第109話
「それは中央諸国の常識だ。辺境では糞の役にもならない。
───必要な冒険者階級に制限は設けない理由は、いつ何時
『氾濫』が発生するか予測が付かないからだ」
『ギルドマスター』エンゲルベルトが、その質問に応えると
再びざわついた
それを意味する事は、かなりの期間『迷宮』内部の
間引きをしていない事となる
間引きが長期間行われていないとすれば、かなりの魔獣や
魔物が地上に溢れ出るという事になる
確実に冒険者達は貌を蒼ざめさせた
特にベイセルは眉間に皺を寄せて何かぶづぶつと考え込むと、額から
汗を流し始めた
「アルヴィン兄ちゃんとクロエの姉ちゃん・・・
もしかして、相当ヤバい状態なのか?」
ベイセルの質問にクロエとアルヴィンは応えなかった
「階層が浅ければ、かなりの速い段階で今頃『氾濫』が起こっている可能性がある」
代わりに『ギルドマスター』エンゲルベルトが短く応えた
「何の異変も無いという事は、『氾濫』を飲み込む程内部は
とてつもなく広く深いってことか」
ベイセルは深いため息を一つ吐きつつ呟く
「ロージアン領内で月1で行う『冒険者ギルドと地域住民合同訓練』には
強制参加してもらうので、それに支障をきたさなければ、
探索に赴いてくれて構わない」
『ギルドマスター』エンゲルベルトが口を開く
すると栗鼠の様な眼つきの少年らしき冒険者が挙手をした
「 『冒険者ギルドと地域住民合同訓練』ってのは何ですか?
初めて聞いたんですけど・・・」
その問いに対して、エンゲルベルトが答えようとする前に、ベイセルが
先に言葉を発した
「魔境でも魔獣や魔物を間引きしないと溢れる事は知っているとは思うけど、
ロージアでは冒険者が居ないため月1で領地民と領兵で合同間引き
行事を行ってるんだ
参加領地民の大人には辺境では滅多に入らない
砂糖一袋と蜂蜜酒二本と銀貨十枚、俺みたいな子供には銅貨二十枚と
お菓子が進呈される
特に秋口の涼しくなり始め時期は、魔境以外でも魔獣や魔物が
活発になる時期でもあるよ
また魔境の生態観察も兼ねてる『夜間討伐』が夏と秋時期にそれぞれ
2回、2週間に渡って実施
討伐行事には子供部門と大人部門の2つあって、子供部門では
魔獣や魔物を狩ったり観察したりするんだ」
ベイセルがそれぞれについて説明した
「 『冒険者ギルドと地域住民合同訓練』で、魔石の他、魔獣や魔物の
素材や討伐部位、肉類と皮などを剝ぎ取って持ち帰ってきてもらえれば、
『ギルド』側で査定や買い取らせて貰うわ
各辺境地域の都市国家群や小国家群で卸した店での
売れ行き次第になるけど、売り上げ収入の八割ほどが
そちら側の取り分という事になるかな」
続けてクロワが応えるが、それは300人の冒険者達の間に
衝撃と驚きをもたらした
「ちょっと待て下さい!
八割ってその話はまだ続いていたんですか!?」
その言葉に反応して、ハインツは思わず声を上げて立ち上がる
クロワはその反応を見つつ、ハインツの方へ視線を向けた
「八割では不満なの?
さすがに『冒険者ギルド』支部側が1割だと、運営にも関わるのだけど」
クロエが不思議そうに尋ねると、ハインツは慌てて首を横に振った
300人の冒険者達はさすがに絶句した表情を浮かべつつ、互いの
貌色を窺っている
どの冒険者達も『どんなえげつない交渉したら、取り分8割も
引き出せるんだよ!!』と言わんばかりの驚愕の眼差しを向けていた
しかし、『ギルドマスター』エンゲルベルト側は、そんな彼等の
様子を気にした様子もなかった




