第95話
朝食前の簡単な鍛錬を終えると、2人は専属宿泊施設にある
食堂へと入って行った
その食堂は広い空間だ
食堂の中には大きな暖炉もあり、薪が燃えてパチパチという
音を立てていた
中央に木製の長いテーブルが置かれ、壁際に幾つかの丸椅子が
設置されている
床には赤い絨毯が敷かれていていた
内部は拡張されているためか、300人規模の冒険者がいつでも快適に
食事できるよう広々としている
奥の壁際には厨房が備え付けられており専属の料理人達が調理をしているのか、
食欲を刺激する匂いが漂ってきていた
また中央付近にはカウンターがあり、そこから好きな料理を取って食べる
仕組みとなっている
食堂内ではまだ早い時間にも関わらず、募集に応じで集まった複数の
冒険者達が既に食事をしていた
2人の姿を見たそれぞれの冒険者は、手をあげたり会釈をしたりして
挨拶してくる
中には軽く手をあげる程度で済ませる冒険者もいた
カーリンもハインツも、それぞれ手を振って応えつつ、空いている
席へと座る
「朝ごはんもうすぐできるから」
2人に声をかけてきたのは、少し幼さを残した少女の
貌をした獣人女給だ
頭に猫耳があって、腰下からは尻尾が見える
茶色い髪を後ろで束ねて、前髪に少し掛かる程度の長さだ
「ああ、ありがとう」
ハインツが驚きつつも答えた
「席で待っててねー」
獣人女給はそういうと厨房に戻っていった
暫くすると、2人分の朝食を持って来た
肉と野菜の炒め物 目玉焼き 黒パン スープ デザートの果物、
そして飲み物が乗せられたトレイが運ばれて来た
どれも美味しそうに見える
その光景に思わず、ハインツとカーリンは
唾を飲み込んだ
これほどの質の良い食事は、一般冒険者では
到底手が届かない
また専属パーティーの待遇が、いかに優れているかを思い知る
食べ始めると、 肉は柔らかく、とてもジューシーで口の中で
ホロリと溶ける
香辛料が利いており、舌にピリッとした刺激を感じた
炒められた玉葱やニンジンは甘く、噛むとシャキっとした
歯ごたえがある
そこに甘味と辛味のあるタレが絡まり、絶妙な
味わいになっている
「美味いな・・・」
ハインツが呟くと、同じくカーリンが頷いた
「 これが『冒険者ギルド』専属パーティー特権ってやつか。
しかし、本当にこの辺境ギルドには冒険者が居ないんだな・・・
これが他のギルド支部だと朝から、掲示板に張り出された依頼書に
冒険者が殺到してるもんだぞ」
カーリンは周りを見渡しつつ、黒パンを咀嚼する
「ああ、確かにな」
ハインツはスープを掬いながら相槌を打つ
カーリンが言った通り辺境と迷宮都市などの冒険者ギルドとは
雲泥の差が在るのだ
だからこそ この待遇は当たり前だと思ってはいけない
ハインツは改めてそう思った




