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商業ギルドの連携機能を試し終えた俺は、しばらく画面を眺めながら考え込んでいた。
「どこでも売れるってのは便利だけど、売買で儲けるのは無理だな……。けど、狩りの時に荷物を減らせるのはありがたいかも」
実際、素材を抱えながらの長距離移動は地味に体力を奪うし、持ち帰れる量も限られてしまう。今までは、依頼達成のために必要な分を確保するのを目的に、運べる量がその日の最大狩り量を決めていたが、それがその場で換金できるとなれば話は変わってくる。
「たとえば、魔物の素材をその場で売って、運ぶ時間も狩りをできれば、たくさん狩れるし、運べないからと狩るのをあきらめていたのまで狩ってもいいということになる。金もたくさん貯まるし、お金はカード内に貯めておけば安全だ。……高価なアイテムもすぐ買えるようになるかもな」
普通、遠征などする時は、町に戻るまで手元の食料などが尽きないように期間を調整する。物資が尽きそうならそこで狩りは終わりなのだ。でも、狩りをしながら食料など必要な物資が買えるなら、持っていくための労力も制限もいらないしいくらでも長期間の遠征が可能だ。戦いの途中でポーションなどの必要なアイテムを手に入れることもできる。
「となると……何日分でも水、食糧、狩場で使う回復ポーションや矢の補充もできるってことか!」
今までは、ポーションの残量や矢の本数を気にしながら狩りをしていた。だが、商業ギルド連携の機能を活用すれば、戦いながら補充できる。つまり、狩場に長く滞在できるってわけだ。
「これは結構でかいんじゃないか?」
さらに考えを進める。もし、俺がパーティ内でアイテム管理を担当すれば、仲間の負担を減らすこともできる。弓使いの有紗や沙耶にとっては、矢の補充がいつでもできるのは大きなメリットだろうし、純子や明にとっても、必要な回復アイテムが即座に手に入るなら安心感が増す。
「俺が“物流係”になれば、パーティ全体の効率が上がるんじゃね?」
戦闘の最中に回復ポーションを渡したり、狩りの途中で補充ができたりすれば、今までよりずっとスムーズに戦える。特に、ダンジョン探索や長期の狩りでその価値はさらに大きくなるだろう。
「よし、次の狩りで試してみるか」
考えがまとまり、俺は眠る前に簡単な計画を立てた。まずは、次のクエストでどれだけ機能を活用できるか確かめる。その結果次第で、どんなアイテムをストックしておけばいいのか、どのタイミングで売買すればいいのか、より効率的な方法を考えていこう。
「意外と、ただ戦うだけじゃなくて、こういう能力も大事なのかもな」
俺は満足感とこれでみんなの役に立てると期待を膨らませ、明日に備えてゆっくりと目を閉じた——。
翌日、集合場所に集まった仲間達に俺は昨日得た能力を説明した。
「『お取り寄せ』に、『買い取り』だって? それじゃあもう運ばなくっても良いのかよ」
明が目を輝かせる。
「それはありがてーなあ。その分たくさん狩れるってものだろう? 昨日見逃した群れの残りみたいなパターンの時、見逃す必要がないってわけだよな」
「そういうこと」
「依頼完了分は運んでもらわないと、ギルドランクが上がらないわよ」
純子の鋭い指摘に明が眉を寄せる。
「まあ、その分だけ我慢して運ぶしかねーか」
有頂天だった明のテンションが幾分下がった。
「『お取り寄せ』でアイテムを補充ねー?」
純子が首を傾げる。俺は仲間たちに、商業ギルドの機能を活用して戦闘の最中でもアイテムを補充できることを説明した。
「つまり、戦闘で怪我してポーションが尽きても、俺がすぐに補充できるってことさ。矢だって減ったらすぐ買えるし、飯も現地調達できる」
「すごい! それってめっちゃ便利じゃない?」
沙耶が目を輝かせる。弓使いにとって矢の残量は死活問題だから、彼女たちにとっても嬉しい話のはずだ。
「運ぶ物が減るのはいいんだけど……でもさ、それって戦闘中に買う暇あるの?」
明も鋭い指摘を入れてくる。確かに、敵の攻撃を避けながらアイテムを管理するのは簡単じゃない。
「戦闘が始まる前に必要そうなアイテムをストックしておくだけでも一日の狩りの量は相当増えると思うよ。無理すれば戦闘中でもなんとかなるかもしれないし。それはやってみなきゃ、分かんないけど」
「なるほどね。とりあえず、矢が尽きる心配はねーってわけだ」
明が納得し、有紗が微笑む。少しずつ、新しい戦い方の形が見えてきた。
「じゃあ、さっそく試してみよう!」
俺たちはギルドを出発し、狩場へと向かった。
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