第78話
「詳しい事は、あのちびっこ先生がレクチャーしてくれる
他所から来たはがりでまだわからないと思うが、知識に関しては
ちびっこ先生は間違いなく中央冒険者ギルド職員でも
舌を巻くよ」
アルヴィンは、ちびっ子先生の愛称の少年が居なくなった事を
確認しながらハインツに説明した
語る内容から、どうやらちびっ子先生という愛称の少年とは、相当
優秀な人物らしい
これが他所ならそれほど優秀なら妬みなどを買われる事もあるだろうが、ここでは
どうやらそういう事は無い様だった
店で食事をしているちびっこ先生と同年代の子供達も、一挙一動を好意的に
注目している事から考えても、ちびっこ先生の愛称の少年が村の中で
慕われている事がわかる
それは大人達もだ
間違いなく他所なら、気味悪がれたりするのは間違いない
しかし、食事をしている大人達からの様子を見てもちびっこ先生の愛称の
少年には、全面的な信頼を寄せているのが伝わってくる
「まあ、「冒険者ギルドと地域住民合同訓練」の選抜されたら俺達の中から
誰かが首都にいく事にはなるし・・・
その時はちびっこ先生と「大冒険者ごっこ」だ!」
食事をしている子供の1人が、楽しそうな笑顔でそう叫んだ
「おい、その言い方だと本当に「大冒険者ごっこ」になるじゃないか・・・
首都に集まるのは各集落から選抜された、同年代もいるんだぞ」
少し強面な貌の子供が呆れた様子で言葉を紡いだ
「全く・・・そんな事だとちびっこ先生に怒られるぞ」
そう言って別の子供が苦笑を浮かべつつ言う
「えぇーいいじゃんか
ちびっこ先生と一緒の方が楽しいぜ」
寝癖がついている子供が、不満げな表情で言った
「ちびっこ先生が首都に行ったら、「大冒険者ごっこ」まで逢えなくなるのかー」
別の子供が悲しげな声で呟いた
「なに、「大冒険者ごっこ」が終わったら、何時もの様にちびっこ先生は
ここに帰って来るさ 今までもそうだったんだし」
子供の1人が、明るい口調で子供に話しかけた
この店の常連なのだろうか?
どうやらこの店は常連客が多いらしく、食事している他の大人達が楽しげな
笑いを浮かべつつ子供達の会話に耳を傾けていた
ハインツはその様子を見て、心の中で小さく微笑む
どうやら子供達は、明日首都に行くであろう ちびっこ先生の愛称の少年の事を
心配して元気付けようとしているのがわかったからだ
出発する朝がやって来た
早朝、宿場町の広場には準備を終えた300人の冒険者達で
溢れかえっていた
どうやら昨晩の内にそれぞれ準備をしていたようだ
例のちびっこ先生の愛称の少年も、出発の見送りの子供達に
囲まれていた
皆、これから旅立つ仲間を暖かく見送っている
「道中お気をつけて」
ハインツに挨拶していたのは、宿場町の村長だった
「こちらこそ今後ともよろしくお願いします」
お互いに頭を下げ、握手をかわす
身長が百八十cmほどで体格の良い壮年の男性は村長だけあって、村人達の
信頼と尊敬を集めている事がわかる
また、ハインツが注目したのは村長の指先だ
よく見ると汚れて傷跡が多いが、その指先は爪が短く切りそろえられ
綺麗だった
冒険者稼業を続けている者でも、これほど爪を短く手入れする人は
まずいない
ハインツは、この村長は農夫でありながらも剣技の心得があるのだろうと
思った
(これは負けていられないな)
そんな事を考えつつ、ハインツは挨拶を返す




