笑んで荷物を持ち直す。


「長旅になりそうですし、食料と水もたっぷり用意してあります」


「うん。じゃあ、行こうか」


 俺がそう言うと、ロメオさんが「出発だあ!」と叫びながら馬車の扉を開けた。


 馬車は四輪の旅用で、屋根付き。車体は濃い青に塗られていて、側面にはギルドの紋章が刻まれている。馬は二頭、よく手入れされ、黒と白の対照的な毛並みが美しい。


 荷物を積み込み、中に乗り込むと、柔らかなクッションが敷かれた座席が左右に並び、揺れを最小限に抑える設計になっているのが分かる。


「今回はね、東の山脈の奥、かつて風の谷と呼ばれた場所に向かう。そこに、“第一の言葉”が眠っている可能性があるんだ」


 馬車がゆっくりと動き出す。ロメオさんが手元のノートを開き、さっそく語り始めた。


「風の谷――今は無人の地だけど、かつて精霊信仰を中心に独自の文化を持っていた村だったそうだ。そこにね、『言葉』の力で奇跡を起こす巫女がいたという伝承がある。その伝承を追うとね……ああ、この資料を見てくれたまえ!」


「うわ、文字びっしり……」


 沙耶が顔をしかめるが、純子は前のめりだ。


「その『第一の言葉』を見つけたら、この前見つけた『第一断章、封印されし鍵に関する記録』の続きがわかるってことですよね。かつてこの地に住んでいた人々の営みと、黒い霧に包まれて滅んでいく都市の姿ーーあの映像の続きが見れるってことなんでしょう?」


「その通りだ通りだーーと思っているよ。第六の言葉までそろえるとすべてが見れるんじゃないかな」


「あの黒い霧の秘密がわかるといいですね。最近の異常事態、あの黒い霧みたいな霧を見たことが有るんです」


 二人の会話がはずむが、明はきいてはいなかった。つまんねーなと思いながら、ふと馬車の窓の外に目を向ける。


「……お、山が見えてきた」


 遠くに、霞のように連なる山脈が見え始めていた。木々の緑と、雪を残した山頂の白が朝の陽光に照らされ、まるで異世界への入り口のようだった。


 旅の始まりを感じさせる、少し肌寒い朝風が、馬車の小さな窓から吹き込んでくる。


 俺は深く息を吸い込み、その風に未来の気配を感じながら、窓の外を見つめた。



 旅に出てから、すでに半日が過ぎていた。


 馬車は山道へと入り、緩やかに標高を上げていく。森の緑が深くなり、木々の間から差し込む陽光が、まるで揺れるカーテンのように道を染めていた。


「ちょっと、揺れるー!」

 沙耶がシートの上でバランスを崩し、明の肩に倒れ込む。

「いてっ、こら。もうちょっと大人しくしてろ」

「だってー、飽きたんだもん。ねえ、誰かゲームしようよ! じゃんけんとか!」


「子供か」

 明が呆れ顔をするが、有紗は小さく笑った。

「じゃあ、私が問題を出すわ。これは何の植物でしょう……って、あれ? この草……見たことないかも」

「ちょ、それ毒草じゃない? 触んないで!」


 ワイワイとにぎやかな雰囲気の中、突然、馬車が大きく揺れた。


「うわっ!」

 全員が体勢を崩す。馬が激しく嘶き、御者が叫んだ。

「道に倒木だ! 少し時間をくれ、片づける!」


「モンスターじゃなくてよかったな……でも、誰か斧あるか?」

「斧はないけど、魔法がある」

 俺は外に降り、前方の倒木を確認する。太いが、古く朽ちかけている。


「フレイムジャベリン」

 俺が呟くと、炎の槍が空気を裂いて木を貫いた。火が走り、音もなく倒木が崩れ落ちる。


「おお……手慣れてるじゃないか、頼もしいな!」

 ロメオさんが拍手をしながら近づいてくる。

「ただの事故か、それとも何かの前触れか……少しだけ気をつけて進もうか」


 倒木を処理し、再び馬車が進み始めた頃には、太陽も西へと傾きかけていた。




ここまで読んでいただきありがとうございます。

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作者の励みになります! お手数だと思いますが、ご協力頂けたら本当にありがたい限りです <(_ _)>ペコ


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