第82話
「ん? そこにいるのはちびっこ先生じゃないか!
ついにロージアン領兵となる決意を固めたんだね」
ガルフォードがベイセルの姿を見て、嬉しそうな声で話し掛けていた
「そんなわきゃないよ! ガルフォードのおっちゃん
俺はハインツの兄ちゃんや300人の冒険者に、レクチャーするために
同行しているんだよ」
ベイセルがそう言って首を横に振ると、ガルフォードは残念そうに
肩を落とした
その二人のやり取りに、ハインツは思わず笑いがこみ上げてくるのを感じたが、
なんとか我慢することができた
「はっはっは、ガルフォードさん
ちびっこ先生はロージアン「冒険者ギルド」支部が予約いれてるので、
妙な引き抜きは「ギルドマスター」の了解を得ないと
難しいかもしれませんぜ」
アルヴィンが笑いを堪えながら、ガルフォードに声をかけた
「ギルド職員も冒険者稼業もするつもりは無いと何度も言ってるからな!
アルヴィンの兄ちゃん」
ベイセルがすかさず反論した
その間にも幾人かのロージアン兵は、300人の冒険者に対して簡単な
検問をしている
指名手配書を見比べて、御尋ね者ではないか確認しているようだ
特に不満を口にする冒険者はおらず、幾つかの質問にも
素直に応えている
中には軽い冗談らしいものを言って、検問をしている
ロージアン兵を笑わせてもいた
その様子を見ていたガルフォードは改めて、「サブ・ギルドマスター」
アルヴィンが案内してきた集団が一癖も二癖もある冒険者達だと
確信した
「あと規則ですのでアルヴィン殿の「サブ・ギルドマスター」証明認識票を
ご提示いただければ完璧です」
ガルフォードがアルヴィンの胸元にあるプレートを指し示しながら
説明をした
「ちびっこ先生ー 貌パスは無理っぽいみたいだー」
アルヴィンはお道化る様な口調で言いつつ、胸元のプレートを
手に取りそのまま無造作に外し差し出した
「何処の街で貌パスで入れるんだよ!!」
ベイセルが、アルヴィンの言葉に反応してツッコミを入れると
アルヴィンとハインツ、そしてガルフォードが吹き出していた
そのやりとりに、 ベイセル達の様子を遠巻きに見ていた
冒険者達からも自然と笑みがこぼれていた
小さなプレートを受け取ったガルフォードは、形式で確認すると
アルヴィンに何事も無く返した
「こちらも問題ありません
それでは冒険者の皆様、ようこそ! 我が街へ!」
ガルフォードはそう言うと、右手を軽く掲げ敬礼をした
そして歓迎の言葉と共に城門が開け放たれた
首都内部に入るとメインストリート沿いは、宿場町と違ってとにかく
建物が密集していた
道幅は5メートル程あり、その両脇には商店が建ち並んでいる
大通りから路地へ抜ける裏通りには小さな露店も見受けられた
小さな露店や商店では様々な商品を取り扱っているのが目につく
建物は石造りや木造の建物が一定間隔ごと建てられており、建物の外観の
統一性は全く無く、屋根の色や壁の色も異なる為、統一的な町並みとは
ほど遠い印象を受けた
だが、それらの建物も良く見ると、その隙間を埋め尽くすように
大小様々な大きさの樹木が生えているのが分かる
それはこの都市の住民が、都市内の木々を有効活用しているという事を
如実に表しているように思えた
暗くなりつつある夕方だが、街灯や店の軒先に吊るされた
ランタンのお陰で、 視界の確保に支障はなかった
城門の裏手にはロージアン兵の詰所らしき木の小屋が
幾つか見える
交代のために出てきたと思われるロージアン兵が城壁の内側で
慌ただしく動いているのが遠目でも分かった
首都の街並みを見て少し興奮気味なのは、タルコットとカルローラだ
二人は、目を輝かせていた




