第31話
「話を続けていいかしら?
さっきも言ったように、その新人の冒険者が迷宮地図を描いたというのは事実よ
ただし、ここで二人に話すのはそれじゃないわ・・・『アルスター』で登録した新人冒険者にこの冒険者と同等以上の素質を持つ新人冒険者が7人もいるのよ」
眼帯のギルドマスターと精悍なギルドマスターは、さすがに驚きを隠せなかった
「 それぞれの『職』は違うのか?」
眼帯のギルドマスターが確認のために問いかけると、『アルスター』の「ギルドマスター」である彼女はうなずいた
「 『回復士』 『拳闘士』 『闇狩人』 『侍』 『忍』 『騎士』・・・というより『君主』
『空間収納』保持者の『運搬人』という具合の新人冒険者達がいてね この新人冒険者全員が迷宮を探索する実力があり、そしてその殆どが・・・
私のギルド内の訓練教官達が最高の潜在能力を持っていると評価しているわ」
眼帯のギルドマスターが興味深げに、精悍なギルドマスターは貌を若干引きつらせた
「『侍』 『忍』という『職』は聞かないが、それはつまり
この大陸出身者じゃなく?」
眼帯のギルドマスターが確認するように尋ねる
「ペリアーレ大陸の出身者よ
遠路はるばるこの大陸にやってきて冒険者登録したわ
『職』についても、あちらの『冒険者ギルド』総本部に問い合わせたんだけど、どうやらあの大陸の西方諸国が発祥らしいのよ
ただ、西方諸国出身冒険者が滅多に居ないらしく、『侍』『忍』という
職も詳しくわかってはいないみたいなのよ
その2人を担当した訓練教官は、2人の実力をこう表現しているわ
『おそらく、この大陸にいるどの冒険者も歯が立たないでしょう』・・・だってさ」
眼帯のギルドマスターと精悍な「ギルドマスター」の表情には、驚愕が
浮かんでいた
それほどの実力者ならペリアーレ大陸を出なくても、十分に
優遇されそうなものだからだ
しかし、なぜわざわざ過酷極まりない航海をしてこの大陸にやってきたのか
疑問だった
「そんなに優秀なら、この大陸内での争奪戦ってレベルじゃなくなるぞ!?
下手をすれば、西方諸国出身冒険者を取り入れようと望んでいるペリアーレ大陸の
全ギルドを敵に回す事になる!」
精悍な「ギルドマスター」が呻く様に言った
だが、眼帯の「ギルドマスター」は何事かを考え込み、納得したような
貌になった
そして、精悍な「ギルドマスター」に視線を向けた
「その心配はないんじゃないかな
彼女はそんな下手は打たない・・・もうすでにペリアーレ大陸の
『冒険者ギルド』総本部には仁義は通しているみたいだ」
眼帯の「ギルドマスター」の言葉に、精悍な「ギルドマスター」は眉間にしわを
寄せて首を振った
「その辺は抜かりはなく、仁義は通したわ
私だって他のギルド支部の縄張りを荒して、わざわざ敵対なんて
したくないわよ
しかも、別大陸からの新人冒険者となれば尚更ね・・・それに凄い資質の
新人があと4人も私の支部で登録してるのよ? 」
『アルスター』の「ギルドマスター」の彼女はそう言って
肩をすくめた
眼帯の「ギルドマスター」は険しい表情を浮かべ、精悍な「ギルドマスター」は
生唾を飲み込んだ
それ程の新人冒険者を抱えれば、そのギルド支部の名声が上がり、他ギルドとの
競争にも有利にはなる
だが、その分、各ギルド支部や『クラン』などの争奪戦は熾烈を
極める事となる
「・・・その『職』でちょい気になったのがあるんだが、『騎士』というより『君主』って何だ?
『空間収納』保持者の『運搬人』という希少者より、そっちの方が
聞き覚えがないぞ」
眼帯の「ギルドマスター」が疑問を口にする
「そう判断するしかないほど、素質が優れているのよ
本人は『騎士』職と登録時に申告しているけど、戦闘技術も剣術だけじゃなく
槍術、魔法剣まで習得しているらしいわ
彼女の装備は片手用の両刃の長剣だけど、担当した訓練教官の見立てでは
性質は武器屋で売っている様なものではなく、かなりの希少武器らしいのよ」
『アルスター』の「ギルドマスター」である彼女はそう告げる
「その新人は何処から?」
眼帯の「ギルドマスター」は、何かを考えつつ尋ねていた
「外見から判断すれば北方地域ね
『君主』職の場合なら・・・彼女は聖職者による神の祝福と任命を
受けている可能性が高いわ
そうでなきゃ『鑑定眼』保有している事が説明できないのよ」
『アルスター』のギルドマスターの言葉を聞き、眼帯の「ギルドマスター」と
精悍な「ギルドマスター」は眼を見開いた
『君主』職は、教会関係者以外によって直接任命されたり、加護を
受けて就くものだ
金で地位を買うような偽騎士がはびこるが、真の信仰心と気高き心によって
選ばれた者はまれに『鑑定眼』という技能を保有してい
その力は絶大であるゆえに、国や寺院がその力を利用しようと
目論む程である
「少なくともその新人が『鑑定眼』保有者なら、『騎士』職じゃないよ
『君主』だ。 それも一国を率いていた名君や帝王に間違いない」
眼帯のギルドマスターは精一杯考えながら、確信に満ちた声で断言した
「しかしよ、そんな名君や帝王なら北方地域の中小国家群の天秤が
崩れてるだろ?
それこそ統一されて一大帝国だか王国が出来上がってはずだ おまけに
魔境だって開拓されてるぞ
・・・ それが一冒険者として登録するかねぇ?」
精悍な「ギルドマスター」は首を傾げている
「北方地域の依頼を受け帰還した専属冒険者からの報告を時々聞くけど、
北方一部地域の中小国家群領土の大半は、
未開の地とされている魔境が広がっているみたいだね
正確な情報は乱立している冒険者ギルド支部で共有していないみたいだから
不明らしいけど、魔境に隣接していた部の支部は、魔獣の
『スタンピード』なんかの理由で撤退したか全滅しているらしいよ
その報告を総合すると、地図にも載らないような小国なんて呑み込まれている
可能性がある」
眼帯の「ギルドマスター」は淡々と話す。眼帯で覆っていない眼の奥の瞳は
冷たく光っていた
その話を聞いていた『アルスター』のギルドマスターは眉間にしわを寄せ、
精悍な「ギルドマスター」は厳しい表情になる
それほどの力を持つ人材であれば、間違いなく各国が囲い込もうと
躍起になって 勧誘してくるだろう
これから狂乱が巻き起こるとなれば、猶更だ
「最後にこれは『空間収納』保持者の『運搬人』に関しだけど、『空間収納』の
技能だと思うわ
直近情報で、この素質の高い新人冒険者が加わったパーティーが、一回の
迷宮探索で金貨1万8千枚以上の成果を出したという報告があがっているの
それだけでも凄い事なのに、まだ幾つか査定している素材の鑑定をいれると白金貨1万枚超えの成果になりそうなのよ」
『アルスター』の「ギルドマスター」の彼女が呆れた表情で言う
「 『クラン』でもそんなに稼げないだろ!?
パーティーなんざ せいぜい一日で銀貨5~6枚の稼ぎが良いところなんだ!
幾らその新人冒険者達が凄くても、無理があるぞ!?
・・・あ、竜種か賞金首の魔物を討伐してるってことか?
それで報酬を独り占めできるんだったらあり得るか・・・」
眼帯の「ギルドマスター」はが呟く
「様子からして、そんな話ではなさそうだよ」
眼帯のギルドマスターが言うと、『アルスター』の「ギルドマスター」
が静かに頷いた
「薬草各種、巨人の皮膚や魔獣達の魔石と肉類、剣や武器類の金属系素材、
鉱物資源などよ
その種類も豊富で数も膨大なの」
『アルスター』の「ギルドマスター」の彼女が溜息をつく
その表情には呆れの色が強く出ていた
眼帯のギルドマスターと精悍なギルドマスターが視線を交わし合いうと、眼帯の
「ギルドマスター」が口を開いた
「はっきりいうけど、新人冒険者パーティーで金貨1万8千枚以上を
一回の迷宮探索で稼ぐなんて規則外だ
これからの事を考えれば、この狂乱に混じって壮絶な
争奪戦が行われる事は眼に見えている
・・・これは同じ「ギルドマスター」としてはなく、同じ
同期として尋ねるけど、そっちの迷宮都市でそんな規則外パーティーを
抱き込む事はできるのかい?」
眼帯の「ギルドマスター」は真剣な顔つきで尋ねる
「難しいわね・・・狂乱の中心地なのよ?
これから頭を抱えなきゃならない事案が山ほど来るのに、
この新人冒険者が所属しているパーティーだけの動向を
監視だけはきないわ
しかもそのリーダーが、どうやら私たちの冒険者ギルドに何処か
不信感を懐いているような態度を取るのよね」
『アルスター』の「ギルドマスター」の彼女は腕を組み、精一杯
考えて答える
「何かしたのか?」
精悍な「ギルドマスター」が、『アルスター』の「ギルドマスター」の
彼女をジッと見つめながら尋ねる
まるで相手の心の底まで見透かすかのように
「するわけないでしょ?
ただ、仲間斡旋に関して信用されてないかもれないのよ」
『アルスター』のギルドマスターが肩をすくめ、溜息を漏らす
「迷宮都市の冒険者ギルドの仲間斡旋に関しては、そんなに悪い話は
聞かないけどなぁ」
眼帯の「ギルドマスター」は頭を傾げる
「・・・なあ、少し引っかかっているんだが、その規則外の
新人冒険者を斡旋したのは同期の所だよな?
そんな凄い新人を何処でどう手に入れたか気にならないか?」
精悍な「ギルドマスター」は、疑問を口にする
眼帯の「ギルドマスター」は考え込んだ
確かにその新人冒険者達は、何処でどうやってきたのか不思議で仕方がない
普通に考えたら、そんなに優秀な人材がいれば、国も「クラン」も放っておかず
手に入れようとする筈だ
「何処でどう手にいれてもいないわよ?
信じられないけど私の所のギルドで冒険者登録して、登録手続きを
終えたばかりの新米さん達なのよ」
『アルスター』の「ギルドマスター」の彼女が答えた
「・・・何か、ふらっと同期の迷宮都市にやってきて冒険者登録
したっていうのか・・・?
しかもだ、何処の「クラン」のスカウト調査にも引っかからず、国の
勧誘の手も掻い潜ったというのか!?」
精悍な「ギルドマスター」が驚きの声を上げた
「信じられない」
眼帯の「ギルドマスター」は静かに首を横に振った
「信じられないけど、それが事実よ
そのパーティーのリーダーが、幾ら仲間斡旋に関して信用できなくてもね・・・」
冒険者ギルドに所属する冒険者は、他のギルドに所属していない冒険者とは、
色々と違う点がある
その一つが、ギルド同士でのやり取りだ
例えばAのギルドに所属しているBが、Cのギルドに冒険者のパーティーを
斡旋する場合、仲介料を払う必要がある それは冒険者にとって、
お金の問題になる
しかし、ギルド同士がお互いの利益の為に提携を結んでいる場合、仲介料は
免除される だが、それだけではなく、お互いに利益となる場合は、更に多くの
手数料を取られてしまうのだ
つまりAのギルドは、手数料は払わずに済むが、利益の配分が減る事になる
Bのギルドから冒険者のパーティーを紹介された場合、報酬の半分近くを
取られる事もある
その事からも分かるように、ギルド間での連携は、それほど上手くいかないのが
現状なのだ
「辺境で拠点にいる冒険者パーティーも「クラン」もいないギルド支部からすれば、
羨ましい限りだぜ!」
精悍な「ギルドマスター」は精一杯の皮肉を込めるが、全く効果はなかった
『アルスター』の「ギルドマスター」の彼女は溜息をつき、眼帯の
「ギルドマスター」は苦笑を浮かべた
「これからの狂乱を考えると、このパーティーの処遇は大変難しい問題よ」
『アルスター』のギルドマスターが真剣な表情で口を開く
「だからと言って、そっちの迷宮都市に置いておくことも難しいね
そこは「ギルドマスター」が腕を組み、う~んと悩む




