第124話
もしかしたら採取方法がまずかったのかもしれない、と不安になったのだ
クロワは納得した様子で 一つ大きく息を吐き、話を続けた
「不備はなかったわ
依頼対象の薬草や解毒や麻痺解除となる薬草も、完璧状態よ
ゴブリンから採れた『魔石』はギルドで買い取ることになっているわ」
真剣な表情でクロワがそう言った
「そうですか」
ハインツとカーリンは安堵の表情を浮かべた
だがクロワの話は続く様だった
「むしろ驚きよ
採取対象となる薬草を見極めるのは、ベテランの冒険者でも難しいもの
ましてや、経験の浅い駆け出しや採取が初めてな冒険者なんて、
酷いときは半分くらいが対象外になっているものを持ってくる事もあるの
それが、あなた達が採取した薬草や状態異常の回復薬や解毒薬の
原料になる薬草はどれも品質が落ちていないし、おまけに希少な
『月虹百合』も最高品質よ」
クロワの言葉にハインツとカーリン以外のメンバーたちは、貌を
合わせて喜んだ
まったく予想していなかった角度から褒められて戸惑っていたのは、
ハインツとカーリンの古株二人だった
「ヴァレーアが採取のコツを教えてくれたので・・・」
ハインツが戸惑いつつも、そう言葉を絞り出す
「それとゴブリンから採れた『魔石』約百個についてだけど」
クロワが言葉を挟む
「全部おいら達がゴブリンの群れから手に入れました」
タルコットがすかさず答える
「ボクは、タルコットちゃんがゴブリンの死骸から取り出した
『魔石』を見て、『『魔石』ってこんなに黒くて綺麗だったけ?』と思ったよ」
カルローラが思い出しながらそう語る
「・・・採取した『魔石』は全て高品質よ。一つ取って見ても小売りに出せば、
結構な値段が付くわ
『月虹百合』と『魔石』を辺境都市国家群や小国家群で換金するには
それぞれ別な国で手続きする必要があるのだけど、あなた達は
『冒険者ギルド』専属パーティーだからこちらで必要な手続きはするわ
多少時間はかかるけど、売り上げの九割はあなた達の物になるから」
クロワがそう告げると、ハインツたちは驚きを隠せないでいた
「へっ!? 九割って我々の取り分が増えてませんか!?」
ハインツは特に驚きつつクロワに尋ねた
だが、クロワは気にせず続ける
「 『ギルドマスター」と後々協議した結果、一割でも十分年間予算を
賄えるから問題ない ってことになったの
それにあなた達の採取した薬草類や『魔石』の質が良いから、他の
ギルドの様に五割だの六割だのと吹っかければ、
あの2人は碌な予算の使い方をしないから、ここは黙って
受け取っておきなさい
それにこれは、あなた達のパーティーに対する正当な評価でもあるから。
あと、どうせ最初の交渉で『八割でいいか?』とか言われたりしたんでしょ?」
クロワが、まるでその場にでも居ていたかのような口ぶりでハインツの
心を見透かしたようなことを言う
交渉していたハインツは何も言えずに固まってしまった
クロワはその様子をみて少し溜息を吐くと歩き去っていく
ハインツは何とも言えない表情を浮かべつつ、見送っていると
受付から呼ぶ声が聞こえてきた
慌ててハインツだけか受付に走っていく
「大変お待たせしました
依頼報酬は合計で白金貨10枚と銀貨20枚です。
それと依頼達成の認定書になります」
そう言って受付嬢のアイラは、ハインツに依頼報酬の入った布袋と
依頼達成の認定書を手渡した
「 白金貨!?」
金額にハインツは驚きの声を漏らす
その驚きようは、まるで眼の前に見たこともない高価な
宝石が突然現れたかのような反応だった
白金貨という硬貨は、この世界で使用されている貨幣の中で
最も価値の高いものだ
驚くのは無理もない
「採取された薬草は完璧状態でしたので、これくらいは当然かと思います
あと『魔石』と希少な『月虹百合』の辺境都市国家群や小国家群での
売り上げは時間がかかりますのでご了承ください
後日、売値の9割をハインツ様パーティーに支払います」
アイラは微笑みながらそう言った
「・・・せめて我々の取り分は5割で」
ハインツがなんとか反論する
「交渉については、『ギルドマスター』もしくは『サブ・ギルドマスター』の
方にお願いします」
アイラはそう言うと申し訳なさそうな顔をしながら頭を下げた
ハインツは項垂れた
あの底が見えない『ギルドマスター』と『サブ・ギルドマスター』との
交渉は正直避けたいと思っていた




