第122話
花弁を剥ぐときは、まず根元に小さめの石を置いて固定、そして茎を
しっかりと持ち、根っこを傷つけないように注意しながら
ゆっくりと引き抜く
その後、根を傷付けないように注意しつつ、引き抜いた後に出来た
穴を埋めるように根を埋めて土をかけていくのだ
採取後はすぐに麻袋へ入れるのではなく、少し間を
空けたほうがいい
何故なら『月虹百合』に含まれる薬効成分が徐々に
失われてしまうからだ
「この棘は、出来るだけ取った方が良いと?」
テレンスが『月虹百合』の茎についている棘を取り
除きながら質問をした
「棘を取り除く事で、より薬効成分が失われにくくなるんですよ
あ、棘を抜く際は刺さらないように注意してくださいね。
テレンスさん
もちろん作業しているみんなもだよ!」
ヴァレーアはにこやかな表情で答える
棘に刺さりたくない採取メンバーは、より慎重に作業を進める
「俺は希少な薬草の採取作業なぞ、怖くてしたくないぞ」
カーリンが若干震える声で呟いた
「同感だ・・・市場に売れば白金貨で数百枚の価値があるらしいからな」
ハインツが同意するように応える
「・・・ヴァレーアの嬢ちゃんの知識が恐ろしいぞ
そもそもあんなに丁重な採取方法なんて誰も
教えてくれなかったからな」
カーリンが若干震える声で言う
ヴァレーアから指示された採取方法は、どれも初耳の方法なため
一つ一つが驚きだった
「環境に配慮しつつの採取方法もだ・・・
これが一般冒険者なら適当に乱伐して、あっという間に魔物たちの
住処になっているだろうからな」
ハインツが再び同意するように呟く
採取の基本的なルールとして、採取した植物は出来る限り
元の姿のまま採取することが好ましいとされている
その理由として複数あるが、その一つが魔物の棲処になってしまうことを
避ける為であった
また、採取には適さないと判断された場所でもその特徴を理解した
上で適切な方法で採取すれば問題は無い
しかし、採取の経験の無い素人が見よう見まねで採取すると、多くの場合
その植物が持つ本来の姿形を損なうことになる
特徴を理解した上で適切な方法で採取する人物をある一部地域では
『血騎士』と呼んでいる
採取した植物の特徴を見極められる目を持ち、採取に無駄が無く丁寧な
仕事が出来る人物だ
そんな人物がその地域の安全に貢献していた事は間違いない事実なのだ
「『月虹百合』はそれだけでいいの?」
採取を終えたらしいタルコットがヴァレーアに再び質問した
「取り過ぎると来年育たなくなるかもしれないし、他の冒険者にも
迷惑をかけちゃうんだよ」
ヴァレーアは微笑みながら応えた
タルコットは素直に納得した
ヴァレーアは他にも、解毒や麻痺解除の薬効成分が含まれる薬草の
採取も丁重に行うように指示をしていた




