第126話
『常設依頼』とは、主に首都バルツァエック内の雑務仕事全般である
具体的には、掃除洗濯料理などの家事手伝いから店番等の簡単な接客業、
買い物代行や荷物運び、子供の世話に老人介護等、多岐に渡っており、
ギルド側として 依頼が多岐にわたる為、『冒険者階級』制限を設けていないので
誰でも簡単に受けられるようになってはいる
が、報酬は低く設定されている
他地域の都市で『常設依頼』を引き受ける冒険者は、報酬が
安いため請け負う者はそれほど多くはない
冒険者という数が多くても日銭稼ぎに忙しい者達にとって、このような
低額報酬の仕事は旨味がないからである
ロージアン領内のギルドでは、元々からの人手不足により
常時「サブ・ギルドマスター」アルヴィンが雑務仕事の依頼を率先して
引き受けており、他の領地にある『冒険者ギルド』支部とはいささか
趣きが異なるようだ
それもエンゲルベルト達が中央から辺境のロージアンへ飛ばされて以降、
領内で世話になった事が大きいらしい
雑用仕事は基本は冒険者がするもので、そもそも「サブ・ギルドマスター」が
する事では決して無いのだが、彼は面倒見が良い性格で
領内に溶け込む事によって領民から慕われた事もあり、 今もこうして
ロージアンのギルドで日々働いているのである
中央では『潜入専門』ギルド職員として現場で様々な情報を収集し、その
豊富な知識と巧みな話術で相手を翻弄し、 必要な情報を引き出して
いたことがある
そのため、事務作業では気付くことが出来ない些細な異変にも
いち早く気付き、 領内で起こった出来事やトラブルにいち早く対処する
そのため『常設依頼』を『サブ・ギルドマスター』という
肩書があるにも関わらず、 積極的に引き受けているのである
そういった事情もあるが募集で集まってきた300人の冒険者達の中でも、
まずは『常設依頼』から新しい土地に慣れていこうという
冒険者達も複数いたため、アルヴィンは面談を行い 適材適所を
判断した上で仕事を振り分けていた
薄汚れた服を見たところ、アルヴィンは溝さらいやゴミ拾いといったような、
町中の仕事をしていたようだった
「そんな事すれば証拠が残るでしょが
ただてさえガルフォード隊長は厳しいのよ?
へし折ったら『魔境』放置するかガルフォード隊長に任せて
綺麗さっぱり無かったことにして終わりにするしかないでしょ」
クロエがアヴィンが応えるよりも早く、呆れ顔で
ツッコミを入れた
それを聞いたハインツがぎょっとした表情を浮かべつつ、
内心『それもどうかと……』と呟く
冒険者同士の揉め事や喧嘩は日常茶飯事でギルド側もそれを黙認しているが、
一般人に手を出すのは御法度で、『冒険者ギルド』の威信に関わる
冒険者による一般人への暴行や殺害は、例えそれが一方的なものであったにせよ
厳罰に処せられる事になる
本気なのかどうかはわからないがクロエとアルヴィンの言葉は、かなり
ギルド職員らしくない過激な内容だ
しかし、ハインツはその言葉で少し気持ちが軽くなった
自分だけならともかく、パーティーメンバーの事も考えての
配慮なのだと解ったからだ
そう思うと、自然と二人の事が身近に感じられ、クロエとアヴィンに
対する親しみが増した
「そういう事だから、ロージアン領内では何も心配はしなくていいさ
その話は置いとくとして、この2週間で『薬草採取部門』で
ハインツパーティーは一位になったんだってね
このまま維持続けると、月の終わりにロージアン『冒険者ギルド』支部から
特別報酬で金貨5枚が支給されるぞ
頑張ってくれよ」
アルヴィンがハインツ達を励ますように声を掛けた




