第55話
「アルヴィンさん、この調子で行軍するとロージアンに到着できるのは?」
ハインツは話題を変えるように、「サブ・ギルドマスター」アルヴィンに
声をかけた
「カルローラが「マッピング」で製造した周辺地図を元に安全ルートを使うと、
少し遠回りに迂回しながらになる
けど、順調に進めば・・・五日から十日後には到着できると思うよ」
「サブ・ギルドマスター」アルヴィンはハインツの声に応じて
説明した
「確か直線距離で300キロ程度ですよね? それでも一日10時間くらい
歩けば二日か三日の行軍になりますが・・・」
ハインツは、アルヴィンの説明を聞いて少し疑問を抱いたようだ
本来であれば、一カ月以上かけての長旅になるはずだ
だが、募集で集まった冒険者達のほとんどがどいう訳か熟練の域に達している
冒険者ばかりだった
なので、移動にかかる時間が短縮されているのだ
「ロージアンへ続く街道は、今通っている道の様に舗装などされてなくて
獣道に毛が生えた粗末な道さ
あと幾つかの箇所には、ところどころに怪物の棲処が点在しているから
気を付けないといけないんだ」
「サブ・ギルドマスター」アルヴィンはそう言って、注意を促した
「怪物? 魔物や魔獣じゃなく?」
ハインツは、不思議そうな表情で聞き返した
思い浮かべたのは、魔獣と魔物の区別だった
一般的には、人を襲うような生き物が魔物、動物が変化したものが魔獣と
呼ばれている
だが、怪物という呼称はハインツにとってはあまりなじみのない単語だった
「他の地域や迷宮なんかでは聞き馴染みがない名称だと思うが
ここら辺りでは、二種類の怪物が棲息している
1つは、『浸食魔』という謎に包まれた寄生菌に感染した人間や他種族さ
侵食の毒に蝕まれた人間や他種族は、聴力が発達して身体能力は高くなるが、
その代償として知能や人格を失い、本能の赴くままに他者を襲い始める
侵食の度合が進行すると身体からイバラのような「侵食核」が出現したり、
胞子を撒き散らすようになる
胞子に触れた者は、人間でも他種族でも体内に侵入すると
同じ怪物化する
この『浸食魔』という寄生菌の恐ろしい所は、魔獣や魔物にも感染しては
更に凶暴化させる事だ
ロージアンの周辺地域では、この生物のせいで多くの集落や村が滅ぼされて
いるんだ」
「サブ・ギルドマスター」アルヴィンは、そう説明すると忌々し気に
舌打ちをした
その会話を聞いていた他の冒険者達も同じように表情が険しくなっている
「それでもう1つは?」
ハインツは話の続きを促す ハインツには、その怪物の事を
あまり知りたくはなかった
知れば知るほどに、この世界の魔境の恐ろしさを改めて
実感してしまうからだ




