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奇妙な冒険者  連載版  作者: 大介丸
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第58話

「荷物を死ぬ気で運ぶしかありませんね」

 そう言いながら、ハインツはリュックの中身を確認していた

「それにその怪物達は、夜間が一番活動的で徘徊する

 反面、昼間は大人しく姿を確認する事はあまりない」

「サブ・ギルドマスター」のアルヴィンは説明した

「では、昼間の内に叩いて討伐すれば問題ないのでは?」

 ハインツが声を出そうとし―――――どこか冷めた感じの声で

「サブ・ギルドマスター」アルヴィンに質問を投げかけた

 声の主は、特徴的な鴉を模したであろう外套を身に付けていた

 アトリーサだった


 口元から鼻までもすっぽりとマスクで覆っているため、素顔を

 窺うことはできないが唯一露出している目元は、とても美しい

 まるで人形のように整っ貌貌立ちをしているのが解った

 彼女は自分の事をあまり話そうとはしないが、それでもパーティーでは

 浮くことはなかった

「確か「闇狩人」のアトリーサだっけ・・・? 

 そりゃあ、この2つの巣を叩いて排除できれば多少は、この周辺の

 脅威を取り除けるが、それはリスクを伴う

 俺達だけじゃなく、せっかく募集して集まった冒険者達にも被害が

 出る可能性が高い

 失敗すればロージアンだけじゃなく近隣の集落にもな」

「サブ・ギルドマスター」のアルヴィンは、渋い表情をして

 答えた

 今回の依頼の取りまとめ役は「ロージアン」冒険者ギルドの

「サブ・ギルドマスター」だ

 また、「サブ・ギルドマスター」職だけあり、「ギルドマスター」の

 次に発言力が高く裁量権もある



 確かにロージアンに赴任してから、この2つの怪物の巣については

 冒険者ギルド支部で何度か議題に上がっていた

 だが、いかんせんロージアンには冒険者パーティーや「クラン」はおらず、

 中央の「冒険者ギルド」総本部に冒険者パーティーの派遣を

 要請しても、優先的に割り振られてしまうのは他の迷宮都市や

 辺境地域ばかりだ

 なので、なかなか実行に移す事ができていない

 この2つの巣を潰せば少しは周辺集落の不安も取り除いてやれるが、

 だからといって、安易に許可は出せない

 もし失敗したら、間違いなくロージアンだけじゃなく近隣集落にまで

 怒り狂った怪物の群れが襲ってくるだろう

 そんな事になれば大戦と劣らぬ修羅場となる



「この先は、「サブ・ギルドマスター」殿が言われた通り、見通しの

 悪い森林と悪路が続く。

 万が一、怪物の奇襲を受ければいささか面倒では?

 違いますか」

 次に声を出しつつ、足音すら立てずに近づいてきたのは「忍」職の

 オオシマだった

 彼は、口元を覆う覆面以外は特徴の無い普通の格好をしていた

 その動作は緩やかで静謐だ

 その存在感を消し去る様な無駄のない動きと流れるような動きは、彼の生まれ

 持った才能と努力の賜物だ

 洗練された動作は、どこかしらの流派に属している証拠でもあった

 それは、武人の極致と言ってもいいかもしれない

 だが、彼自身はそれを頑なに隠すかのように振る舞い、それを

 詮索しようとする者はいなかった




「サブ・ギルドマスター」アルヴィンは息を飲み込み、凄まじい衝撃を受けた

 何せ気配も察知もさせずに近づいてきたからだ

 オオシマの口調から察するに、先行して周囲の

 偵察までしてくれていたようだ

 これは、彼が言うように万が一の事態を想定し、周辺の状況を

 確認してくれていたという事でもある

「そこまで見通されるとお見事言うしかない・・・ならば俺も肚を括るか

 幸い募集に応じて集まった冒険者達の中には、凄腕も混じっている」

「サブ・ギルドマスター」アルヴィンは、オオシマの態度に何かを感じたのか、

 思わず頭を掻きながら苦笑した

 そしてしばらくなにごとか沈思黙考し、手が震えるほど握り拳を作って

 貌をあげた



 その時の貌の表情は、今までの何処か気の良い村の若者っぽい貌ではなく、

 まさに「冒険者ギルド」支部「サブ・ギルドマスター」に相応しい

 威厳に満ちた貌になっていた

 この変化にその場に居た者は、一瞬目を見張った

 この切り替えの早さこそ、アルヴィンが辺境の「冒険者ギルド」支部で

「サブ・ギルドマスター」という重要な地位に着いている所以だ

 まだこの時点でハインツ達は知る由はないが、それ故に辺境地域ロージアンの

 民は絶大な信頼を寄せているのだ

「・・・」

 その様子にハインツも、釘付けになっていた冒険者達も

 言葉が出なかった

 唯一「仇名」を持つ冒険者数名は、口唇の右端を僅かに持ち上げて

 笑みを浮かべた

 しかし、それはほんの僅かな間の事で、すぐに普段の落ち着いた表情に

 戻っていた


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