第51話
セレネギル大陸で発生した大騒動の余波は、当然の事ながら他の大陸の
冒険者や傭兵達に影響を与えていた
それは、ペリアーレ大陸の国々にも影響があった
ペリアーレ大陸内では、大陸規模の戦乱の火が絶えて久しいが、大陸西方諸国の
一部では戦乱が絶え間なく続き多くの国が滅び、そして復興してを
繰り返していた
その原因の一つは、大陸の中でもっとも勢いのある神聖帝国、法王国、
自由連邦は水面下で熾烈な諜報戦を繰り広げ、小競り合いが
絶えず行われているからだった
また、復興国や途上国はペリアーレ大陸規模の影響力を持つ列強国同士の
対立構造を強かに利用しては思惑を逆手に取り、多額の援助を引き出させていた
そんな各国の中で、ペリアーレ大陸の西方に位置する小国群では
戦乱が絶え間なく続いている
朧、炭尻、鷹朱、上牧津、神木、須佐之男、天鳥、黒羽、白雪、月影、花咲、
雲雀、雷鳴、風切、御剣、神楽、光輝、鏡夜、鈴蘭、紫陽花の14カ国からなる
小国家群は、それぞれ独自の文化や風習を持ちながらも、 大国の庇護を
受けずに独立を保っていた
また幾つかの小国家はペリアーレ大陸からは鎖国政策を敷いており、
それらの国の国民達は他国との交流を殆ど持たないため、 その実態を
知る者は少ない。
ペリアーレ大陸海岸部にある港湾都市の港には多くの船が停泊していた
その船の中にはセレネギル大陸へと向かう屈強な冒険者達を乗せた
帆船の姿もあった
帆船の周囲には、冒険者達の他に港湾都市の警備隊の面々が乗船しており、
彼らは冒険者達の荷物検査を行っていた
そんな彼らを呆れとも言える表情を浮かべて視線を向けている警備隊長が、
冒険者達に向かって言った
「・・・お前さんたち、随分と軽装だな」
冒険者達の恰好は、この辺りでは見慣れない民族衣装のような
服装をしている
そんな彼らの中には、この周辺に住むエルフ族の姿も
見受けられた
「俺達は『傭兵冒険者団』だ
その為に、旅の準備は常に万端だぜ」
と、一人の冒険者が答えた 冒険者のリーダーである男は、
腰に下げた武器を手に取り、それを軽く振って見せた
それはまるで、長年使い込まれた愛刀のように馴染んでいた
それを見た警備隊長は何か心当たりがあったのか、納得したような
表情を浮かべた
「その装備からすると西方方面から来た冒険者達か」
警備隊長の言葉を聞いた、他の冒険者達や警備隊員が
不思議そうな顔をした
帆船に乗り込みセレネギル大陸へ向かおうとしている大多数の冒険者達は、
セレネギル大陸の北方や東部の出身者なのだ
「そうだ、なんせ何年か前にこの『傭兵冒険者団』にいてセレネギル大陸に
渡った奴から情報を得たからな」
そう言って、冒険者のリーダーの男が不敵な笑みを
浮かべながら応えた
「なるほどな、そう言う事なら、道中に気を付けろよ」
警備隊長がそう言うと、荷物検査を終え帆船に乗り込む
冒険者達を見送る
「隊長、セレネギル大陸の騒動後から西方近隣で活動していた傭兵冒険者も、
セレネギル大陸へ向かってますね
大きな戦が無いためか、稼ぎに今みたいな『団』とかパーティーとかですが」
部下の一人が警備隊長に話しかける
彼は、冒険者達から取り上げた武器や装備品を仕分けしながら、先ほどの
冒険者達の話をしていた
それは警備隊長も同じで、彼もまた冒険者達が持ち込んだ装備品や
持ち物を確認していた
「・・・この大陸にいてるよりは、稼げるからな
だが、まぁ、運が悪ければ死ぬ」
警備隊長が冒険者達の装備品を調べながら言った
セレネギル大陸へ向かう帆船に乗る『傭兵冒険者団』やパーティーには、
黒髪、黒い瞳をした冒険者達の姿がちらほらと見えた
その冒険者達は、ペリアーレ大陸西方小国群出身者達だ
彼等はこれから向かう大陸の様子を想像し、武者震いしていた
通常なら物珍しい風貌のため少し注目の的になりやすい冒険者達だが、 今回は
セレネギル大陸へ稼ぎに向かう冒険者達や商人達の姿が多く見られるので、
そこまで 目立つことはなかった
また、セレネギル大陸以外の別の大陸を目指す商船なども見受けられる事も
影響していた
ペリアーレ大陸周辺の海域は比較的穏やかなので、 貿易船以外の客船などの
航行は珍しく、 船乗り達はそれらの船を見ながら、一体どこの国の
船なのか興味津々だった




