第87話
周囲がざわめく中、ベイセルが咳払いをして場を沈めた
「あー・・・次の姉ちゃんらは?」
ベイセルが促し、それにつられるように他の冒険者達が視線を向け直す
「キャプシーヌです。私は調剤師としてやっています」
肩まである金髪に緑の瞳の女性が一歩前に出て軽く会釈しながら名乗った
彼女は治癒術師が纏う白いローブを纏っている
だが、彼女が手にしている物は杖ではなく大きな金属製の薬瓶だ
まるで錬金術師の使うような大きさで、とても彼女が扱えるような
代物には見えないため、それを察した何人かの冒険者が
首を傾げていた
「革細工職人のイングリッドよ」
健康的な褐色の肌に整った貌立ちの女性が続いて名乗りを上げる
彼女は茶色い外套を着ており、手には手袋をつけている
身に着けている防具が胸当てと籠手、脛当のみという極めて軽装だ
その恰好は、見る者に彼女の印象を快活なものにした
名乗り出た2人に対して、これまた数人の冒険者達が反応して
少しざわつき始め言葉を漏らす
「キャプシーヌ・・・まさか『気品溢れる淑女』なのか」
その言葉を聞き取った金髪に緑の瞳の女性は、笑みを浮かべた
「イングリッド・・・あの嬢ちゃんはまさか『月神の戦乙女』か?」
健康的な褐色の肌に整った貌立ちの女性に対しての反応も似たようなものだ
だが、それらの反応は少数で大多数の冒険者は少し困惑していた
それは ベイセルも同じなため少し面倒くさそうな表情を浮かべている
辺境から出る事もなく暮らしていれば、都市で生きる冒険者の事情には
疎くなるのは当然の事だろう
特にある程度の情報や噂も入ってくるのは、大都市やそれに近い
街だけなのだから
そして、ベイセルとしてもそんな事をいちいち気にしている暇もない
ベイセルは、直ぐに気を取り直して説明を続ける
「今、手を挙げてくれたおっちゃんに、兄ちゃんと姉ちゃんは生産系?
この辺境で冒険者稼業を続けたいなら無理強いは出来ないが、できれば
協力して欲しい
武具以外にも、日常生活で使われる金属製品や道具類も辺境のここでは
需要が高いんだ」
ベイセルが挙手した冒険者達に、視線を向けながら尋ねる
「俺の本業は『鍛冶師』なんだ
むろん冒険者として武器は扱えるが、ちびっこ先生の言った事は
理解できたぜ
要は俺に冒険者としてではなく、『鍛冶師』として必要な素材を集めて
需要が高い金属製品や道具類を作って欲しいってことだろ?」
そう言って金髪で碧眼で口髭を生やしたアマンシオがまず口を開いた
アマンシオの言葉を聞いた、幾人かの冒険者は思わず生唾を呑み込んだ
彼の言葉に込められた意味が理解できてしまったからだ
もし『魔王の鍛冶師』と呼ばれるほどの凄腕鍛冶師ならば、彼が作る金属製品や
道具類は確かに冒険者にとっては貴重な存在になるはずだ
それがたとえ、下級の冒険者であったとしてもだ
「俺は旅から旅をしながら武器修理や防具の修理をしてきたが、今はここで落ち着いて
生活したいと思っている」
続いて言葉を発したのは鋭い眼つきをしたガウルテリオという名の冒険者だ
表情には疲れが見えており長い間を旅していた事が窺えた
ガウルテリオという名の冒険者の噂などを知っており、騒いでいた少数の冒険者達も
思わず生唾を呑んでいる




