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 ダメスキル『百点カード』でチート生活・ポイカツ極めて無双する。  作者: 米糠


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 王都中央広場の一角にある「王立公認オークション会場」の中は、まるで宝石箱をひっくり返したような煌びやかさだった。


 赤絨毯が敷かれ、会場中央には円形の舞台。その周囲に、金縁の座席が並ぶ。貴族、商人、騎士団関係者など、様々な人物が集まっていた。


「……すごい、あれ全部出品されるの?」


 沙耶が舞台脇の陳列棚を見て、目を丸くする。


 そこには、魔晶石の原石、幻獣の角、古代魔導書、王族の肖像画まで、ありとあらゆる高級品が並んでいた。


 卓郎たちが持ち込んだのは――


 ・〈呪刻の大槌〉(オーガ族の長が使っていた戦槌。呪詛付き)

 ・〈封魔の金飾り〉(古代文字の刻まれた耳飾り。魔力封印効果あり)

 ・〈獣王の毛皮〉(炎耐性と高い防御力を持つマント素材)


 これらはすでに裏方で鑑定を済ませ、今夜の目玉商品としてリストアップされていたが、それ以外に、卓郎たちが持ち込んだ宝石や武器、装身具、大量の古金貨などなどがオークションにかけられる。


「出たぞ。次が……俺らのオーガの宝だ」

 明が小声で呟いた瞬間、会場の照明がふっと落ち、スポットライトが中央の舞台を照らした。

 金縁のカーテンが静かに開く。

 そこに現れたのは――漆黒に染まった、異様な存在感を放つ巨大な戦槌だった。


 刃のような槌頭に刻まれた螺旋の文様は、不気味な紫光を帯びてかすかに脈打っている。

 柄には黒鉄と骨のような素材が交じり合い、全体がまるで生きているかのような圧を放っていた。


『――続きましては、〈呪刻の大槌〉! オーガ王族の直系が用いたとされる、戦魔具でございます!』


 老鑑定士の声が朗々と響く。


『この槌はただの破壊兵器にあらず。戦場において、魔力を吸収し変質させる“呪詛の還元”を可能にする、極めて稀少な逸品……王国の記録においても、類似の品は三百年ぶりの出品とされております!』


 ざわっ、と場が揺れた。

 前列の貴族たちがざわつき、後列の商人たちが身を乗り出す。


「おいおい……なんか、えらいことになってるぞ……」


 卓郎が小声で呟くと、明が口の端を吊り上げた。


「へへっ、言ったろ? あのオーガ、マジで只者じゃなかったんだよ……呪われてるけどな」


『スタート価格は――三千万ゴルドから!』


 その一声で、空気が爆ぜた。


「三千五百万!」


 即座に、前列の細身の貴族が札を上げた。


「四千万!」


 中年の女性魔術師が乗せるように声を飛ばす。


「五千万!」


 ローブを羽織った異国風の男が、控えめに指を上げた。


「六千五百万!」


「七千二百万!」


「八千万!!」


 あちこちから声が飛び交い、会場の熱は急上昇していく。


「……すごい……」


 有紗が思わず呟く。横で沙耶が手に汗を握っていた。


「な、なんか心臓の音が聞こえる……わたしのじゃなくて、会場全体の!」


『――八千五百万! 九千万! ……一億!!』


 一瞬、場が静まった。


 札を上げたのは、中央列に座る、豪奢な衣装をまとった白髪の老紳士――王国軍の将軍の一人だ。


 彼の登場に、周囲がざわめく。


「うそ……王国の将軍まで……」


「やべぇ、国家レベルで取りにきてるぞ……」


「一億一千万!」


 今度は、教会関係と思われる司祭風の老人が追随する。


「一億二千万!」


 軍人が再び札を上げた。


『――一億二千万ゴルド! 他にいらっしゃいませんか? 一億二千万――!』


 会場の空気が張り詰める。


 静寂の中、落札のハンマーが高く掲げられ――


 カンッ!


 その一打で、全てが決まった。


『落札です! 一億二千万ゴルド――〈呪刻の大槌〉、王国軍将軍・レイヴン殿のものとなります!』


 会場から歓声と拍手が巻き起こった。興奮と驚嘆が入り混じる、嵐のような盛り上がりだった。


「……お、おい……俺ら、今、国家予算レベルのモノ売っちまったんじゃ……」


 卓郎が顔を引きつらせると、明が腕を組み、口笛を吹いた。


「へっ……これが冒険者の夢ってやつだろ? それに国家予算はいいすぎだ」


 その言葉に、全員が無言のまま頷いた。


 ――まだ、〈封魔の金飾り〉と〈獣王の毛皮〉が残っている。


 熱狂に包まれた〈呪刻の大槌〉の競りが終わり、ほんの束の間、会場が静けさを取り戻す。

 だが、それも束の間だった。


『続きましては――〈封魔の金飾り〉。古代帝国・エル=サマール時代の貴族が身に着けていたとされる、極めて貴重な魔除けの装飾品でございます』


 拍子とともに姿を現したのは、金糸と宝玉で編まれた繊細な首飾り。

 だが、ただの装飾品ではない。玉座を囲むように刻まれた古代帝国語と魔封の紋章――それを見た瞬間、会場の空気が一変した。


「古代帝国語……!」


「封印術だ……しかも円環式構造が残ってる!」


「これ、研究に使えれば……魔力干渉の解釈が変わるぞ……!」


 後列に控えていたローブ姿の魔導士たちが、ざわめきを抑えきれず前に詰め寄る。

 魔術学府の面々、教会派の術士、そして異国の賢者まで――皆が喉から手が出るほどの遺物だった。


『スタート価格は五千万ゴルドから!』


「七千五百万!」


 即座に第一声。威圧的な声音に、周囲が息を飲む。名の知れた魔術師団団長だ。


「八千万!」


 次いで声を上げたのは、アカデミア派の初老の魔導教授。手には魔力を測定する宝珠を握っている。


「八千三百万!」


 続いて、教会の大司祭が静かに指を上げる。その顔には一切の笑みがなかった。


「八千五百万!」


「九千万!」


「九千五百万!」


「一億ゴルド!」


 声が交錯するたび、場の熱気は再燃する。誰もが引かない。これはただの宝飾品ではない、禁術への鍵なのだ。


 競りは数分にも感じられる濃密な時間を経て――


『落札です! 一億三千六百万ゴルド! エルデン魔術協会、オルデリック殿のご落札となります!』


 会場に拍手が巻き起こる。競り合いが終わった後も、魔導士たちは興奮気味に何やら議論を交わしていた。



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