第129話
その事が中央の冒険者ギルド層部にばれてしまい、不正に
関わる者達によって僻地へ飛ばされた
「・・・・」
ハインツは冒険者ギルドの知りたくない闇の部分を聞いて、引きつる様な
表情で沈黙していた
「黙認できないほど毟り取ろうとするから、絶対に書類仕事を
安心して任せられないのよ」
クロエは呆れた口調で呟きつつ、ため息をつく
「容赦なく毟り取るのは『ギルドマスター』だぜ?
俺はほどほどにしているぞ」
アルヴィンはクロエの言葉を聞き流しながら、平然として答えた
「あまりやり過ぎると、咲き乱れる華の肥料になるわよ?」
クロエは再びジト目でアルヴィンを見据えると、言葉を続けた
言う通り、余りにもやり過ぎると未来はない
とは言え、『冒険者ギルド』の底なし沼の様に深い闇に踏み込み過ぎれば、
闇から闇に葬られる
それがどんな人徳のある聖職者でも、厳重な警備で固める
要人であってもだ
「当時の冒険者ギルド総本部上層部は、ずいぶん間抜けな
選択をしたもんさ
鎖で繋ぎとめていた猛獣を、態々自由を謳歌できる檻から
解き放ったのだからな」
アルヴィンは遠い目をしつつ言った
当時のエンゲルベルトには、アルヴィンとクロエの他に
複数の腹心がいた
冒険者ギルド上層部は当然把握していたのだが、エンゲルベルトが
上層部と裏取引を行ったのか処罰する事なくそれなりの
地位を与えたのだ
その結果、辺境への左遷が決定づけられた
しかし、エンゲルベルト本人はその事を後悔はしていない
ただ、彼が後悔しているのは権力闘争に敗れた事ではなく、腐敗した
『冒険者ギルド』に失望し、冒険者を護る存在にならねばという
決意をした事である
このロージアンで左遷されて自由を謳歌しているのも、総本部に残っている
複数の腹心の暗躍のおかげだ
最悪闇から闇へと葬られていた可能性もあった
「こんな生臭い話を前途有望な、彼の前で話すこともないでしょ?
アルヴィンはお子様達の『冒険者ごっこ』の準備と討伐予定目標地の
計画書を任せるから
あたしは中央のギルド総本部に要求する書類作成の草案を作るから、
よろしくね」
クロエはそう言って立ち去っていく
「これから冒険者を目指そうとする子供達には話せる
内容ではないですね・・・」
ハインツは、クロエが去った方角を見ながら呟く
「世の中、それでも廻っているから不思議なもんさ
『ギルドマスター』は、元冒険者でもあるから『冒険者ギルドと
地域住民合同訓練』を何だかんだで楽しみにしているよ
月1「魔境」で身体を動かせる事が嬉しいんだろう」
アルヴィンはニヤリと笑い、ハインツに視線を向ける
「 『ギルドマスター』も参加されるんですか!?」
その言葉にハインツが驚いたように反応した
『冒険者ギルド』支部の『ギルドマスター』という重要な役職の人物が、
辺境で開催される行事に参加する事は異例だ
通常、『ギルドマスター』は『冒険者ギルド』支部の最高責任者であり
事務処理の責任者だ
つまり『冒険者ギルド』支部の実務と運営のトップである
普通なら有り得ないのだ
「その反応だと、君達がいた地域の『ギルドマスター』などは執務室に籠って、
現場も観ず報告を聞くだけで判断する口だけの輩や
暇さえありゃあ、色街に入り浸って女漁りする輩ばかりだったんだろ?」
アルヴィンは呆れた顔でハインツ達に問いかけた
「それは、まぁ・・・」
ハインツは引きつった表情を浮かべつつ、言葉を濁す
「ま、それが悪いとは思わないよ?
中途半端な理想を掲げて、現場を混乱されるよりは何もせず色街に入り浸る
『ギルドマスター』の方がマシだからね
だが、あの人はそんなクソな『ギルドマスター』共とは別格だ
実力と経験を兼ね備えた元凄腕だったこともあってか、率先して
現場に赴く
そして部下を鍛え上げる事で、後進を育てようとする熱意があるんだ
ましてここは未開拓の『魔境』があるロージアン
・・・だからこそ自分の眼で見て肌で感じて、現地の領民達と話し合って
魔獣の生態を把握し、討伐計画を立てなければならない
俺やクロエ、そして『ギルドマスター』もこの辺境の地に骨を埋める覚悟さ」
アルヴィンは、ハインツに言い聞かせるように語る




