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「じゃあ、もっと山の方に行ってみようぜ! あっちならイノシシ型や山羊型の中型の獣型モンスターが出るからちょうど良いんじゃね」
イノシシ型や山羊型は攻撃的な性格を持つ獣型モンスターだ。目を興奮に輝かせる明の提案に、純子の顔が少しひきつる。
「良いけど、ちゃんと壁になってくれるわよね?」
「勿論だぜ! 壁の役割は勿論だが、壁になる前に、奴らが近づく前に、俺がこの剣でぶった斬ってやるから安心しな!」
卓郎はその言葉に少し不安を感じた。それは明が勝手に魔物に突っ込んでいくって事じゃないの? 明を魔物がスルーしたら、壁の役目は俺なんじゃあ? て言うか、それって俺が本当の壁役じゃね? そんなの……俺一人でイノシシ型魔物なんて止められないよ。絶対自分じゃ、その役割を果たせない。
「それじゃあ、行こう!」
有紗が明るく歩き出し、みんながそれに従って小道を進みだした。
卓郎は後ろからついていきながら、心の中でなんかやばい事になりそうな予感がしていた。
小道を進むにつれて、周囲の木々はだんだんとまばらになり、視界が開けてきた。日差しが強くなり、森の中とは違った雰囲気が漂っている。卓郎は仲間たちの後ろを歩きながら、心の中で自分のスキル『百点カード』について考えていた。
もしかしてさっきの音は『百点カード』? ちょっとチェックだけしてみるか。
『百点カード』と心の中で唱えると『百点カード』が手の中に現れる。
『百点カード』の片隅に四角く縁取りされたギルドカードの表示をタップしてメッセージボードを表示すると…… 百点カード、百点ポイント239、銅級、冒険者レベルF、ステータス、HP:80/80 攻撃力:90 防御力:80 速度:85 知力:100 器用:80、ーー自分のステータスが現れたがステータスに違いはないようだ。
よく見ると百点ポイントが239? …………前237じゃなかったっけ?
思わず数字を触ってしまった。
パッと画面が切り替わり、ポイントを利用しますか? はい/いいえ のメッセージ。
此処は、はいで……ポチッとな。
と次の画面ーーポイントをステータスに割り振る。ポイントでスキルを買う。
「え!」
思わず大きな声が出て、みんなの視線が俺に集まった。
「なんでもないです」
「急に大きな声、出さないでよね! 何か魔物を見つけたの?」
「すみません。見つけてないです」
みんなから白い目で見られながらも笑って誤魔化した。
そしてメッセージボードをマジマジと見据えた。
スキル……買えるんだ?
『スキルを買う』をポチっと押すと帰るスキルが一覧表示された。100ポイントで買えるもの、200ポイントで買えるもの。300以上はポイント不足で購入不可のため非表示と書かれている。
うーむ。
役に立つ剣のスキルは……200ポイントで見つけた『力の一撃』……なんか良さそう。
『3秒力を貯める事により通常の攻撃の倍の力で攻撃できるが、繰り出した後に1秒動けない』
ソロで戦うのだと使いにくそうだが、パーティで戦うなら相当強そうだな。
俺はこれを選んでポチっとメッセージボードを押した。
なんだか体がむずむずして、スキルが身についたような気がした。
百点ポイントが200ポイント減って39ポイントになっている。
ステータスに割り振るを押し残りのポイントを攻撃力に全振りするとポイントは0になり、攻撃力が39上がって129になる。どうやら1ポイントで1だけステータスを上げられるらしい。これは美味しい……と嬉しくなる。多分トドメを刺した時のポロピっという音がポイントをもらえた合図に違いない。止めをさせばポイントが貯まるのだ。
俺は百点ポイントの仕組みを理解した。これってチートじゃね?
俺は飛び上がりそうになったがさっきの失敗を思い出し、飛び上がるのをなんとか堪える。
「何、にやけてるのよ! 気持ち悪いわねえ。後ろから、私のお尻見てるんじゃないでしょうね!」
どうやら顔に出ていたようで、純子に言われない疑いを向けられる。
俺は手を大きく振って否定する。
「そんな事、してないって!」
「まったくー!」
何がまったくなのか? 完全なる思い込みじゃねーかと不快に思うが、まあ、純子は美人だからそういう視線にいつも晒されているのかもしれない。
「何考えてるのよ!」
俺が余計な事を考えているのがわかったらしい。こいつ結構よく見てるな。
「なんでもないよ」
少し不機嫌な言い方で話を打ち切ろうとしたその時、
「おい! 気をつけろ。イノシシ型魔物だ」
三次が警告を発した。
驚いて見回せば、周囲には岩や茂みがあり、獣型モンスターが出現しやすそうな雰囲気を醸している。
「どこですか?」
「向こうの草むらの中だ。隠れて見えないが、こっちに気づいてるかもな」
「面白くなってきたぜ!」
明が赤い目を輝かせて腕まくりをする。
純子と有紗と沙耶が弓を構えて臨戦体制に入った。
「黙って!」
純子が明を注意する。
彼女は弓矢を構え、周囲を見渡し魔物を探した。
卓郎もショートソードを構えて覚悟を決める。
やってやる。
緊張感が高まっていくのを肌で感じる。
「見て、あそこにイノシシ型の魔物がいる!」
有紗が指を指す。
その方向に目を向けると、確かに大きなイノシシ型の魔物が草むらから顔を出していた。
イノシシ型魔物は、体長が約2メートルほどもある大きな体を持ち、筋肉質な四肢が地面を力強く踏みしめている。全身は濃い茶色の毛で覆われており、ところどころに泥や草が付着している。特に目を引くのは、その大きな牙だ。鋭く尖った牙が口からはみ出し、威圧感を放っていた。
魔物の目は赤く、怒りに満ちた光を宿している。周囲の音に敏感に反応し、耳をピンと立てて周囲を警戒している様子が見て取れる。イノシシ型魔物は、草むらから顔を出した瞬間、卓郎たちの存在に気づき、鼻を鳴らして威嚇するように低い唸り声を上げた。
俺は思わず後退りした。
「どうする?」
明がワクワクした声で尋ねる。
「まずは静かに近づいて、私たちが狙いを定めるから、あんたたちは壁になって私たちを守って」
純子が指示を出す。
「分かった!」
明は頷き、俺もその言葉に従った。心の中で「これが自分の出番だ」と思い、少しずつ前に出る。
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