第116話
ハインツ一行が向かったのは活動拠点の首都から一晩泊まった集落へと
続く街道から外れて、その先の山間の森だ
街道から外れると整備された道などなく、馬車では通行できないような悪路が続く
今回は全員が徒歩での移動なため、時間がかかっていた
途中に小さな標識が立っており、『この先『魔境』につき危険』と書かれていた
「どうやら、この先が『魔境』のようだ」
ハインツは標識を確認しつつ、仲間達に伝えた
先に進むと鬱蒼とした木々の群れが生い茂り、太陽の光が遮られて薄暗く、
視界が悪くなっていく
地面は湿っていて足場が悪く、 魔物や魔獣にとっては恰好の狩場となりうる
木々が生えている中に巨大な岩や石、倒木がゴロゴロと転がり、大きな岩石の
陰には 大型の動物が身を隠し、息を殺して潜んでいる事もある
そこかしこから様々な動物や魔獣の鳴き声が聞こえいた
季節柄もあるのか、森の中はまるで熱帯雨林のような状態になっていた
ハインツ一行は慎重に慎重を重ねて進んでいく
ローザ、カモサワ、オオシマ、アトリーサは周囲を警戒するように歩いている
大半の『魔境』地域は、整備された道などは皆無に等しく、人の手が
ほとんど入っていない未開の地だ
正確な情報など得られるはずもない
そのため、どこがどういう風に繋がっているのかなど完全に把握している
冒険者などいない
棲息する危険な魔獣や魔物も数多く、『冒険者ギルド』や冒険者も
把握してもいない未遭遇の魔物の多様さから『魔境』へ
挑むときは、いついかなる時でも対処できるように常に万全の
準備をしておかなければならない
『魔境』地域の気候にもよるが、地域特有の病気、害虫などさまざまな
障害に悩まされる事が多いため特徴なども知っておく必要がある
特に森林深部や深層林へ進めば進む程、魔獣や魔物の数も増えるため、
当然脅威も増す
繰り返す戦闘によってパーティーの士気や団結の低下、規律の弱化などの
戦闘疲労、怪我や体力、精神の消耗などに陥りやすくなり、 戦いにおける
実力の発揮が十分にできなく、集団行動による連携が取れない事にも
繋がってしまう
そのため熟練の冒険者達は、指揮系統の統一、仲間意識の共有、統率の
強化 リーダーの指揮、指導、命令に対する絶対服従、信頼関係の構築、
戦闘中の仲間の生死について不問にする事 などの取り決めを徹底し、
チームワークの乱れや崩壊を招かないよう配慮している
それでもあっさり全滅させられる危険性が高いのも事実だが・・・
『迷宮』とはまた違う危険な『魔境』だが、それでも冒険者達が
挑むのには理由はある
もちろん、辺境地域の都市国家群や小国群経由で『冒険者ギルド』へ
依頼している事もある
成功報酬もそれなりに高めだ
もう一つの理由は『魔境』の魔獣や魔物が落とす魔石や素材などが目当てだ
特に強い魔物や魔獣を倒すことで得られる希少な素材や『魔石』は、強力な
武器や防具を作る際の重要な素材になる
また『魔境』に群生している希少な薬草類や『魔石』は高額で取引され、
貴族や富豪がこぞって買い求めている物だ
希少な魔獣や魔物の部位や肉は高級食材としても重宝されている
そういった理由で腕に覚えのある猛者や金稼ぎのために、冒険者が
『魔境』へ挑むのは後を絶たない
『魔境』地域の開拓に躍起になっている辺境地域の都市国家群や
小国群にも利益は少なからずあり、積極的に冒険者を雇って 開拓、
調査を行っているところもある
だがその反面、無謀にも挑んで返り討ちにされた者も少なくない
冒険者の死亡率は一割から二割 決して低くはない数字だ




