第110話
「そういう事じゃなくてですね・・・」
ハインツは焦った口調で言葉を発する
「後でご領主様を交えて協議するから、今は8割で我慢してくれ
ちびっこ先生、続けてくれ」
『ギルドマスター』エンゲルベルト真剣な面持ちで促す
ハインツは後でもう一度話し合う事にして、渋々席に腰を下ろした
しかし、300人の冒険者達に向けられているその視線は、どれもこれもが
『まだ引き出せるつもりなのか』というドン引きの眼であった
「続いてのレクチャーはこれも一回簡単な事を言ったけど、ロージアン領内の
夜間には厄介な魔物が2種類出没する
『夜霧の奇兵』と『闇夜の追跡者』だ。
この2種類の魔物の特徴について教えるぞ。
まず『夜霧の奇兵』は、フードを被り全身が黒ずくめの騎兵のような姿をしている
そいつの得物は大平原の場所によってマチマチと前の軽い説明の時に
言った通りで、個体数が多い
大平原街道沿い、首都付近、開拓予定地や魔境付近で夜間に
目撃されている
夜にしか姿を現さないため、遭遇したくなかったら夜間探索は
お勧めはしないよ
次に『闇夜の追跡者』だ
闇夜の大平原に神出鬼没に現れるこいつは、右手には大鎌、左手には
風化と劣化が激しく朽ち果てた蒼白き火を灯したランタン、
全身を黒を基調にした傷んだローブを纏い、貌を深くかぶった
フードで隠している
大鎌振り回す攻撃を一回でも当たれば、一瞬で魂を
吸い取られてしまう
その攻撃は一撃必殺で、掠っただけでも致命傷だ。
こっちも夜にしか姿を現さないため、遭遇したくなかったら
夜間探索はお勧めはしないよ
今までこの領地でこの2種類の魔物を討伐した成功例はないんだけと、
爺さんの残してくれた蔵書には倒せば武器防具を強化する
際に必要となる珍しい素材を低確率で落とすみたいだから、腕に
覚えがうれば挑んでみるのも一興かもね」
ベイセルが軽く笑いながら締め括ると、ハインツを含めた
300人の冒険者達は唖然とした貌を浮かべていた
丁度その時、大会議室のドアをノックする音が響いてきた
そして1人の男性が入ってきた
長身痩躯の男性で、冒険者ではなく一目見て畑仕事をしている
農民だと解るほど麦わら帽子を被っている
「 失礼します。 「ギルドマスター」に頼まれた剥製持ってきました 」
農民風の男性が部屋に入って来るなり挨拶をする
「ああ、二つここに並べてくれ」
『ギルドマスター』エンゲルベルトが、長身痩躯の男性に
指示を出した
「冗談じゃなくて、マジで展示するのかよ」
ベイセルは再び若干引き気味に小さく呟く
それと同時に、大会議室に質素な農民風の服装を
纏った4人の姿が現れた
小柄で童顔な少年、眼鏡をかけた青年、金髪の髪を後頭部に
纏めて結いやや切れ長の鋭い目つきで背が高い女性、
そして麦わら帽子を被っている長身痩躯の男性の4人だ
彼らは部屋に入ってくると丁寧に一礼し、作業に取り掛かると
3つの剥製演壇上に丁寧な所作で並べる
それらを終えると、 全員一礼して退出した




