第86話
すると、複数の冒険者が徐に手を挙げた
「ん、何だ?
そこのおっちゃんに、兄ちゃんと姉ちゃん?」
ベイセルが手を上げた複数の冒険者に視線を向けて言った
手をあげた冒険者達はお互いの顔を見合わせると、 代表するように
金髪で碧眼で口髭を生やした冒険者がベイセルの方に身体を向けた
「鍛冶師だ。名はアマンシオ」
その言葉を聞くなり、複数の冒険者がざわついた。
「・・・まさかあの『魔王の鍛冶師』か」
誰かが呟くように声を出した
それも当然の事だろう。
その男は冒険者や鍛冶師の間では、それなりに有名だったからだ
声に釣られた幾人かの冒険者達の視線もベイセルから声の主へと向けられる。
「俺は武具職人。ガウルテリオだ」
続いて鋭い眼つきをした冒険者がニヤリと笑いつつ名乗った
その名を聞いた、これまたさらに少数の冒険者達が騒めく
それも仕方ないだろう。
「ガウルテリオ・・・? あの『知者殺し』か」
騒めていた冒険者の1人が驚いたように呟く
その男の名も、ある特定の地域では一部の冒険者の中では知らぬ者がいない
ほどの有名な職人として かなり名が知れ渡っている
「研ぎ師のジヌディーヌよ」
それにつられる様にして、髪と瞳が蒼色の風貌の女性冒険者が、名乗りを
上げた
彼女の美しさにか、はたまた彼女が着ている装備の高価さにか
どちらかは分からないが周囲の冒険者達が息を呑む
だが、彼女にとってこの反応は見慣れたものらしく 全く気にした様子も無い
息を吞んでいた冒険者達の中に、別の意味で息を呑んだ冒険者が
幾人もいたようだ
「 『境界を支配する魔女』だと・・・」
別の意味で息を呑んだ冒険者が、信じられない物を見たかのように眼を
開いて呟く
「なあ、そこのあんた、あの別嬪さんの事知っているのか?」
そう小声で尋ねたのは、ネコが二足歩行したようなフェルプール族の
冒険者だった
「俺らは同じ東部から募集にした組なんだが、もし『本物』ならあっちでは
そこそこ名の通った有名な研ぎ師だ。
何せ普段は自分の工房に籠ってるから滅多に表には出てこなかったからな」
金髪を乱雑に切り分けた短髪の冒険者が驚きの表情を浮かべつつ小声で応える
「付与術師のランベルト」
灰金髪の青年が静かに名乗りを続けて上げる
その青年の容姿は整っていて、 どこか女性的な顔立ちをしているが、声や
体つきは男性のものだ
彼の纏う空気は、どことなく知的な雰囲気を感じさせる
それは何処となく冒険者ではなく研究者を思わせた
「あの銀髪青年・・・今、ランベルトって名乗ったよな?」
付与術師という職がそれほど珍しい職でもないためなのかざわめきは
それほどありはしなかったが、それでも
2人程の冒険者が驚愕の表情で囁き合っていた
その近くにいた幾人かの冒険者が、その反応が気になったのか
小声を漏らした2人に近寄っていく
「あの若いのを知っているのか?」
獣性を感じる強面の冒険者が、興味深そうに訊ねた
訊ねられた2人の冒険者は、一瞬戸惑いを見せたが少し緊張気味に頷く
「俺達が知っている人物と同一なら、ただの付与術師じゃねえ」
そう小声で1人の冒険者が短く応える
「俺達がいた南部で『創造の槌』とか言う『クラン』の団長のはずだ」
その声につられるように、もう1人の冒険者が真剣な表情を浮かべつつ
小声で応える
「 付与術師職で『クラン』団長をやってて、さらに冒険者ランクも『白金』級
『ただの付与術師』ではないのは――『近代付与術師』じゃなく数少ない
『古代付与術師』だからだ」
そう小声でもう一人の冒険者が返すと、獣性を感じる強面の冒険者は
少し驚いた表情を浮かべた




