20
俺は翌朝あの十字路で純子を待った。ステータスを見せるためだ。
「純子、あのさ……」
「おはよう。卓郎」
「おはよう純子、あのさ、昨日の続きなんだけど」
「何続きって」
「俺が実力を隠してるって話さ」
「ああそのこと、別にいいのよ。当然のことだもの」
「違うよ。隠してたわけじゃないんだ。だから俺のステータスを見てほしい。隠してない証拠にさ」
純子が複雑そうな顔で固まってからにこりと笑う。
「分かった。見てあげる」
俺はメッセージボードを表示し純子に肩を触らせる。
百点ポイント0、銅級、冒険者レベルF、力の一撃
ステータス、HP:130/130 攻撃力:139 防御力:130
速度:173 知力:116 器用:130、
こうすれば、純子にも俺のステータスが見えるはずだ。
俺のステータスを見た純子の目が驚きに見開かれる。
「何これ? ほんとにこれが卓郎のステータスなの? 凄い……」
「別に、隠すつもりはなかったんだ。それにこんなになったのはつい最近なんだ」
つい最近というより昨晩の事である。だが、そんなこと言っても話がややこしくなるだけだ。
「こんなの、Fランク冒険者の数値じゃないわよ」
「冒険者ランクは、貢献度によるからね。それに、まだ一年ちょっとだし」
「それじゃあこれから難しい依頼をクリアして行った方が良いんじゃない? 常時買い取りだけだと冒険者ランクの上がり方は遅いでしょう?」
純子は歩きながら何か考えているようだ。目の前に有紗と沙耶が見えてくる。いち早くこちらに気づいた沙耶が手を振っている。
「ねえ卓郎。今日はEランクの依頼を受けてみない? 皆んなとも相談してさ」
Fランクの冒険者パーティは一つ上のEランクの依頼まで受注することができることになっている。
「その方が良いのかな?」
俺には純子の目論見はイマイチよく分からないが、何か考えがあるのは間違いなかった。
「明も冒険者ランクを上げたいって言ってたじゃない。常時買い取り依頼だけだと冒険者ランクってきっと上がり辛いと思うのね。だから掲示板の依頼をクリアして行った方が早く上がると思うの」
「Eランクの依頼を安定的にクリアできる事を実績で示すって事だよね」
「「おはよう。純子! 卓郎!」」
「「おはよう。有紗! 沙耶!」」
4人が合流し、有紗が純子の表情に異常を感じたのか、
「どうかしたの? 純子ちゃん」
「それがね! 卓郎のステータスを見せてもらったんだけど、凄いのよ」
俺は2人にもステータスをみせてみる。2人も驚いて俺の顔を二度見、三度見して目をパチクリさせた。
「うん」
3人でゴニョゴニョ話あってから、一つ咳をして有紗が俺を見つめて「ランク上げよう」と言った。
そこに明がやってくる。
「遅いわよ。明! あんた、いつも最後よね。たまには早く来て待ってなさいよ!」
「あ、ああ、悪りー!」
明が頭を書いて気まずそうに返事をする。
「あのね! 今日は掲示板のEランク依頼にチャレンジしてみない?」
「お! 良いね、良いね。俺もそうしようと思ってたんだよ!」
「明君はそう言うと思ってたわ! じゃあ早速掲示板を見に行きましょ」
有紗と沙耶が冒険者ギルドに入っていく。純子が俺に入るよう目で合図した。
なんだかおかしなことになったな。でも、ギルドの依頼をこなすのは普通のことだし、ちゃんと達成できそうな依頼を選べば問題はないはずだよね。
俺は純子の後についてギルドハウスに入っていく。
有紗と沙耶は掲示板の前で良さそうな依頼を探し始めていた。
「ねえ、Eランクの依頼って、そんなに難しくなさそうよね? 沙耶」
「そうね。有紗、どれも簡単そう」
「どれどれ? ……ほんとだ。常時買い取り依頼と変わらないじゃない」
「Eなんて、そんなもんだぜ。3回続けて成功すればEランクになれるんだからよ。早く依頼を受けようぜ」
冒険者ランクがEの明が分かったようなことを言う。
俺は4人の様子を見ながらその続けてってところでつまずくんだよなあ……と過去を振り返っていた。
「Eランクの明がいるんだから簡単には違いないわよね」
「そうよね、畑を荒らす猪型の駆除とか鹿型の駆除とか依頼を出してる人の村に行くのが違うくらいで、倒す魔獣の強さはそれほどでもないみたい」
「どうせなら近くの村が良いかしら。遠いと移動が大変だし」
新人3人のワチャワチャを呆れるように明が笑う。
「そんなに遠い村なんてめったにねーから心配ねーよ。このギルドのテリトリー内なんだからよ」
純子が掲示板の依頼の一つを指差す。
「じゃあ、今まで猪型は経験してるから、この諭吉さんの畑に出る猪型の駆除をやってみましょうか?」
「いいわよ。それ何処?」
「北野村4番地だって。北野村って歩いて1時間くらいかな?」
「北野村かー」
明の言葉で視線が集まる。
「何か嫌な経験でもあったの?」
「あの辺りの依頼の後で、前のパーティと喧嘩して1人になったんあだよな」
「「「…………」」」
じっとりとした視線が明に集まる。
「なんだよ。別に何があったわけじゃねーぜ。依頼もちゃんとクリアしたしよ」
だが、何もないはずはないなと皆んなが思っているのが明白だった。
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