第67話
「任せろ」
そう静かに応えたのは、身長の高い人外生物3匹に立ち塞がるように
大太刀を腰に差したカモサワだった
募集に応じて集まった冒険者達にしては珍しい人種だ
なにせ、西のペリアーレ大陸からこのセレネギル大陸まで
遥々やって来たのだ
傭兵としての実戦経験はあるが、冒険者になってまだ日が浅いと
募集に応じて集まった冒険者達の幾人との会話で分かった
そんなカモサワが素人眼でも業物と思われる大太刀を構えて、
地面を蹴った
その姿は、まるで黒い疾風だった
そして瞬く間に、身長の高い人外生物に肉薄した
人外生物は、即座に爪による斬撃を放つ
だが、カモサワはその一撃を軽く避けて、溜めを作るような
姿勢を取る
次の瞬間、強烈な殺意と共に稲妻の速度をもって
空間を薙いだ。
それはあまりにも滑らかな動きで、熟練された剣術士の
動きのようだった
刹那、身長の高い人外生物の頭部と胴体が切り離された
残された頭部と切り離された身体が、ゆっくりと倒れていった
同時に胴体の切断面から緑色の液体が吹き出し、飛び散った液体が
床に飛び散ると、そこを中心に溶けるようにして蒸発した
一瞬の出来事に他の人外生物達も、他の冒険者達も何が起きたのか
理解できなかったようだ
カモサワは、2匹目の身長の高い人外生物の隙を見逃さず間合いに入り込み、
そのまま二連撃の斬撃を繰り出した
その剣閃は、まさに目にも止まらぬ速さだった
斬撃は人外生物の強固な皮膚を容易に切り裂き、そして断末魔の
悲鳴すら上げさせなかった
最後の身長の高い人外生物は敏速な身のこなしと鋭い牙や爪を使って、
なんとかカモサワの攻撃を回避しようとしたが、その全てを避けられる
はずもなく、無残にも両足が斬り落とされた
しかし、人外生物は諦めることなく両腕でカモサワの
胴に掴みかかろうと 襲い掛かり人外生物の特徴の
口の中にあるもう一つの小さな口で 噛みつこうとした
その時、人外生物の貌らしき部分に横から放たれた
弓矢が突き刺さった
人外生物のその攻撃を妨害するように矢が放たれた方向を
カモサワが一瞥すると、そこには長弓を構えた青髪、黒縁の丸い眼鏡をかけ
茶色のフィールドワーク用の作業服を着用している冒険者の姿があった
その冒険者は続けざまに今度は、5本の矢を一度に放っていく
それらは精密かつ的確に、身長の高い人外生物に次々と刺さり、致命傷を
与えていく
カモサワが、その冒険者の方に意識を向けた時、すでに身長の
高い人外生物は耳障りな金切声の断末魔を発して絶命していた
前衛職の冒険者達は呆気に取られていた
「確かあのカモサワって冒険者は、冒険者稼業は初めてだとか
言っていたよな・・・」
前衛職冒険者の1人がそう呟く
「ああ、俺も少し話だが確かにそう言っていたぞ」
別の前衛職冒険者の1人がそれに短く応える
それを聞いた近接戦闘職の冒険者達は、一様に貌を見合わせた
そして彼等の表情は、次第に驚愕に染まっていった
「なあ・・・ひょっとしてカモサワを援護した遠距離職の冒険者―――
『影の冒険家』じゃないのか?」
何か慄く様な声で近接戦闘職冒険者の1人が、震える指を差す
その先には、青髪、黒縁の丸い眼鏡をかけ茶色のフィールドワーク用の
作業服を着用している冒険者の姿があった
「・・・そんな凄腕の「仇名」付き冒険者なんか今頃、大騒動の
迷宮に潜り込んでいるに・・・」
と、別の前衛職冒険者の1人があり得ない表情を浮かべつつ
言葉を途中まで発していたが、問題の冒険者の姿を見て
まるで幽霊でも見たかのような貌で固まり、その冒険者を注視した
「――何はともあれ、まだ戦闘は継続しているんだっ!!
俺達近接戦闘職は、掻い潜ってくる人外生物どもを一体でも
遠距離職には近付けさせるなっ!!」
大剣でもあり槍でもある武器を構えたドワーフ族種族の冒険者が、叫ぶように
言った
それに応えるかのように、残りの近接戦闘職冒険者も意識を切り替えて
気合の雄叫びを上げる
それからの戦闘は、まさに一方的な戦いだった
その様子をカーリンは身体を硬直させて眺める事しかできなかった
「・・・募集で集まった冒険者達は一体全体、どんな実力を持っているんだ!?」
思わず本音が零れてしまうほどの状況だった




