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キングシルバーウルフの赤い片目がギラリと光った瞬間、地面を蹴る音と共に、黒い影が一直線に突っ込んできた!
「くるぞっ!!」
俺はミスリルの剣を構えて前に出る。
――ガギィィィィンッ!!
剣と牙がぶつかり、火花が散った。重い! たった一撃で腕が痺れる。
だが俺は踏ん張って押し返した。
「純子、有紗、今だッ!」
「了解っ!」
「援護するわ!」
二人の矢が、キングの左右から放たれる。しかし、キングは大きく跳躍し、まるで見えていたかのようにかわした。
「くっ、早っ……!」有紗が唇を噛む。
空中から降りてきたキングは、前脚で俺に向けて爪を振り下ろす。
俺は咄嗟にバックステップでかわしたが――
「ぐっ……!」
地面に叩きつけられた衝撃波が全身に響く。足元がえぐれてる。あんなのまともに食らったらひとたまりもない。
それでも俺は笑った。
「上等だよ、お前……!」
そしてミスリルの剣に魔力を流し込む。刀身の輝きがどんどん強くなる。それと同時に俺の集中が高まっていく。強敵……死と対峙する緊張が俺の集中を高めていた。
「……きた」
視界が一変する。キングの動きがスローモーションのように見えた。
「右の踏み込み……次、左に回り込んで牙を……っ、見える!」
キングの攻撃を紙一重で避け、俺は一気に間合いを詰める。そして腹部に渾身の斬撃を叩き込んだ。ミスリルソードがさらに輝く。
「――おおおおおおおおッ!!!」
鋼鉄のような毛並みが裂け、黒い血が飛び散る。キングが唸り声を上げてのたうった。
「今っ!!」
「撃ち抜けぇっ!!」
純子と有紗の矢が、キングの傷口を正確に貫いた!
――ズシュウウウッ!!
キングの動きが鈍った。だがまだ終わっていない。凶暴さを増した片目が俺を睨み――
「がああああああああっ!!」
――魔力の奔流。口元に紫の光が集まり始めた。
「まずい、なんかくるぞ……!」
「魔力砲撃……!?」有紗の声が震える。
「っくそ、間に合え――!」
俺は全力で踏み込んでいく。
その時、キングの後方から別の声が響いた。
「こんのやろー!!」
直後、明のロングソードがキングの背後からぶち込まれた。沙耶の矢と同時にだ!
キングの魔力砲撃の弾道がそれる。
ズドーン!!
「とどめだー!」
俺はミスリルソードを振りかぶり、同時に魔力を思いっきり流し込む。その限界まで輝いた刀身を大上段から叩き込んだ。
光が炸裂し、魔力が暴発する。紫の閃光と共に、キングが雄叫びを上げて崩れ落ちた。
「っはあ……」
「終わった……?」
黒煙の中、キングシルバーウルフは地面に沈み、その巨体は動かなくなった。
静寂が、森に戻る。
そして――
「……みんな、生きてる?」
「もちろん!」と明が拳を突き上げる。
沙耶が矢筒を背負いながら笑った。
「逃げたやつ、ちゃんと仕留めといたよ!」
有紗も微笑む。
「卓郎、すごかった……まるで主人公みたいだったよ」
「いやいや、俺はあくまでサポート役で……」
「いやいやいや、主役だったでしょ今のは!」と純子が突っ込む。
俺はちょっと照れながら、キングの亡骸を見下ろした。
――これが、俺たちの初めての本物の戦いだった。
だけど、何だろう。不思議と確信していた。
これから先、もっと強いやつと、もっとヤバい状況がある――でも、俺たちならいける。
だって、――最高の仲間たちがいるんだから。
キングシルバーウルフ、シルバーウルフの死体は追加報酬として受け取る約束なので百点カードの『買い取り』機能で現金化した。(キングシルバーウルフ・40万ゴルド、シルバーウルフ・10万ゴルド32体分=320万ゴルド )
数時間後。俺たちは村に戻っていた。村人たちは驚愕の声を上げた。
「し、信じられん……あんな魔獣を倒したのか……!」
「村の英雄だ!」
「結婚してくれ!!」
「え、今なんかプロポーズ混ざってたよね!?」と明が笑いながら肘で俺を小突く。
「いや、俺は断るぞ!? そっちの気はない!!」
※プロポーズしてきたのは髭モジャの農夫(42)だった。
村長が慌てて人々を鎮めると、満面の笑みで俺たちに言った。
「本当にありがとう。君たちのおかげで、村は救われましたのじゃ」
そして手渡されたのは――
「うおっ、金貨50枚(50万ゴルド)!? 」
「やったぁ!」
沙耶が金貨を両手にすくってにやにやしてる。
「まあ当然ね。これだけの働き、報酬が見合わない方がおかしいわ」
純子はそう言いつつ、しっかり自分の取り分を数えている。
そして――
「……で、こっからが本題じゃ」
村長の顔が引き締まる。
「実は、森の奥――『霧の谷』のあたりに、最近また異常な魔物の気配があってのう……」
「え、また?」と俺。
「うむ。しかも、今回のキングシルバーウルフと同じく異常変異の痕跡があるらしいのじゃ。もしかしたら、これはただの魔物異常ではなく――」
「誰かが意図的にやってる……ってこと?」
有紗が神妙な表情で呟いた。
「可能性はあるぞい。だから、もしよければ……いや、君たちにしか頼めないかのう」
村長は深々と頭を下げた。
「『霧の谷』の調査をお願いしたい。報酬は弾む。50万ゴルドでどうじゃ?」
その場に、緊張が走る。
でも――
「いいぜ、受けてやるよ。面白そうだしな!」明が即答。
「私も! 今回みたいな協力プレイ、燃えるもん!」沙耶も笑顔。
「……西も仕事できなくなると困るしね」純子がぼそっと呟き、
「謎の原因があるなら、明らかにしたいよね」と有紗。
そして俺は、仲間たちの顔を見渡して、にやりと笑った。
「じゃあ次の目的地は『霧の谷』ってことで――行くか。」
こうして俺たちは、新たな依頼へと向かうことになった。
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