第54話
魔獣の討伐後に出る血や内臓を鍋に入れて煮たり、そのまま生で齧ったりして
食事する事はよくある事だ
だが、不衛生な環境で雑草とか木の皮を口にするのは非常に危険だ
「 俺がいた「パーティー」なんざ、何でか俺の飯だけか水の様に
冷たいスープに雑草とか木の皮をぶち込まれてたりして、あんまり
良い思い出がねぇなぁ・・・」
一人の冒険者がしみじみと語ると、周囲の冒険者達は
笑い飛ばすべきなのか微妙な表情を浮かべている
「そんな経験があったらトラウマになりそうだよね。私だったら絶対、
二度とパーティーを組まない自信があるよ!」
別の一人が、心底嫌そうに答えた
あちらこちらでは、戸惑いつつも湯気を立てたスープを一口飲んた冒険者が、
思わずうっとりとした表情を見せている
中には今まで碌な食事をしていなかったのであろう、涙を流しながら
スープを食べ続けている冒険者もいた
そんな様々な反応を見せる冒険者達の様子を見て、ハインツとカーリンは改めて
『運搬人』ヴァレーアの実力を再認識した
「・・・ハインツ達は、彼女がメンバーになってから食事には困った事って?」
ハインツの隣にいた「サブ・ギルドマスター」アルヴィンが、食器に注がれている
スープを見つめながら尋ねる
「ヴァレーアのおかけで、迷宮探索での野営は格段に楽をしました」
ハインツは少し自慢げに伝えつつ、食器に注がれているスープを木のスプーンで
掬って口に運ぶ
「 「空間収納」から出立前に仕入れた携帯用炊飯器や食器類、見た目の年齢以上に
手際の良さは熟練の「運搬人」に匹敵する
しかも、調理系技術にも優れているとなれば・・・
まさしくヴァレーアは最優秀な「運搬人」だ」
「サブ・ギルドマスター」アルヴィンが静かに告げる
ハインツは、その感想を聞いて満足そうな笑みを見せた
冒険者の命は短い
だからこそこの世界で生きる冒険者には少しでも快適に過ごして欲しいと
願っている
そのためには、食事のメニューや質も重要になってくるのだ
「あと行軍が予定通りに進んでいるのは、カルローラの「マッピング」の
魔法のおかげでもあるんだよ」
その声が聞こえた所にハインツと「サブ・ギルドマスター」アルヴィンが
視線を向けた
そこには、小柄なエルフ族の少女の姿があった
エルフ特有の長い耳を持っているが、少し短く切り揃えられている
自身の身長より大きな金属製の弓を手に持ち、矢筒を背負っていた
腰まで伸びた癖のない銀色の髪は、肩甲骨あたりで纏められている
肌は健康的な褐色で、その瞳は金色をしている
整った顔立ちは幼さを残しながらも凛々しく、どこか戦士の風格を漂わせていた
「・・・やはりカルローラの「マッピング」技能は凄いと?」
ハインツは、戦士の風格を漂わせている小柄なエルフ族の少女に質問した
「ああ、私の知る限り「斥候職」でもトップクラスだよ
第一、あんな精巧な地図をいとも簡単に制作したりは普通の
「マッピング」では無理
まして、ここは迷宮内部じゃなくて外だからね
それこそ迷宮内の地図ならまだしも、迷宮外で「マッピング」を
発動させた場合、魔力が尽きるまでは発動し続ける可能性があるのに
今の所カルローラにはそんな様子はないし」
小柄なエルフ族の少女は応えた
それを聞いたハインツは、内心で驚愕して言葉を失った
「 カルローラが「マッピング」で製造した周辺地図を確認したが・・・
確かに恐ろしいほど精巧なものだった
だが、あれだけの情報量だと通常の力量では短時間での作成は厳しい
・・・迷宮内での地図作成と比べれば精度は劣る気が」
「サブ・ギルドマスター」アルヴィンも驚いた表情を浮かべつつ呟く
「「マッピング」で製造したその地図に、水場や野営地、土砂崩れで
通行不能な峠道、魔物の棲処など全て細かく記載されているのが精度に劣る?」
小柄なエルフ族の少女が首を傾げつつ尋ねる
「・・・とてつもない冒険者だ。それでまだ新人冒険者とは先が楽しみだ」
「サブ・ギルドマスター」アルヴィンは小さく笑みを見せつつ、そう答えた
ハインツと「サブ・ギルドマスター」アルヴィンに話しかけた
小柄なエルフ族の少女の名はイサドレッド
今回の募集に応じたエルフ族の冒険者だが―――『悪魔の妖精』という
仇名を持つダークエルフと人間の間に生まれた混血児でもある




