第94話
「辺境なんで最悪、馬小屋で寝泊まりかと覚悟していたがまさか
専属宿泊施設があるとは。
しかも風呂まで付いてるなんて、本当に至れり尽くせりだな」
カーリンが何処か嬉しそうに声で言いながら、着替えを入れた
鞄を手にしている。
「これが普通の宿なら、食事も自炊になるだろうしな。
宿泊料金も高くつく。
それに専属宿泊施設だと、食事も全て用意されてるとの事だからな。
まさに冒険者にとっては願ったり叶ったりの宿というわけだ」
ハインツも荷物を手にしながら上機嫌に答えた。
浴場は大理石で出来ており、その表面にはいくつもの窪みがありそこから
お湯が注がれていた
底に魔法陣が描かれてあり、そこを通る事でお湯を沸かせる
仕掛けになっていた
「 『サブマス』からは『最低限の施設があるぐらいさ』とか言っていたが、
ここまで充実しているとは思ってなかったな。
訓練場の広さは予想以上だったし、訓練用の武器や防具は
使い放題だい・・・
これで文句を言う方がおかしいか」
カーリンが訓練場を見回しながら呟く
魔境を主に活動している冒険者達は、下手をすると丸一日、飲まず食わずの
徹夜の時もある
そんな彼らが最初に求めるのは、やはり空腹を満たす食事であり
喉を潤す飲み物だ
しかし、賑やかな酒場にも営業時間外というものは存在するため
朝も昼もなく夜だけ営業している酒場などはない
朝方、陽が高く昇る前辺りから店を開き、昼前から夕方過ぎまでが
昼食時の営業時間で、夜は日が落ちてからの開店時間となる
営業時間以外な時は座して待つより他なく、仕方なく眠るしかない
だが、『冒険者ギルド』専属パーティー 『冒険者ギルド」専属冒険者
『クラン』は違う
専属パーティーや専属冒険者となれば、『冒険者ギルド支部』直営飲食店を
利用することが許される
食事は無料で、飲み放題食べ放題。
そして訓練場での武具の訓練や魔法による訓練なども
無料で受ける事が出来る
また『クラン』となれば規模によるが専属料理人を雇う事も出来るし、
専属の鍛冶師を抱える事も可能だ
ただし、その待遇に見合うだけの義務が伴うが・・・。
「専任浴場については、中心メンバーや募集で集まった300人の冒険者達も
衝撃を受けていたな。
普通は川などでの水浴びか、桶に汲んだ水を頭から被って
汚れを落とすのが一般的だ
まさかお湯に浸かれるとは思ってもいなかっただろう。
タルコットなんか『おいら、このパーティーに入れて良かった・・』
と泣いていたぞ」
ハインツがしみじみと話すのを聞いて、カーリンは可笑しそうに笑う
一般冒険者は街にある安い宿に泊まり、旨くもない食事をして安酒飲み、
たまに娼館にへ行っては金を無駄遣いをするのが
当たり前の日常だ
それに比べたら専属宿泊施設というのは、まさに
天国そのものではないか。
しかも、風呂付ときている。
「その反応は募集で集まった連中も似たようなものだったぞ。
だが、この恵まれた環境に関して礼を言うのは俺達もだ
新人とは思えないほど実力を秘めた新メンバー達が加入してくれたからこそ、
例え辺境でも「冒険者ギルド支部」専属パーティーとして取り
立ててもらったんだからな」
カーリンがそう言うと、ハインツは深く肯く




