第80話
街道を進み、太陽が傾き始めた頃 一行はようやく野営しても問題ない
場所へとたどり着いた
そこは河川の近くであり、近くに森もあるため水に困る事もない
さらに、周囲には木々が立ち並び、見通しも悪く、野営地としては最適の
場所でもあった
ハインツは周囲を見渡すと、街道に近い場所で焚き火を始める
他の皆も同様に手際よく準備を進めていく
「ハインツの兄ちゃん、この辺りの夜間はそんなにヤバいのは出没しないと
思うけど、冒険者のおっちゃん達には念のため周囲の警戒と見張りは
頼んどいた方が良いぞ」
そうベイセルがハインツへと告げる
確かにベイセルの言う通り、ここは比較的安全な場所である
「ゴブリンといった比較的低級の魔物に対してだろ?
大丈夫だ。いざとなれば、俺達だって戦える」
ハインツは自信満々にベイセルに告げる
「あー・・・それもあるんだが夜間の大平原では、幾つか厄介な
魔物が度々出現するんだ」
ベイセルが苦笑しながら言葉を返す
「厄介? それはアンデッドとかなのか?」
ハインツはそう尋ねる
アンデット系の魔物は迷宮でも出現するため、この世界ではそれほど
珍しい存在ではない
「分類だとアンデット系なんだけど、かなり上位に属すると思う
詳しくは首都で詳しくレクチャーする事になるけど・・・
今は2つの厄介な魔物について伝えとくよ」
ベイセルが真剣な表情でハインツに伝える
そんな彼の様子に、他のメンバーも準備の手を止めて耳を傾ける
「聞かせてくれ」
ハインツがベイセルに視線を向ける 他のメンバーも同様だ
ベイセルは一度小さく咳払いをすると、語り始める
「まずその2つの厄介な魔物については、ロージアン領内に住んでいる
領民なら大体は名前は知っていると思う
遭遇すれば確実に命を奪われるから、逃げ延びた数は少ない
そいつは 街道付近に突如として発生する夜霧と共に出現し、まるで影のように
全身が黒ずくめの騎兵の姿なんだ
貌はフードに隠れていてわからない
だけど、体躯からして男性だろうと言われている
そいつの得物は大平原の場所によってマチマチなんだ。
この辺りだと大剣らしいけど、首都付近では斧槍持ちだったり、開拓予定地
付近だと フレイルを持っていたそうだ
・・・そして最も恐ろしいのは、中央原野では2体同時で出現するらしいんだ。
じいさんの蔵書やロージアン領内に住む俺達はこう呼んでいる―――
『夜霧の奇兵』」
ベイセルはそこまで話すと一息つく ハインツと他のメンバーは
言葉が出ないようで黙って聞いている
「もう一つの厄介な魔物というのは、何だ?」
沈黙を破り、ハインツがベイセルに尋ねた 他のメンバーも聞きたそうな
表情をしている
ベイセルはハインツに向き直ると、ゆっくりとした口調で話し出す
まるで、その魔物の姿を思い浮かべながら話しているようにも見えた
「もう一つの厄介な魔物は―――大型霊体の魔物だ
じいさんの蔵書には『死』を名に冠した巨大な死神のような姿をしていると
書いてあった
ロージアン領内に住む俺達は、そいつの事を―――『闇夜の追跡者』と呼んでる
俺は死んだじいさんと遠出した時、一度だけ遠くから見た事があるんだ・・・
黒を基調にした傷んだローブを全身に纏い、右手には大鎌、左手には長い
年月を経たせいか、風化と劣化が激しく朽ち果てた
蒼白き火を灯したランタンを持ってたよ
離れていても巨大で威圧感のある存在感を放っていたな
それに、その大鎌で刈られるとどんな防具で身を護っていても、ただの
一撃で瞬時に生命力を奪われ死に至らしめるとか
また、手に持っているランタンが光ると睡眠効果が発動するらしい
・・・そんな魔物が夜間の大平原で神出鬼没に現れるんだ 」
ベイセルは真剣な表情で話していたが、最後の方は少し恐怖を感じているのか
震えていた
そんなベイセルの様子を、ハインツ達も真剣な表情で見つめる
その空気は重く、誰もが口を閉ざしている
やがて、ハインツは深く深呼吸をすると再び口を開く
「わかった。夜間は周囲に気を配る事にする」
ベイセルの忠告を聞いたハインツは、そう口にした




